ナタリー PowerPush - Hi-Fi CAMP

「一握りの空の下」に込めたリスナーとの絆

2ndワンマンツアーが無事終了したばかりのHi-Fi CAMP。そのステージでも披露されていた、夏らしいアッパーチューン「一握りの空の下」が8月18日にリリースされる。

今作も真っ直ぐで熱のこもったメッセージに変わりはないが、これまでとは少し違ったアプローチでリスナーの背中を押す内容に。その背景には、ツアーで得てきたものが大きく関係している。今回のインタビューでは、4人のライブへの思いやファンとの距離感についても、じっくりと話を訊いた。

取材・文/川倉由起子

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“一握りの空”は自分はちっぽけだというイメージから出てきた言葉

──「一握りの空の下」は、タイトルの「一握り」と「空」っていうキーワードにミスマッチを感じました。歌詞の中にも「一握りの空」というフレーズが何度か出てくるので、まずはこの言葉への思いから聞かせていただけますか?

インタビュー写真

SOYA そうですね。「一握り」って少しネガティブなイメージがありますよね。そして確かにこの曲は、ちょっとネガティブなところから入ってはいるんです。

──と言うと?

SOYA あるとき「自分が見える範囲って結構狭いもんだ」「自分って案外ちっぽけなもんなんだ」って思って。そこからまずは「一人じゃ何にもできないんだ」っていうイメージにつながっていったんです。で、そんなみんなの“一握りの空”を共有したり、一人ひとりがつながっていけたりしたら、一握りが2つになって、どんどん輪が広がっていきますよね。要するに、人の幸せを自分のことのように喜んだり共有できたら、自分の空もどんどん広がってくんだってことを歌いたかったんです。

──なるほど。では、最初は少しネガティブだったというのは何かそうなるきっかけがあったんですか?

SOYA きっかけというか、「自分を大きく見過ぎると誰だってうまくいかない」とは普段から思っていて。それは自分を過信しちゃいけないっていう思いでもあるんですけど……。

──ええ。でも、常にそればかり考えてるわけでもないですよね?

SOYA そうですね。自分の中に閉じこもってるだけでもいけないとは思うんですよ。でも僕らが生きてる現代社会って、何が良くて何が悪いのかがそんなにハッキリわかりづらい状態にあると思うんですよね。そういう曖昧な感じで生きていくぐらいなら、むしろ自分の世界をどんどん広げて、人といろんなことを共有しながら今を刻んでいけたら素敵じゃないかって思うんです。

ライブのリハでは最前列のお客さんの顔を思い浮かべる

──そんな思いが今回は“応援歌”として形になっていったんですね。しかしながら、これまでも応援ソングはたくさんリリースしてきたHi-Fi CAMP。今までと今作はココが違う!みたいなポイントはありますか?

SOYA 今まではどちらかというと僕の感情が5割くらいだったんですけど、今回の詞は結構投げかけるような。8割くらいは外に向けてというか、聴く人に向けて書けたかな、と思います。

──それはやはり、昨年末の1stワンマンツアーで感じたことも大きく影響してる?

SOYA はい、もちろんです。目の前で一緒に音楽を共有できた感覚があったので、今までよりもファンの人の気持ちを知ることができて。もっと投げかけてみたい、って気持ちになりました。

──SOYAさんのように、他の皆さんもツアーを経てファンとの距離感は変わりましたか?

TOSHIRO 僕はいい意味で緊張感が解けてきたかな。1stツアーではガチガチな感じがしてたんですけど、最近はライブをみんなと共有したいって気持ちのほうが強くなってきたので。そこは成長したのかなって思いますね。

AIBA 4人で作ってるから“4人の音楽”っていう意識ではあるんですけど、ステージでファンの方と会うことによって、それがみんなの音楽になっていくんですよね。

KIM 僕は最近、ライブのリハーサルをしてると、お客さんたちの顔が浮かぶようになってきてて。それこそ最前列にいる人たちは毎回来てくれる方だったりするし、僕は人の顔を覚えるの得意なんで、自然に浮かんできちゃうんですよね(笑)。

──それは、ライブをやらないとわからなかった感覚ですよね?

KIM そうだと思います。なので、シミュレーションのリアリティも増してきてて、リハも本番をやってる感覚に近くなってきました。だから早くライブをしたいなって気持ちになりますね。

タイトルの「一」はシリーズ化してます

──今作「一握りの空の下」もそうですが、SOYAさんが作詞された楽曲には「一粒大の涙はきっと」「だから一歩前へ踏み出して」と、「一」が付くものが多いですよね?

SOYA そうなんです。

インタビュー写真

KIM シリーズ化してますから(笑)。

──「一」という数字に対して何か特別な思いがあるんですか?

SOYA 何かを0から1にするって、結構パワーのいることだと思っていて。背中を一番押してあげなきゃいけないのは、多分0から1に何かを変える段階だと思う。でもその一歩目って、ポジティブな感じがしますよね? だから僕は好きなんです。

──確かに何もないところから1を作りだすって大変なことです。普段の曲作りでも、そういう難しさは感じますか?

KIM 僕は詞を書くとき、最初の1フレーズが書けないと何日経っても書けない……みたいなときもあるんで。そういった意味では、0から1にする作業の大切さは痛感してます。

──さらに、今作も含め皆さんの曲には「空」を連想させるナンバーも多い気がするんです。普段から空に思いをめぐらせたり、見上げたりすることは多いんですか?

SOYA そうですね。空はすごく好きです。ポジティブというか、それこそ、ひとつなんだけどつながってる感じがして。

KIM 僕はこの前、秋田の高原にキャンプに行ったんですよ。そういう広い場所で空を見たら、「わーっ!」と叫んでしまうというか、驚きの声が出てしまって。自分がちっぽけなことを忘れさせてくれるような力を空には感じますね。

ニューシングル「一握りの空の下」 / 2010年8月18日発売 / 1050円(税込) / FOR LIFE MUSIC ENTERTAINMENT / FLCF-4337

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CD収録曲
  1. 一握りの空の下
  2. 灰色に咲く花
  3. だから一歩前へ踏み出して~house remix~
Hi-Fi CAMP(はいふぁいきゃんぷ)

KIM (Vo)、SOYA (Vo/MC)、AIBA (Key)、TOSHIRO (DJ)の4人により2007年1月結成。2008年6月にシングル「キズナ」でメジャーデビューを果たす。デビュー曲が映画「僕の彼女はサイボーグ」挿入歌に起用され、リリース前からUSEN総合チャートベスト10入り、全国45局のラジオ局でパワープレイに選ばれるなど大型新人として話題に。その後、2008年8月リリースのSMAP「この瞬間(とき)、きっと夢じゃない」(TBS北京オリンピック2008テーマソング)の作詞作曲も担当。2009年5月発売のシングル「一粒大の涙はきっと」、8月発売のシングル「だから一歩前へ踏み出して」は、大塚製薬ポカリスエットCMソングに抜擢された。メンバーは全員仙台在住。