もともとはバイトの送別会デュオ

──松瀬さんは広島県、門松さんは大阪府出身。まずはお2人の出会いと結成の経緯を聞かせていただけますか？

松瀬一昭　僕がまず広島から大阪に出て、バイトを始めた飲食店に門松が入ってきたんです。当時はそれぞれ別々のバンドを組んでいて、お互い音楽をやってることは知っている……くらいの感じでした。で、バイト仲間が辞めていくときにうちの店は送別会をやってたんです。僕はそこで曲のプレゼントをするのが恒例になってて、別のバイト仲間とスタジオに入って、本気でレコーディングをして。辞める子に曲をプレゼントしつつ、その場でも歌を披露するっていうのをやったんです。

門松良祐　僕はそのときまだ彼の歌を聴いてるだけだったんですけどね。

松瀬　そして、あるときたまたま門松とカラオケに行って歌ったら、声質は全然違うけど合わさると面白いやん！ってなって。

門松　2人が同時に同じことを思ったんですよ。

松瀬　で、次に予定されてた送別会では2人で歌をやってみようって話になって。まあ、そんなノリでひまりが結成されました（笑）。最初は「松瀬と門松」って名前でやってましたけど。

──では最初は送別会用の企画デュオだったと。

門松　そうなんです。

──それぞれがやっていたバンドはどうなったんですか？

松瀬　両方ともほかのメンバーが脱退したり解散の話が出ていたりで、ちょうど迷っていた時期だったんです。だからちょうどいいタイミングかなってことで。

いろんな場所に花を咲かせていこうや

──送別会デュオから、ひまりはどんな活動を続けていったんですか？

門松　送別会デュオは1～2年やってたんですけど、学生でお金もなかったんで、よく商店街のアーケードで練習してたんです。そしたら道行く人にはストリートミュージシャンに見えたんでしょうね。知らないおっちゃんとかに「吉田拓郎歌える？」「なんかカバーできる？」ってよう聞かれました。でもオレたちは「いや、送別会の練習してるだけなんで邪魔しないでください」って（笑）。普通はありがたいことなんですけど。

松瀬　送別会の当日も練習してたんで「本番迫ってるんで、お願いですから邪魔しないで！」っていうね（笑）。

門松　でもそんな僕らを毎回見てくれるゴミ清掃局のお兄さんがいて。アーケードのゴミを集めながらトラックで前を通るんですけど、その人は1年くらいずっと僕らを観続けてくれてたんです。特に何も言ってくることはないんですけど。そしたらある日初めて話しかけてくれて、「ずっと見てたけど君らいつまでここでやってるの？ 大阪の天王寺って街知ってる？ 大阪中のストリートミュージシャンが集まって盛り上がってる場所やから、君らそこへ行って勝負するべきや」って。車の窓からポーンと200円投げてくれたんです。

松瀬　それ、天王寺までの電車賃のつもりでくれたみたいなんですけど……。

門松　その場所からは230円かかるから、全然足らへん！って思いつつ（笑）。でも、その方の一言も僕らの背中を押してくれて、本格的に天王寺へ行ってストリートミュージシャンとして立ってみるか？っていう話になり。

松瀬　ちょうどその少し前から、バイト内でも盛り上がってたんですよ。「あれ？ 2人イケるんちゃう？」みたいな（笑）。

門松　そうそう。ちょっと調子に乗りかけてた（笑）。

松瀬　ちなみに「ひまり」という名前は、ストリートやるならグループ名がいるやろうということでそのとき命名しましたね。いろいろ悩んだんですが、僕らの歌を通して集まってくれた人たちに輪ができて、僕らとその輪が合わさったときに花が咲く……という意味を込めてます。「ひまり」の間に「輪（わ）」を入れたら「ひまわり」になるので、これからいろんな場所に花を咲かせていこうやっていう。

門松　でも最近は子供の名前でも「ひまり」ちゃんって多いらしいで？

松瀬　イベントでは「孫がひまりです」とか言ってきてくれる方も多くて、そういう方にはCDに「ひまり」ってサイン入れたりしてますね。