ナタリー PowerPush - ギターウルフ
日本人よ野獣のように震えろ!
ノートに書いたら「メソポタミアロンリー」
──「メソポタミアロンリー」は、古代文明と未来と現在をタイムマシンで行き来する壮大かつぶっ飛んだ物語ですが、どんなところから発想していったんでしょう?
セイジ いつも言ってるように、アンテナをいっぱい立てて、宇宙からのテレパシーを待っているかのように、曲をキャッチする瞬間を待ってるんだけど。キターッ!ってものをノートに書いたら「メソポタミアロンリー」で。あれ、これっていったいなんだろう?って(笑)。
──ははは(笑)。意味はわからないけど、とりあえず言葉が浮かんだと。
セイジ なんらかの気分は乗っかってるから、イメージがバーッと浮かんでくるし。
──そこからどうやって歌詞のストーリーを?
セイジ 古代メソポタミアに男が取り残されて。たぶん寂しがってるだろうなと(笑)。彼女とはぐれたんだろうと。古代メソポタミアに行くにはタイムマシンしかない。……そこまでは入っていけたんだけど、あとがわからなくて。で、古代バビロニアの本とか調べるんですよ。そうしたら、だんだん自分もその世界に入っていって。で、バベルの塔がそこにあるんですよ。「おおバベルの塔がそこにあるのか!」と。そこでバベルの塔の屋上に登って、見回して(彼女を探して)みたけど、同じ場所だけど違う時代にいる。途方にくれてモヘンジョダロの市場を歩いていたら古文書があって、パッと見たら象形文字(笑)。ギルガメッシュって王様がそこにいるって、そのとき初めて知って。たぶんいやらしい奴だろうなと(笑)。
──それ「ギルガメッシュないと」(※1990年代に人気を博した深夜バラエティ番組)から連想してるでしょ。
U.G&トオル ははははは(笑)。
セイジ 彼女とはぐれたから、自分でメソポタミアのことを調べていくうちに、いつの間にかその世界にどんどん入り込んでいったという。不思議な曲でしたね。
──「象形文字で書かれた 君からのメッセージ」って歌詞もすごいですね。なんで読めるんだよっていう(笑)。
セイジ ははは!(笑) 未来から来た人だから自動翻訳の機械を持ってるんですよ(笑)。
幽霊にまで手を出しちゃってどうしよう
──「ガソリン子守歌」は、バイク乗りのセイジさんならではの曲ですか?
セイジ いや、これはオレが東京に出てくる直前の頃を歌った曲ですね。今は東京に住んでるからそういう感覚はなくなったけど、あの頃はもう東京っていうのは南極と同じような感覚で捉えてて。生きるか死ぬかのあの場所で、そこでオレは何者かになれるのかっていう。そういう期待感と恐怖感みたいなもの。将来爆発させるであろう、自分の中の気合い……心の中の“ガソリンの揺れ”を感じて、ようやく寝ることができる。毎晩毎晩そんなことを考えてると眠れないんですよね。逆に気になる女の子のことを考えてると眠れたりして。
──そうか。「オレはミッドナイトのセブンティーン 女の裸が頭にチラつく」という一節ですね。そういえばセイジさんはブログでもけっこう昔の思い出話を書いてますよね。
セイジ そうそう。なんとか記憶を呼び起こしてね。必死こいて書いてますよ。
──かなりじっくり時間をかけて練って書いてる感じで、セイジさんが実は言葉の人でもあるっていうのがわかります。
セイジ そうですか? ハッハッハッ!(笑)
──そういう印象がありますよ。例えば「幽霊ユー」なんてタイトル、普通の人じゃなかなか思い付かないですよ。
セイジ いやあ……幽霊にまで手を出しちゃって、この曲どうしようっていう(笑)。
──やはりこれも「幽霊ユー」という言葉が最初に浮かんできたんですか?
セイジ もちろん!
──普通浮かんでこないと思うんですけど……。
セイジ まあ、暗い顔した女の人がんばれって歌ですよ。
──「魔界の君を助け出したい エクソシストはオレさ」という一節がありますが、これはラブソングと思っていいんですか?
セイジ そう……ですね。でも、昔からオレはラブソングが多いですよ。「♪ミサイルシティーのあの娘が欲しいゼ」(※1995年発売のアルバム「ミサイルミー」のタイトル曲)とか。基本ですよ、自分の。ロックンロール、バイク、女の子、青春、宇宙。それを自分がいろいろ経験した場面や瞬間を思い出しながら、激しく出していく。でもこの曲は歌詞が長すぎてちょっと反省してます。
──これで?(笑) この曲はどんな形で組み立てていったんですか?
セイジ 幽霊っぽい……(笑)。曲のパターンそのものは簡単ですけどね。リンク・レイとか。歌詞もそうだけど、音に対しても、タイトルのイメージがすべてを決定するので。だから幽霊のイメージ。
──タイトルに込められたセイジさんのイメージを、いかに音として焼き付けるか、という。
セイジ そうです!
──曲から作るってことはないんですか?
セイジ ないですね、ぜんぜん。たとえフレーズだけを考えたとしても、それには命が宿らないので。すぐには使わない。
──カッコいいギターのリフを思い付いても、そこから曲を作ることはない。
セイジ 将来はあるかもしれないけど、今のところはないですね。
──じゃあ浮かんだとしてもストックしておく?
セイジ いやあ忘れますよ(笑)。
──録音しておくとか。
セイジ 録音しておいても意味ないですよ。よっぽど心に残ったものは覚えてるから。そういうものじゃないと使えない。まあ録音しておいて後で聴いてもいいかもしれないですけどね。なんかのアイデアのヒントにはなるかもしれないし。でも……面倒くさいし(笑)。
- ニューアルバム「野獣バイブレーター」 / 2013年3月6日発売 / 3000円 / Ki/oon Music
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3000円 / KSCL-2203~4
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3000円 / KSCL-2203~4
- 通常盤 [CD] / 2700円 / KSCL-2205
CD収録曲
- 野獣バイブレーター
- メソポタミアロンリー
- ガソリン子守歌
- 幽霊ユー
- ロボットマリア
- バッティングセンター
- サファイヤCITY
- マグマ信長
- ゲロナイト
- 地球 VS エイリアン
- 女マシンガン
初回限定盤DVD収録内容
GUITAR WOLF LIVE BOOTLEG ARCHIVE 2012
- 野獣バイブレーター
- オールナイトでぶっ飛ばせ!!
- ケンカロック
- ガソリン子守歌
- ワイルド ゼロ
- 火星ツイスト
MUSIC CLIP
- ジェット サティスファクション
- フーチークーチースペースマン
ギターウルフ
1987年結成のスリーピースロックバンド。革ジャン、革パン、サングラスがトレードマークで、3コードを基本としたシンプルなロックンロールを鳴らす。ヨーロッパやアメリカでの評価が非常に高く、早くから海外でのライブ活動を行っていた。2005年にベースのビリーが心不全により急逝。同年9月に楽器未経験者のU.G(B)がメンバーとして加入した。2007年にはセイジ(Vo, G)の股関節損傷を理由にライブ活動を一時休止。2010年からライブ活動を再び本格化させた。2013年3月には前作「宇宙戦艦ラブ」から約2年4カ月ぶりとなるニューアルバム「野獣バイブレーター」をリリース。