ナタリー PowerPush - GRAPEVINE

メンバー5人の語ること

「光について」は幕の内弁当

──1999年に発売された「光について」はベストアルバムの収録曲を決める人気投票でも1位でしたし、よくフェスでも演奏されてます。何年も前の曲がいまだに根強い人気を誇っていることについてどう思いますか?

西川 やっぱりあのイメージをずっと持ってる人は多いんだなとは思いますね。でもそれは別に悪いことでもないですし。あれはギターロックっぽい部分もあれば非常にポップな部分もあって、きれいなメロディで、歌も歌いあげて……っていう、1曲で全部を語ろうとしてるものの代表だと思うんですよね。

田中 コッテコテやもんね(笑)。

西川 ああいうのは最近あんまり作らなくなってきましたね。

──でも「光について」のような曲を求めている人はおそらくたくさんいると思うんです。

西川 そうですね、イメージがそうだから。ああいう幕の内弁当みたいなやつ好きなんじゃないですか、みんな。

田中 たぶん日本のロックの典型ってこういう作り方をしてるんじゃないですかね。だからそういうものを求める人が多いんでしょう、きっと。

西川 そういう意味では、ギターバンドでやる範囲ではよくできてる曲ですね。

田中 まあ名曲ということで(笑)。

──亀井さんは作曲者としてどうですか?

亀井 名曲ですね。さすが1位。

一同 (笑)。

高野 自分で言った(笑)。

ものすごく複雑に入り組んだ形で出すのが好き

──これは外から見た印象なんですけど、GRAPEVINEはポピュラーなものに対するアンチの精神があるんじゃないかと思っていて。

田中 そうですね、大人になった今も拭い去れないそういうとこあると思いますよ(笑)。

──そんな3人を見て金戸さんはどう思います?

金戸 ひねくれてるよね。

西川 まあそうでしょうね(笑)。

──高野さんはどうですか?

高野勲(Key, G)

高野 でも個人レベルではミーハーな部分もみんなあったりするし、バランスがうまく取れてるような気がしますけどね。音には伝わるところと伝わらないところがあるのかもしれないですけど。全面的にそれを押し出すっていうことが嫌いなんでしょうね。自分の好きなポップの部分を1枚ぐらい包み込んだものをうまく散りばめるっていう感じのほうが、合ってるとか好きだとかそういうことだと思うんですけどね。

田中 そうですね。例えばアンチテーゼ的な気持ちを、「はいこれ何々に対してのアンチです」って出すことはしないですね。もちろん愛するものもたくさんあるんで、それをものすごく複雑に入り組んだ形で出すのが好きなんじゃないですかね。「わかりますかこれ?」「どういうふうに見えますか?」っていう。

高野 そういうのがひねくれてるって言われるんだろうね。でも僕はひねくれてるとは見てて全然思わない。バランス感覚に優れてないと逆にできないことなんで。変に考えこんでるわけでもないし、自然にそうなっていってるんだと思いますし。まあずっとそういうスタンスでやってるからそういうイメージが付いてるだけで、本人たちはいたって自然体というか。わざとひねくれてたらこんなに続かないんじゃないですかね(笑)。がんばっちゃうと空回りしたりなかなか前に進めなかったりってことけっこう多いと思うし。大変ですね、イメージ付くとね(笑)。

左から、金戸覚(B)、田中和将(Vo, G)、亀井亨(Dr)、高野勲(Key, G)、西川弘剛(G)。
ニューアルバム「愚かな者の語ること」/ 2013年4月24日発売 / PONY CANYON
初回限定盤[CD+DVD] 3600円 / PCCA-03818
通常盤 [CD] 3000円 / PCCA-03819
CD収録曲
  1. 無心の歌
  2. 1977
  3. コヨーテ
  4. なしくずしの愛
  5. われら
  6. 迷信
  7. うわばみ
  8. 太陽と銃声
  9. 片側一車線の夢
  10. 虎を放つ
初回限定盤DVD 収録内容
  • GRAPEVINE in concert:15th Anniversary live at NHK Hall (2012.09.26)
    光について / マダカレークッテナイデショー / アナザーワールド / CORE / here / Time is on your back / 会いにいく / エレウテリア / Everyman,everywhere / 鳩
  • GRAPEVINE in studio:「1977」Recording Sessions
GRAPEVINE監修「グレープパインSODA」

4月24日12:00よりfamima.comにて販売開始。詳しくはこちら

GRAPEVINE(ぐれいぷばいん)

田中和将(Vo, G)、西川弘剛(G)、亀井亨(Dr)の3人からなるロックバンド。1993年に元メンバーの西原誠(B)を含めた4人で結成。1997年にミニアルバム「覚醒」でデビューし、1999年リリースの3rdシングル「スロウ」がスマッシュヒットを記録。2002年、西原がジストニアのため脱退。以降は高野勲(Key, G)、金戸覚(B)をサポートメンバーに加えた5人編成で活動を続けている。2010年にはギタリスト / プロデューサーの長田進と「長田進 with GRAPEVINE」名義でアルバム「MALPASO」を発表。2012年にメジャーデビュー15周年を迎え、9月に初のベストアルバム「Best of GRAPEVINE 1997-2012」をリリースした。2013年4月10日にはタワーレコード限定8cmシングル「1977」を数量限定で発売。4月24日、約2年4カ月ぶりのオリジナルアルバム「愚かな者の語ること」をリリースした。