花澤香菜×佐橋佳幸|直感に導かれた春の風景

花澤香菜の通算12枚目となるシングル「春に愛されるひとに わたしはなりたい」が完成した。本作はギタリスト佐橋佳幸がトータルプロデュースを務めており、佐橋は水野良樹(いきものがかり)が書き下ろした表題曲「春に愛されるひとに わたしはなりたい」のアレンジのみならず、カップリングに収録される2曲の作・編曲を手がけている。

本作が初のコラボレーションながら、すっかり意気投合している花澤と佐橋。音楽ナタリーでは2人そろってのインタビューを行い、楽曲制作の過程から、シングル発売後に開催を控える一夜限りのワンマンライブ「KANA HANAZAWA Concert 2018 "Spring will come soon"」の話題まで、たっぷりと語り合ってもらった。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 曽我美芽

まずは声ありき

──お二人は今回のコラボが初対面なんですよね。

左から花澤香菜、佐橋佳幸。

佐橋佳幸 うん。でもね、あとあとわかったんだけど、香菜ちゃんの声はよく知ってた。「あ、あの声も香菜ちゃんだったんだ」って作品がいくつもあって。まあ、香菜ちゃんの声を知らない日本人はいないよね。

花澤香菜 いやいや(笑)。

佐橋 歌声を聴いたのはお話をもらってからなんですけど……僕はね、一緒にお仕事をするうえで、声がダメだともう全然ダメなんですよ。それは男の人、女の人、バンドに限らず。上手な人だとか、有名だからだとか、そういうのは関係なくて。総じて言えば、声フェチ? 映画で役者さんの演技を観ても、しゃべっている声がピンとこないと、ちょっとなあ……って思っちゃうんです。だって一緒に曲を作るということは、その人の声がどういうふうに聞こえるかをずーっと考えることになるわけでしょ。だからまずは声が好きかどうか、そこをクリアしないと。

──声フェチの観点で、花澤さんはバッチリだったと。

佐橋 そう。打ち合わせでお話しして、今までの作品を聴かせていただいた段階で「あ、これは面白いものが生まれそうだな」という予感がありました。僕はそういう勘だけを頼りに三十数年間やってきたから間違いない(笑)。あと、話をいただいた時点で「あらかじめ水野(良樹)くんに曲をお願いしている」と聞いていて。僕はいきものがかりのデビュー前から彼のことを知っているので、ますます面白そうだなと。

──花澤さんは、佐橋さんにお会いしてどんな印象を持ちましたか?

花澤香菜

花澤 最初に打ち合わせをさせていただいたときから親しみやすさがあふれ出ていて(笑)。これまでのご活躍も知ってましたし、私はすごく緊張しいなので、初対面のときはドキドキしていたんですけど、そういう心配を全部取っ払ってくださる方だなって思いました。最初の段階から「僕、こういうのがやってみたいんだよね」とか、どうやったら楽しくなるのかをどんどん提案してくださるので、私もワクワクして。

佐橋 そうだね。確かに初対面から土足でどんどん入り込んでいったかもしれない(笑)。

花澤 そんなそんな(笑)。

佐橋 そのあとすぐにスタジオでご一緒したんだけど、その段階でこのシングルはだいたいできたようなもんだったよね。シングル発売後のライブまでトータルでお願いされたので、「じゃあ水野くんの曲以外にもいろいろ試してみようよ」って。ギターをちょっと弾きながらキー決めをしているだけで、もうイメージは広がる一方だったから、これはうまくいくぞと確信しました。

歌詞もメロディも2人で一緒に作ったようなもの

──本作のイメージはどのように固めていったんですか?

花澤 佐橋さんと水野さんに参加していただくことが決まって、「じゃあ発売日はどのくらいになるかな」って話を進めていて……。

佐橋佳幸

佐橋 香菜ちゃんの誕生日(2月25日)も近いし、ライブ会場のブッキングなんかも含めて、2月のこのあたりがいいかなと見えてきて。「桜にはまだ早いけど梅はそろそろかな」みたいな時期だから、なんとなく春っぽいイメージに話が向かっていったのかな。そこからサウンド作りのイメージとか、どういう歌い方がいいかとか、目指す方向が決まってきて……そうこうしているうちにあと2曲できちゃった。

花澤 すっごいんですよ、もう。最初のプリプロの段階で「ひなたのしらべ」も「夜は伸びる」も1番までできちゃったんです。

佐橋 そこから「ごめん、もう1つメロディ足したくなっちゃったから」って持って帰って、歌詞のテーマを香菜ちゃんに話して書いてもらって……カップリングの2曲は、そうやって香菜ちゃんと何度かキャッチボールをしながら作っていったんです。どういう曲にしたいかってお話をいっぱいしたよね。

花澤 はい。今まで自分で作詞をするときは、完成したオケを聴いてから考えるか、先に詞を作るかどちらかだったので、こういうふうにちょっとずつ、みんなで方向を決めながら作詞をするのは初めてだったんですけど、「こんなにスムーズにいくんだな」って驚きました。佐橋さんは作詞のときもいろんなアドバイスをくださったんです。

佐橋 ついつい口を出しちゃったんだよね(笑)。ごめんね。

花澤 いえいえ。私が歌詞で悩んでいるときも、ポンとヒントを与えてくださるんですよ。

佐橋 僕もびっくりするくらいスムーズでしたよ。だからこの2曲は、クレジット上は「作詞:花澤香菜 / 作・編曲:佐橋佳幸」になってますけど、歌詞もメロディも2人で一緒に作ったようなものです。

花澤香菜「春に愛されるひとに わたしはなりたい」
2018年2月7日発売 / SACRA MUSIC
花澤香菜「春に愛されるひとに わたしはなりたい」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
1728円 / VVCL-1164~5

Amazon.co.jp

花澤香菜「春に愛されるひとに わたしはなりたい」通常盤

通常盤 [CD]
1296円 / VVCL-1166

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CD収録曲
  1. 春に愛されるひとに わたしはなりたい[作詞・作曲:水野良樹 / 編曲:佐橋佳幸]
  2. ひなたのしらべ[作詞:花澤香菜 / 作・編曲:佐橋佳幸]
  3. 夜は伸びる[作詞:花澤香菜 / 作・編曲:佐橋佳幸]
  4. 春に愛されるひとに わたしはなりたい(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • 春に愛されるひとに わたしはなりたい(Music Clip)
KANA HANAZAWA Concert 2018 "Spring will come soon"
  • 2018年2月10日(土)東京都 新宿文化センター
花澤香菜(ハナザワカナ)
花澤香菜
1989年2月25日生まれ、東京都出身の声優。2006年放送の「ゼーガペイン」で初のヒロインとなるカミナギ・リョーコ役を演じ、2007年には「月面兎兵器ミーナ」「スケッチブック ~full color's~」「ぽてまよ」といった作品で次々と主要キャラクター役に抜擢された。その後も「こばと。」「化物語」「海月姫」などの人気アニメでヒロインを演じるかたわら、多数の作品でキャラクターソングを歌い、2011年放送の「ロウきゅーぶ!」では声優ユニット「RO-KYU-BU!」のメンバーとしても活躍。2012年4月にはシングル「星空☆ディスティネーション」でソロデビューを果たした。2013年2月には1stフルアルバム「claire」を発表し、同年3月には大阪・NHK大阪ホール、東京・渋谷公会堂にて初のワンマンライブを行い、いずれも大成功に収めた。2014年2月には2ndアルバム「25」、2015年4月には3rdアルバム「Blue Avenue」、2017年2月には4thアルバム「Opportunity」を発表。2018年2月には佐橋佳幸をプロデューサーに迎えた12枚目のシングル「春に愛されるひとに わたしはなりたい」をリリースし、同じく佐橋とのコラボレーションによるワンマンライブ「KANA HANAZAWA Concert 2018 "Spring will come soon"」を東京・新宿文化センターで開催する。
佐橋佳幸(サハシヨシユキ)
1961年9月7日生まれ、東京都出身のギタリスト。中学生時代にギターと出会い、1983年にバンド・UGUISSのメンバーとしてプロデビューを果たした。UGUISS解散後はセッションギタリスト、作編曲家として、山下達郎、竹内まりや、佐野元春、小田和正、渡辺美里、氷室京介、藤井フミヤ、松たか子ほか多彩なアーティストの作品やライブで活躍している。1994年4月には初のソロアルバム「TRUST ME」を発表。2015年11月には32年のキャリアを凝縮した3枚組コンピレーションアルバム「佐橋佳幸の仕事(1983-2015)~Time Passes On~」がリリースされた。また小倉博和とのギターデュオ・山弦やDr.kyOnとのユニット・ダージリン、Dr.kyOn、渡辺美里とのユニット・三ツ星団でも個性を発揮している。