IKEPYとカラオケに行ってできた曲
──ここで各自1曲、思い入れの強い収録曲について語ってもらいたいと思います。この曲に関しては自分が絶対話したい、というものを選んでもらえますか?
TJ じゃあまずは僕が。アルバムの最後の「SIMPLE THINGS」について語っちゃっていいでしょうか? その原曲を持ってきたのも僕なんで。
DAIKI いいけど、シンプルに語って(笑)。
TJ 実は以前、家が近かったこともあって、IKEPYとはプライベートで遊ぶことがちょいちょいあって。で、カラオケに自分たちの曲が初めて入ったときに「カラオケ行こうぜ!」ということになったんですけど、いきなり彼は玉置浩二の曲を歌い始めて、「あれ? うまいな!」と思って。そこで、僕の大好きなNickelbackの曲も歌ってもらったら、すげえうまくて、めっちゃいい声してるなって改めて思いました。そのときの印象がずっと頭に引っかかっていたんですね。
──一緒にカラオケにいって、発見があったと。
TJ バンドで曲を出すときに、シャウトがまったく入っていない、歌メロだけの曲が今までなかったんですよ。ただ、実はIKEPYって、QueenとかJourneyとかの曲にときどきあるメジャーキーの明るいサビがすごく好きなんですよ。僕はそれとは正反対の切ない感じが好きなんで、それぞれの好きな部分を調和させたらいい感じになるんじゃないかという思いで作りました。そういう意味で、この曲は初の試みでもあるし、自分からの発信だったりもするので……ここは「こんなバカでも曲を作ったんだよ!」なんて部分を受け止めてもらえれば(笑)。もちろんMAKOTOとDAIKIのアイデアもちゃんと入ってるんですけど……。
MAKOTO えーっと、今のTJの発言、通訳しなくて大丈夫ですか?(笑)
──はい、理解できると思います(笑)。
TJ 新しい試みではあったけど、うまくはまったので、この曲のイメージは今後のHNIBの型の1つになるかもしれないですね。
MAKOTO そこでひと言補足しておくと、Skid Rowの「I Remember You」であるとか、Mr. Bigの「Green-tinted Sixties Mind」みたいな、「ハードロックバンドのアルバムに必ず1曲は入っているであろういい曲」というような、カラッとした雰囲気がほしくて。
TJ いかにも炭酸飲料水のCMに使われそうな……。
MAKOTO うるさいよ(笑)。バンドとして打ち出したかったコンセプトとしては、そういうすっきりした感じですね。それをTJに振ったら実際にいい曲が上がってきたんです。
──この曲は、2人でカラオケに行ってなかったら生まれていなかったかもしれないわけですね?
TJ あのタイミングで一緒に行ってなかったら、全部シャウトの曲になってたかも? あ、それはないか(笑)。
IKEPY それは大げさでしょ。どれだけそのカラオケが衝撃的だったんだよ(笑)。
TJ でも実際、カラオケで思ったことがあったからこそ全編メロディのある曲にしたくなったんです。
メタルパンクにスタジアムロック、楽曲ごとに異なるイメージ
──では次にMAKIさん、お願いします。
MAKI 僕は2曲目の「DARK」について話しますね。これは、このアルバムの中でももっとも速い曲ということもあって、ドラム的にも当然ながら速いフレーズが多くて。そこも1つの聴きどころになるかな。やっぱりルーツ的に速いものが大好きというのがあって、こういう曲をやるってなったときに、ここは攻め切るしかないだろうと。ブラストビートとかは違うアレンジもいろいろ試してみたんですけど、最終的ここに落ち着きました。畳みかける感じに驚いてほしいですね。
MAKOTO じゃあ僕は4曲目の「SAVIOR」について。これは僕が作ってきた曲です。最終的にはちゃんとHNIBの音楽になっていると思うんですけど、僕のルーツが出ていると言うか、メタルパンクみたいな感じにもなっていて。最初はあんまり考えず「こんなの作ってみた」って曲を持っていったんだけど、そもそも意図せず作ったことで、アルバムにカラーを与えられたと思います。
──この曲のスピード感は、確かにメタルとは一線を画するものだと思います。
MAKOTO これはHNIBの中にあるパンクロックサイドと言うか、自分なりにルーツを持ち込んだ曲ですね。
──僕はこの「SAVIOR」と、それに続く「MASK」のコントラストが面白いと思いました。どちらも速い曲だけど性質が全然違っていて。
MAKOTO そうなんですよね。「MASK」はもっとドロッとしてる感じで、「SAVIOR」はヒーロー感があると言うか。僕のベースの聴きどころもCメロのあたりにあったりするんで、そこも聴いてほしいですね。
──さて、DAIKIさんはどの曲を?
DAIKI じゃあ、僕は3曲目の「KATANA」で。この曲はたぶん、アルバムの中でも一番シンプルじゃないかと思っていて、リフとかがすごく耳に残るはずなんですよね。聴きどころとしては、ギターソロ。僕がまずやって、そのあとTJが続くみたいな、いわゆるメタラーが聴くとアガるパターンの構成です。あと、Pantera的な要素があるのと同時に、それこそNickelbackじゃないけども、スタジアムロックみたいなものをちょっと意識したところがあって。なにしろ仮タイトルが「スタジアム」でしたから(笑)。そこに僕なりのものを詰め込めたかなあ、と。
──スタジアムロックの解釈の仕方にもHNIBらしさを感じますね。
DAIKI うん。しかも「KATANA」というタイトル自体、切れ味のいいリフと重なるところがあって。僕がいつも作ってくるリフとかフレーズって、全然意識してないんですけど、「和風だよね」ってよく言われるんです。そりゃそうですよね、僕、日本人ですから(笑)。
──「BAKEMONO」(2016年発表)と同様に、欧米のリスナーにはエキゾチックな響きを持つタイトルとして受け止められそうですね。IKEPYさんはどの曲で行きましょうか?
IKEPY 僕は10曲目の「FORSAKEN」で。
──この曲は新機軸とも言える仕上がりですね。
IKEPY そうですね。同時に今までHNIBがやってきたものが凝縮された曲になっているのかな、とも思っていて。みんなでシンガロングできる部分もあるし、リフにはやっぱHNIBらしさが出ているし、スクリームもメロディも入ってるし、急に展開するパートもあって。そういったHNIBのすべてが詰まったような曲であると同時に、いろんな要素がありながらもシンプルな構成にするという意味では新しいチャレンジだと思えた曲ですね。
DAIKI 寿司、ハンバーグ、カレーをいっぺんに食べる状態、みたいな(笑)。
IKEPY そう、おいしいものが全部詰まってる。モリモリな感じで。
- HER NAME IN BLOOD「POWER」
- 2018年4月4日発売 / Warner Music Japan
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[CD]
2808円 / WPCL-12856
- 収録曲
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- POWER
- DARK
- KATANA
- SAVIOR
- MASK
- KINGSLAVE
- IDENTICAL
- CALLING
- FALLEN
- FORSAKEN
- SIMPLE THINGS
- HER NAME IN BLOOD「FULL POWER TOUR 2018」
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2018年5月4日(金・祝)宮城県 仙台MACANA
<出演者> HER NAME IN BLOOD / NOISEMAKER2018年5月10日(木)愛知県 CLUB UPSET
<出演者> HER NAME IN BLOOD / 打首獄門同好会2018年5月11日(金)大阪府 soma
<出演者> HER NAME IN BLOOD / ANOTHER STORY2018年5月13日(日)福岡県 Queblick
<出演者> HER NAME IN BLOOD / GYZE2018年5月17日(木)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
<出演者> HER NAME IN BLOOD
- HER NAME IN BLOOD(ハーネイムインブラッド)
- IKEPY(Vo)、DAIKI(G)、TJ(G)、MAKOTO(B)、MAKI(Dr)からなるメタルコア / ラウドロックバンド。2008年に活動を開始し、BEFORE MY LIFE FAILSとスプリットCDをリリース。同年開催された「Taste Of Chaos 2008 in Japan」への出演を経て、全国各地でライブ活動を展開していく。2010年に1stフルアルバム「DECADENCE」を発表。以降、数多くの海外アーティストの来日公演でサポートを務めるほか、「SCREAM OUT FEST」など大型イベントにも出演した。2013年末から2014年初頭にかけては、中国でのフェス出演を含むアジアツアーを実施。2014年4月にフルアルバムとしては約4年ぶりとなる「HER NAME IN BLOOD」をリリースし、同年5~9月に全国ツアー「RETURN OF THE BEAST TOUR 2014」を行った。2015年6月にWarner Music Japanよりメジャーデビューすることを発表し、9月にミニアルバム「BEAST MODE」をリリースした。10月にはデビュー作のレコ発ツアーをスタートさせたほか、アメリカで行われたSlipknot主催のライブイベント「KNOTFEST 2015」に出演し、Judas Priest、Korn、Mastodonらと競演。11月にはオジー・オズボーン主催によるライブイベント「Ozzfest Japan 2015」に参加した。2016年9月にフルアルバム「BAKEMONO」をリリースし、11月に初のヨーロッパツアーを行った。12月に前任ドラマーUmeboが脱退。2017年4月に新ドラマーとしてMAKIが加入した。5月に5曲入りCD「FROM THE ASHES」を発表。その後、「Resurrection Tour 2017」を開催したほか、Megadeth、Anthraxの来日ツアーや、「SATANIC CARNIVAL’17」などに出演した。2018年4月にMAKI加入後初のフルアルバム「POWER」をリリース。同月に香港でライブを行い、5月より「FULL POWER TOUR 2018」を開催する。