音楽ナタリー PowerPush - ひまり

日本各地に“輪”を咲かせる関西発ハートフルデュオ

勝手に前座ツアー

──天王寺でストリートを始めてからはどうだったんですか?

ひまり

門松 最初は厳しかったですねー。だって僕ら、オリジナルは送別会の曲しかなかったんですもん(笑)。カバー曲もやってはいましたが、最初は輪になることなんてなく12時間歌っても2人しか止まってくれない日もありました。でもそこから1人、また1人と観てくれる人が増えて。

松瀬 手書きした歌詞をコピーして配ったり、プロフィールを作って渡したり。当時はホームページも作っていなかったから、「何時にどこでやるよ」っていう連絡をするために携帯番号とかも教えてましたね(笑)。

──ちなみに、そのころから2人は本気でデビューを目指そうという気持ちだったんですか?

門松 いや、僕は当時大学3年生で、教育大だったんで先生になるつもりでした。だから松瀬には「オレはいずれ学校の先生になると思うよ」って言ってて。

松瀬 だから僕もずっとひまりが続くわけじゃないと思ってて、なんとなく違う人生も考えてたんです。そしたら……。

門松 「ビバ・アコースティック大会」(2003年)というヤマハさん主催のコンテストでグランプリを獲っちゃったんです。それで僕の考え方も変わって、こっちに賭けてみようと。そこからとにかく地道にストリートを続けていました。

松瀬 そうこうしているうちに東京や名古屋にも行こうって話になったんですよ。

門松 よく考えたら、いろんなアーティストさんがやっているライブの会場の周辺って、単純に人がいっぱいいるじゃないですか。だから人気のアーティストさんの全国ツアーを調べて、勝手に一緒に回ったらいいんじゃない?って。

松瀬一昭

松瀬 ストリートからデビューされたゆずさんやコブクロさんのファンやったら、立ち止まって観てくれるかもしれへんってな。「勝手に前座ツアー」とか言いながら、自分らで車を運転して全国を回ってました(笑)。

門松 そしたら、ゆずさんやコブクロさんのファンは足を止めてくれて。

松瀬 あと、韓流系アーティストのライブの近くでもやったり。

門松 でもラルクのファンだけは、まったく反応がありませんでした!

松瀬 僕らの歌は届かなかったですね(笑)。

まったく違う2人の声が混ざったときの面白さ

──その後、イベント出演や地道なライブ活動でCDを手売りし、売上枚数は1万枚を突破。そういった実績が実を結び、2007年にいよいよミニアルバム「ひまり」でデビューを果たします。

門松 デビューが決まったときは、やっぱりモチベーションがグッと上がりましたね。僕らは「この歳までにデビューできなかったら辞める」っていうのを親と約束してたので。

松瀬 リミットのギリギリでしたけどね。

門松 そこからはコンスタントにCDをリリースして、日本各地を回らせてもらって。1人でも多くの人に僕たちの歌を聴いてもらいたいという思いで、活動を続けています。

──ひまりの曲って、1曲の中に各々のソロパートがあって、それがサビで合わさったときの声の広がりがすごく印象的なんですよね。わーっと全身を駆け巡るような温かくて優しいハーモニーが強く耳に残ります。改めて自分たちの音楽についてどんなふうに考えていますか?

ひまり

松瀬 ありがとうございます! おっしゃった通り、まずはハーモニーを聴かせることを一番に考えてます。でもガチガチに作り込まないほうがいいと思ってて。例えばブレスのタイミングとか、門松には基本自由にやってもらいたいと考えてます。だから僕が曲を作って渡すときも、ちょっと違うメロディを乗せたりして返してくるんですが、自分の中でよっぽど違うなと思わない限りはそれで進めます。

門松 僕は特に何も考えず、気持ちいいと思った歌い方をしてるだけなんですけどね。

松瀬 でもそのほうがいいと思うんです。考えると意識しちゃうから。レコーディングでもいろいろ考え出すと何が正解かわからなくなるし、自由に歌うほうが自分を表現できるし。

──なるほど。門松さんはどうですか?

門松 僕はまったく違う2人の声が混ざったときの面白さを感じてほしいなって。あと僕らは日本語をずっと大事にしてやってきたので、歌の中でどれだけ歌詞がきちんと聞き取れるかってことも意識しています。CDはもちろん、ライブでもそれを一番大事に届けていけたらと思います。

ひまり

ひまり

2002年9月に大阪で結成された松瀬一昭と門松良祐からなる男性デュオ。天王寺にてストリートライブを行う中で人気を獲得し、2003年2月にヤマハ主催の「ビバ・アコースティック大会」グランプリを受賞する。2007年7月に1stミニアルバム「ひまり」を発表し、以降は全国各地でライブを行う。2013年4月にはアメリカ・ワシントンD.C.で行われた「第53回さくらまつり」に出演するなど幅広く活動する。2014年10月に通算4枚目のシングル「坂道~Graduation~ / 想い出にかわるまで / 雪のようなMerry X'mas」をリリース。