ナタリー PowerPush - Hermann H. & The Pacemakers

10年ぶりの新作を発表 バンド復活エピソード

1人でも「カッコよくない」と思うなら、一緒にやる意味はない

──確かに今回のアルバムを聴いていて、「メンバー自身がヘルマンのよさを深く理解したんだろうな」と思いました。それを形にするスキルも上がってるから、リスナーに伝わるスピードもさらに増していて。

岡本洋平(Vo, G)

岡本 なるほどね。なんて言うか、「いいことを言わなきゃ」とか「いいサウンドにしなきゃ」っていうのも一切ないんですよ、今回は。俺らの音であれば、それでいいと思ってるから。もうひとつは、平床が歌詞を書くことだったり、バンドが演奏すること、こいつ(ウルフ)が踊ること、お客さんの反応も想像しながら作ってたんですよね。それ以前に作ってたデモも何十曲とあったんだけど、政治に聴かせても「違うな」って言うんですよ。だから今回のアルバムの曲は全部新しく書いたんです。平床との作曲タッグだったり、今のメンバー、今の自分たちで、今の音楽をやるために書いたっていうことですね。

平床 うん。せっかく10年ぶりに集まってバンドをやるんだから、妥協は絶対にしたくなくて。誰か1人でも「カッコよくないな」と思うんだったら、一緒にやる意味はないですからね。そのこだわりは持ちつつ、酒を飲みながら制作してました(笑)。そこはブレちゃいけないな、と。

岡本 ブレちゃいけないのはどっち? 酒?

平床 どっちだろう?(笑) でも、妥協しないっていうこだわりは大切だと思う。

岡本 そうだよね。結局ね、疲れたり摩耗してくると、妥協するしかなくなるんですよ。そういう要素をできるだけ排除して、楽しみながら追求するっていうことですよね。もちろん、限られた時間の中で、ですけど。

──歌詞に関してこだわった部分はありますか?

平床 もちろんヘルマンのために書いてる歌詞だし、バンドとしてあるべき言葉、あるべき切り口にはこだわりましたけどね。これだけブランクがあったから、最初はよくわからなかったんですよ。日本語にすればいいのか、英語にほうがいいのかもわからなかったし……。そこはすごく考えましたね。

──以前にも増して、メッセージが強く伝わってくる印象を受けました。すごく率直な表現が多いな、と。

岡本 あ、そう感じてもらえるのはうれしいですね。

平床 やっぱりメッセージ性というものを信じてるし、何か物申していかないといけないっていうスタンスもありましたからね。

次のヘルマンらしさってなんだろう?

──2月からはやはり10年ぶりとなる全国ツアーもスタート。新しいヘルマンの真価が問われるのは、このアルバムを引っさげたツアーかもしれないですね。

若井悠樹(Wolf)

岡本 がんばって練習しないと。(若井に向かって)おまえもな。

若井 大丈夫、動きも全部決まってるから。……嘘です、まだ何も考えてない。

平床 踊るだけじゃなくて、シンセパッドも叩くんだろ?

若井 検討してみる(笑)。

──これだけ充実したアルバムができたわけだから、ツアーに対するモチベーションも上がってると思うんですが。

岡本 そうですね。ただ、俺の中ではすでに「次、何やろうか?」っていうことも考えていて。

平床 へー、そんなのがあるんだ。

若井 聞いてないな。

岡本 まだ誰にも言ってねえから(笑)。今回のアルバムはヘルマン特有の感じ──4つ打ちだったり、パンキッシュだったり、ラウドだったり──のほかに「ミディアムテンポのダンスチューンを確立したい」っていうのがあって。それを経て、「次のヘルマンらしさってなんだろう?」って。

──ということは、バンドはこの先も続いていくということですね。

平床 ですよね。考えてもなかったけど。

岡本 ウルフは脱退するかもしれないけどね。

左から平床政治(G)、岡本洋平(Vo, G)、若井悠樹(Wolf)。

若井 ウルフは世襲制にしようかな、2代目を見つけて。襲名式は、ナタリーさんでも取り上げてもらおう(笑)。

岡本 ハハハハハ(笑)。ほら、今って“音楽(業界)は大変だ”って言われてるじゃないですか、ロックもそうだけど。そういう懸念は1回、置いておこうぜっていう感じなんですよね。何かのマネとか、新しいことを狙ってやるんじゃなくて、自分たちらしいことをやれたらいいと思うし。

平床 肩肘張らずに、いい酒が飲めればいいんですよ。俺はホントに「ひさびさにこいつらと遊びたい」と思ったから、一緒にやってるんですよね。その楽しい感じが音楽に直結してると思うし、それがなくならなければ大丈夫じゃないかなって。

ニューアルバム「THE NOISE,THE DANCE」2014年1月29日発売 / 2800円 / Mini Muff Records / XQDF-2031
収録曲
  1. Welcome Home Heroes
  2. San Jose
  3. Dance, don't run!
  4. THE COMPOUNDER
  5. The Big Upset / 番狂わせ
  6. スターライト
  7. MISTER MEMENTO
  8. WHO’S The Boss??
  9. 王様の瓶
  10. Wake up & Go
ライブ情報
Hermann H. & The Pacemakers 全国ツアー「"DANCE 'EM ALL" 2014」
  • 2014年2月20日(木)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers / 髭
  • 2014年2月22日(土)北海道 札幌KRAPS HALL
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers / テスラは泣かない。
  • 2014年3月1日(土)東京都 赤坂BLITZ
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers
  • 2014年3月9日(日)大阪府 Shangri-La
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers
  • 2014年3月21日(金・祝)愛知県 APOLLO BASE
    <出演者>
    Hermann H. & The Pacemakers / キュウソネコカミ
Hermann H. & The Pacemakers
(へるまんえいちあんどざぺーすめーかーず)

岡本洋平(Vo, G)、平床政治(G)、溝田志穂(Key)、若井悠樹(Wolf)からなる4人組バンド。1998年1月より活動を開始し、翌1999年10月に1stミニアルバム「HEAVY FITNESS」を発表。2001年9月にマキシシングル「言葉の果てに雨が降る」でメジャーデビューを果たす。4つ打ちを取り入れたキレのあるロックナンバーや、若井のアグレッシブなステージパフォーマンスなどで人気を博す。2003年1月にギターの平床が脱退し、その後バンドは2005年3月に活動を休止した。しかし約7年後の2012年2月に東京・LIQUIDROOM ebisuにて1日限定の復活ライブを開催し、6月に本格的な活動再開を発表。さらに2013年1月には平床が再加入し、その後バンドは「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」「BAYCAMP2013」などの大型イベントに出演。ロックファンに健在ぶりをアピールした。2014年1月に活動再開後初となるアルバム「THE NOISE, THE DANCE」をリリースし、2月からはアルバムを携えたツアー「"DANCE 'EM ALL" 2014」で全国5都市を回る。