ナタリー PowerPush - Hi-Fi CAMP
「一握りの空の下」に込めたリスナーとの絆
ギターがいないのに、バンドっぽい
──メロディに関しては、今回もAIBAさんがまずトラックを作ってきたんでしょうか。
SOYA そうですね。そこから歌詞のイメージをふくらませて。
AIBA この曲は、去年のシングル「だから一歩前へ踏み出して」の夏っぽいイメージを意識しつつも、もっと新しくしていきたいなっていうのがあって。言葉で言うと、“突き抜ける”っていう表現がピッタリな曲にしたかったんですよね。
──それにしても、すごくバンドっぽいサウンドですよね。
AIBA そうなんですよね。ギターがいないのに(笑)。
──イントロはエレキギターの音が立ってたり、そこにキーボードも入ってきたり……そんなサイケな感じがカッコいいなって思いました。
AIBA ありがとうございます。「この4人だから」っていう縛りがない曲を作るのもいいかなって。
KIM でも結構この曲はモデルチェンジしたよね! 最初のデモからブラッシュアップを重ねるごとに表情を変えていったというか。で、最後にはこの“攻める形”に辿り着いたって感じですね。
──TOSHIROさんは、DJに関してどうでした?
TOSHIRO これはギターが表に出てくるロックテイストの曲なんで、スクラッチが入れやすかったですね。僕もイントロのサイケな感じは好きで、そこに乗っかっていこうと(笑)。でもSOYAの声が聴こえると、やっぱりHi-Fi CAMPぽい感じがするので……うん、いい曲だなって思います。
カップリング「灰色に咲く花」はSOYAの意欲作
──カップリングの「灰色に咲く花」は、楽曲の始まりと終わりで印象がまったく違いますよね。面白いサウンドの展開だと思いました。
AIBA はい。この曲はそれが狙いというか(笑)。今まで以上にドラマ性を意識していて、構成を練りながら、どんな風に作ったらリスナーに届くのかなって考えました。
TOSHIRO 最終的にはガン上がりみたいな感じになるんで、僕のスクラッチはいかにイントロとギャップを作るか考えましたね。
──SOYAさんは、この歌詞にどんな気持ちを込めました? 曲の前半と後半で雰囲気が違うし、後半は壮大な人生観みたいなことを歌ってますよね。
SOYA この曲の作詞はすごく難しかったんですよ。メッセージとしては、現代の僕らが暗い顔をしてたら未来の子供たちもきっと暗い顔になる。だから、今の僕らができることは、もっと前向きに生きてくことなんじゃないかっていう、結構大きなイメージですね。
──ここまでスケールを広げて書いた詞は初めて?
SOYA そうですね。僕の中では意欲作になりました。
──「灰色に咲く花」っていうタイトルも考えさせられるものがありました。
SOYA ええ。人間って、きっとグレーだと判断することがすごく多いと思うんです。でも、そのグレーゾーンの中で、たとえ難しくても、どれだけ自分に真っ直ぐ生きていけるかだなって思ってて。
──例えばHi-Fi CAMPの4人でいうと、ここはあえてグレーな感じにしておこうとか、意見がぶつかって、やむを得ずグレーになってしまったり……ってことはあるんですか?
KIM ありますね(笑)。でもそういうときに思うのは、多数決で解決するのは絶対違うなってこと。ぶつかったとしても、俺たちはメンバーだから、道のりは違ったとしても最終的に同じゴールを見てるわけで、怖がる必要はないんですよね。
──ぶつかったら、具体的にはどう解決していくんですか?
KIM 例えばみんなで1回リセットして、ここではどうするのがいいのかなって話します。そんなことをするたびにメンバー間の絆も強まってる気がするし、俺たちはそれさえも糧にできてるなって自信につながります。
AIBA グレーって確かに曖昧だけど、考え方を変えれば2人の中間って見方もできるし。制作に関して言えば、意見が分かれて2人の中間をとるってパターンも多々ありますね。
SOYA 人間はやっぱりグレーな部分があるから面白いのかなって気もするんですよ。グレーがあるからこそ人間らしいし、弱さも強さもあるからグレーになると思うんです。黒と白だけだったら、それはコンピュータですからね。
今年の下半期はライブ三昧に
──今後のHi-Fi CAMPですが、秋冬のライブハウスツアー「海仙山仙」が発表されましたね。
KIM はい。対バン形式のツアーなんですけど、年内はそのツアーで終わる感じですね。
──今年後半はライブ三昧な感じで。
KIM そうですね。明暗ハッキリした年になりました。
AIBA オイッ! 作曲を「暗」って言うなー(笑)。
KIM いやいや、表舞台と裏っていう意味でね(笑)。
AIBA でも本当にライブが多い下半期になるんで。そこでお客さんからいただいたパワーを、今後の作品に生かしていきたいと思ってます。
Hi-Fi CAMP(はいふぁいきゃんぷ)
KIM (Vo)、SOYA (Vo/MC)、AIBA (Key)、TOSHIRO (DJ)の4人により2007年1月結成。2008年6月にシングル「キズナ」でメジャーデビューを果たす。デビュー曲が映画「僕の彼女はサイボーグ」挿入歌に起用され、リリース前からUSEN総合チャートベスト10入り、全国45局のラジオ局でパワープレイに選ばれるなど大型新人として話題に。その後、2008年8月リリースのSMAP「この瞬間(とき)、きっと夢じゃない」(TBS北京オリンピック2008テーマソング)の作詞作曲も担当。2009年5月発売のシングル「一粒大の涙はきっと」、8月発売のシングル「だから一歩前へ踏み出して」は、大塚製薬ポカリスエットCMソングに抜擢された。メンバーは全員仙台在住。