ハコイリ♡ムスメ|“エトワールを夢みる少女たち”が見据えるその先の世界

後輩にすべてを教えきってから卒業したい

──鉄戸さんが卒業して現在オリジナルメンバーはリーダーの我妻さんだけですが、そのことについてはどのように感じています?

我妻桃実

我妻 こんなに早くオリジナルメンバーが私だけになるとは思ってなくて。同い年だったメンバー2人とは「卒業する時は一緒だね」なんて言い合ってましたし(笑)。ハコムスには100曲以上のカバー曲があって、4期がまだライブでやったことのない曲もあるんですよ。下の子に伝えることをちゃんと伝えていかないと、いつか私が卒業したときにハコムスの歴史が続いていかないんじゃないかなと去年リーダーになったときから不安に思っていて。今はグループの中で曲のイメージを統一させたり、振り付けの意味やその曲を初めて披露したときの様子をメンバーに伝えたりしている最中なんです。いつか辞めるときには後輩に全部を教えきったという実感を持っていたいですね。

鈴木 今は我妻がいないと大変なんですよ。だからまだまだ卒業できないよね。

──我妻さんは4年前と比べてかなり雰囲気が変わりましたよね。当たり前ですが結成当初はもっと子供っぽかったですし、何を考えているのかわからないというイメージでした。

鈴木 4年前はちょっと不思議ちゃんっぽくて、いつもちまたんっていう名前のぬいぐるみを抱いていたよね。1回目のバスツアーの前日に「明日、ちまたんを連れて行っていいでしょうか?」ってLINEが来てビックリしました(笑)。

我妻 あははは!(笑)

──今ではハコムスをしっかりと支えるリーダーで、年下のメンバーにとってはお姉さんどころか親のような存在ですよね。どのタイミングで変わったんでしょう?

我妻 小松もか(2016年7月に卒業)がリーダーをやっていた時期があるんですけど、もかちゃんはびっくりするぐらいしゃべれなくて(笑)。実質トークを仕切っていたのは当時最年長の(門前)亜里(2015年7月に卒業)ちゃんだったんです。その亜里ちゃんが卒業することになったときに、「このままじゃダメだ」と思ったのを覚えています。

──なるほど(笑)。

鈴木 ある意味、小松のおかげで成長できたんだね。

我妻 メンバーが卒業するたびに、その子が持っていた強みを補えるようにしたくて。辞めていったメンバーの長所をつないでいくようなパフォーマンスを心がけています。

私たちの心情をそのまま描いた曲

──ここからは7月10日発売のニューシングル「エトワールを夢みて」について伺います。「エトワール」はパリ・オペラ座バレエ団のダンサーの最高位、そしてフランス語では「星」を指す言葉で、この表題曲では初めての発表会を迎えるバレリーナの女の子たちの気持ちが歌われていますね。

吉田 私は小学1年生からハコムスに入るまでずっとバレエを習っていたので、ミキティー本物先生に振り付けしていただいたダンスを最初に踊ったときになんだか懐かしい気持ちになりました。曲中にかれんちゃんとダンスバトルするシーンではバレエの発表会のことを思い出します。

寺島 「夏の初めの舞台目指して」「未来へ向かう最初の舞台」という歌詞が7月29日に1stコンサートを控えているハコムスにぴったりと言うか、私たちの心情をそのまま描いたような曲なんです。ライブではコンサートに向けた思いを乗せながら歌っています。

──バレエを意識した振り付けは踊るのが大変じゃないですか?

寺島和花

寺島 ぽにょ、かれんちゃん、万葉は体が柔らかくて。振り入れのときにミキティー先生から「できる3人とほかのメンバーの差がすごいよ」と言われたので、毎日脚が上がるように練習して3人に追い付けるようにがんばっています。

──吉田さんとダンスバトルをしている阿部さんはいかがですか?

阿部 私はフィギュアスケートを習っていたことがあるんですよ。根本的にはフィギュアの動きもバレエと同じなんですけど、万葉は脚を上げても体がブレず、とても華やかな踊りをしている一方、私は足先をピンと伸ばせていないときがあって。万葉と向き合うたびに自分の踊りに対する反省や悔しさが込み上がってくるので、一歩ずつ階段を登っていくようなイメージで練習しています。

「夕やけニャンニャン」のビデオを観てトリップしていた

──「エトワールを夢みて」はハコムスにとって13曲目のオリジナルナンバーになります。カバー曲のセレクトには鈴木さん自身の趣味が大きく反映されていて、そのこだわり方に1980~90年代のアイドルに対する強烈な愛情を感じるのですが、オリジナル曲に対しては毎回どのような狙いや考えがあるのでしょうか?

鈴木 オリジナル曲もハコムスのコンセプトからは絶対に外れないようにしつつ、その枠の中でいろんなジャンルの曲をやりたいと思っています。王道な曲もあればスカやジャズっぽい曲もあって、今回はバレエがテーマだったので17世紀初頭のバロック時代の流行りの音を曲に取り入れてもらいました。私は音楽の専門的なことはわからないのでその都度イメージや、元ネタにしたい1980~90年代の楽曲を作家さんに伝えています。

──ハコムスの歌うカバー曲はその時代のアイドルソングが中心ですが、オリジナル曲にも同じ時代感が貫かれているんですね。

鈴木 もちろんです。1980~90年代のアイドルが歌っていてもおかしくない曲というテーマを設けています。本当はあの時代のシティポップやAORとかも好きなんですけど、ハコムスはアイドルなのであまりオシャレにならないように、ダサさを残すようにも意識して、ギリギリのラインを狙っています。

──カバー曲もかなりマニアックな曲をセレクトしていますよね。今までのアイドル好きや歌謡曲好きの人たちが突いてこなかった狭間を突いていると言うか。同じ時期にデビューしたアイドルネッサンスともカバーの方向性がまったく違うし、4年前の夏に初めてハコムスのライブを観たときには一体どこの層を狙ったグループなんだろうと思ってしまいました。

鈴木 ハコムスがカバーしているCoCoさん、ribbonさん、Qlairさんの曲など、“アイドル冬の時代”と言われた1980年代後半から1990年代初頭にもそんなに知られてはいないけど素晴らしい曲がたくさんあって、埋もれてしまうのはもったいないと思っているんですよ。

──でも、鈴木さんはリアルタイムでその時代の曲を聴いていたわけではないですよね。どうしてその時代のアイドルソングに異常な愛を持つようになってしまったんですか?

鈴木 リアルタイムじゃないからこそ、逆に固執しちゃうのかもしれません。最初はおニャン子クラブの高井麻巳子さんのことを後追いで好きになったんですけど、その時代に生きられなかったことへの後悔がすごくて。高校生のときに毎日夕方5時に「夕やけニャンニャン」のビデオを観るという生活を送っていたら、実際にその時代を生きていたような感覚になれたんですよ。

──ビデオを観ることでその時代にトリップしていたと(笑)。

鈴木 はい(笑)。当時を生きていたかのように記憶がすり替わったので、その時代のヒットソングを聴くと懐かしいなと思っちゃうし、今新しい曲を作らなくても、すでにこんなにいい曲があるのならそれを世の中に広めていったほうがいいと思ってるんです。なので、ハコムスはアイドルグループと言うよりは1980~90年代の曲を歌うグループという感じで、ほかのアイドルとは概念が違うのかもしれません。

──メンバーにとっては、鈴木さんが選ぶカバー曲は知らない曲ばかりだと思うのですが。

寺島 家で歌の練習をしてるとお母さんやおばあちゃんが、「その曲知ってる!」って反応してきます。

阿部 YouTubeで検索しても出てこない曲もあるんですよ。

鈴木 有名な曲はうちがやらなくても誰かが歌ってくれるじゃないですか。誰も歌わないであろう名曲をカバーしたいんです。

吉田万葉

吉田 昔の曲は今の曲と雰囲気が違うから、聴いていて不思議な気持ちになりますね。

鈴木 今の時代の曲と何が違う?

吉田 なんだろう……音も歌い方も違うし、普段自分が聴いているような曲とは違う世界というイメージです。ハコムスがカバーしていない曲でも、1980年代の曲を聴くとハコムスの曲のように聞こえます。

鈴木 順調に育ってますね(笑)。当時の曲は作家陣もすごくて、とにかく質がいいから、若い頃から聴くのはいいことなんじゃないかな。歌詞の内容も美しいし、教育にいいと思いますよ。

ハコイリ♡ムスメ「エトワールを夢みて」
2018年7月10日発売 / PENGUIN DISC
ハコイリ♡ムスメ「エトワールを夢みて」

[CD]
1200円 / PGDC-0008

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収録曲
  1. エトワールを夢みて[作詞:浅野まこと / 作曲・編曲:James Panda Jr.]
  2. 皆さん、Love&Peaceです! / 柳♡箱[作詞:ぱいぱいでか美 / 作曲・編曲:KOJI oba]
  3. エトワールを夢みて(Instrumental)
  4. 皆さん、Love&Peaceです!(instrumental)
イベント情報
ハコイリ♡ムスメ1stコンサート カバー公演 ~青春の音符たち~
  • 2018年7月29日(日) 東京都 オルタナティブシアター
    OPEN 12:30 / START 13:00
ハコイリ♡ムスメ1stコンサート オリジナル公演~私たちの宝バコ~
  • 2018年7月29日(日) 東京都 オルタナティブシアター
    OPEN 18:00 / START 18:30
ハコイリ♡ムスメ
ハコイリ♡ムスメ
女優志望の十代女子により2014年夏に結成されたユニットで、現在のメンバーは阿部かれん、我妻桃実、星里奈、寺島和花、吉田万葉、井上姫月、塩野虹、戸羽望実の8人。オリジナル楽曲のほか1980~90年代アイドルソングの名曲をレパートリーに持ち、「癒しと安らぎ、トキメキ」を与えることをテーマにしたパフォーマンスで「女の子本来の可愛らしさ」を表現している。また女優としての側面を生かし、2014年秋には「劇団ハコムス」を旗揚げ。芝居と音楽を融合した公演を行っている。2016年7月より、タワーレコード内に新設されたレーベル・PENGUIN DISCに参加。同年11月に初の全国流通シングル「ハコいっぱいのプレゼント」を発表した。2018年1月にPENGUIN DISCのレーベルメイトであるRYUTistとのコラボユニット・柳♡箱として、シングル「ともだち」をリリース。同年2月にはカバーアルバム「青春の音符たち~Respect for 80's&90's」を発売した。7月には2枚目の全国流通シングル「エトワールを夢みて」をリリースするほか、東京・オルタナティブシアターでカバー曲の公演とオリジナル曲の公演2部構成のワンマンライブ「ハコイリ♡ムスメ1stワンマンコンサート」を開催する。