“一夜限りの再結成”で一気に取り戻した

──「一晩だけの復活ライブ」をやろうと思ったときの心境はどうでした？

岡本　思い付きって言えば、思い付きなんですけどね。活動休止している間にほかのアーティストのプロデュースをやったり、いろんなミュージシャンと組んで活動してたんだけど、いろんな人から「ヘルマン、またやらないの？」って言われたりしてたんですよ。そのたびに「終わったことだから、（再始動は）ないよ」って答えてたんだけど、何度も「ヘルマン、カッコよかったよね」って言われるうちに、「インディーズ時代の楽曲から1回全部聴いてみよう」と思って。そのときに思ったのは、「カッコいいかどうかはわからないけど、とにかくやりたいことをやってたな」ということなんですよ。で、「こういうバンドがいて、こういう音楽をやってたんだ」っていうのを世に見せるのは、今が最後じゃないかなと思って。もちろん忘れ去られてるかもしれないし、メンバーにその気があるかどうかもわからなかったんですけどね、そのときは。ウルフも最初は渋ってたし。

若井　「え、このタイミングで？ マジ？」っていう。でも、“活動休止”ってことになってたから、どっかでケジメを付けなきゃなっていうのもあって。

岡本　うん、それも気になってたんですよね。解散したわけではないので。ホントにその日しかやらないつもりだったんだけど、実際にやってみるまではどうなるかわからなかったし、すげえ怖かったんですよ。“一夜限りの再結成”と言っても、オリジナルメンバーは3人しかいなくて。サポートメンバーを決めるのも大変で、お客さんに納得してもらえる演奏ができるのか？という心配もあったし……。でも、あのライブをやり切ったことで──政治はアンコールで1曲弾いただけだったけど──一気に取り戻したんだよね。「これが俺らだぜ」っていうのをドーンと出せたし、そうしたら、全然迷わなくなって。ずっと見向きもしてなかったし、もう1回ヘルマンをやるなんて思ってもなかったのに。

若いバンドと一緒にやっても違和感はない

──復活ライブでは熱狂的な支持を得ていましたよね。忘れらんねえよ、クリープハイプ、WHITE ASHをはじめ、ヘルマンをリスペクトする若いバンドも多いじゃないですか。

岡本　今バンドをやってるやつらとか、ミュージシャンがそういうふうに言ってくれるのはうれしいですよ。あの頃は俺らも無我夢中でやってたし、何もわかってなかったけど、「（ミュージシャンに影響を与えるような）そういう音楽をやれてたんだな」って。だいぶ時間が経っちゃったけど、そういうこととは関係なく走り出せたっていう感覚もあるし。まあ、若いやつらに負ける気はしないですけど。

平床　また、そういうことを言うと……。

岡本　嫌われちゃうな（笑）。

平床　（笑）。まあ、タイムラグは感じないですけどね。俺は別のバンドをやってたっていうのもあるかもしれないけど、ヘルマンが10年ぶりくらいにステージに上がって、今のバンドと一緒にやっても全然違和感がないというか。ただ、すごくマジメだなって思いますけどね、今のバンドは。

岡本　そうだね。

平床　リハやサウンドチェックのときも、ちゃんと挨拶するんですよね。俺らは全然ダメでしたからね、そういうところが。例えばモニターが聞こえないと「なんで聞こえねえんだよ」くらいのニュアンスだったから（笑）。

岡本　ハハハハハ（笑）。“ダルいゴッコ”みたいなこともやってたからね。楽屋に入って、ほかのバンドをチラッと見て、そのまま「だりいな」って言って寝てみる、とか。

若井　ひどいね、それ。

岡本　さすがに今は違いますけどね。