音楽ナタリー PowerPush - GRANRODEO

KISHOWとe-ZUKAが誘う リアルとファンタジーの狭間

アルバム制作のキーは“リズムパターン”

──「Blue Pandora Box」が象徴的なんですけど、アルバム収録曲のアレンジってもちろんハードロック、ヘヴィメタルを基調にしつつも、ちょっと黒いですよね?

e-ZUKA そうですか?

──「Blue Pandora Box」はスケール感のあるストリングスをループさせる、ここ10年くらいのヒップホップのトレンドをにらんだ1曲だし、「wonder color」は跳ねるドラムの上でスラップベースをバキバキいわせるファンキーな1曲。で「DAWN GATE」はハウス感、テクノ感のある四つ打ち曲ですし。

e-ZUKA(G)

e-ZUKA 黒人音楽やルーツミュージックはもちろん大好きですけど「今回は特に黒っぽいリズムを」って意識したわけではないですね。むしろいつもと同じ。アルバム収録曲にバリエーションをもたせたいときはリズムを変えてみようって考えているので。「あっ、この曲、なんか違う」ってわかってもらいたいなら、一番手っ取り早いんですよね、リズムを変えるのが。だから「wonder color」は跳ねたリズムになったし、「DAWN GATE」はちょっと速い四つ打ちにしてみたし、あと「絶頂ポイズン」のシャッフルもそうですよね。どれも「8ビートばかりが続くのは違うな」っていう発想から生まれたアレンジなんですよ。

──実際アルバム後半のリズムパターンの変化は面白かったです。「絶頂ポイズン」のあとに、LAメタルテイストの「Pink Phantom」がきて、「wonder color」「DAWN GATE」につながっていく。リズムパターンが曲ごとに目まぐるしく変化して。

e-ZUKA 確かに我ながら「なかなかいい流れだな」って思ってます。「DAWN GATE」と1曲目の「Blue Pandora Box」が実はスムーズにつながる感じも、まさにラビリンス=迷宮って感じだし。でも、この曲順もやっぱりコンセプトがあってのことではないというか。GRANRODEOのアルバムは「シングルのリリースが続いたら出す」っていう制作スタイルだから、どうしても既存曲が多くなりがちで。僕としては新曲である「wonder color」をもっと前のトラックに置く戦法……戦法って言っちゃうと身もフタもないんですけど(笑)、既存曲のあいだに新曲を置くことで新鮮味を出すつもりだったんですけど、KISHOWが……。

KISHOW 「wonder color」はラス前のイメージで詞を書いたっていう話をさせてもらって。

1枚のアナログ盤のようなCD

──確かに「カルマとラビリンス」というアルバムタイトルに決着を付けるかのように「今更嘆く事は迷宮入りするヤマのように 未解決な自問だから上塗りすればいい」と歌う曲になっています。

KISHOW だから「なんなら『wonder color』はラストの曲だな」とも思っていたんです。ただ「DAWN GATE」を最後に持ってくることをすでに決めていたので「じゃあラス前だな」と。まあ、あとはe-ZUKAさんにお任せなんですけどね。なんせ1曲目と2曲目の存在感がえげつないっていうこともあったので。最初におっしゃっていた通り、その2曲と「DAWN GATE」がアルバム全体のトーンを決めている。ある意味アルバム全体を引っ張ってくれる存在ではあるんですけど、ヘタするとこの存在にすべてを引っ張られてしまうことにもなりかねない。だったらアルバム全体の流れをどう作るのかは、えげつない2曲を実際に作った人の感性にお任せしようと思ったので。

e-ZUKA で、この曲順にしてみたんですけど、中盤に既存曲が固まって、最初と最後に新曲が並んじゃって……。

KISHOW(Vo)

KISHOW アルバムのドーナツ化現象が始まっちゃうんじゃないかと危惧してます(笑)。

──でもホントにいいトラックリストだと思いますよ。「DARK SHAME」を初めてシングルで聴いたときには、打ち込みをフィーチャーした曲だし「GRANRODEOには珍しい1曲だな」と思っていたんですけど、シンプルなロックチューンの「ボルケーノ」に続く1曲として聴くと響き方が変わった。「確かにGRANRODEOの楽曲だ」って再確認できましたし。

KISHOW そうやって既存の曲もあれこれ解釈しながら聴いてもらえるといいですよね。「これ、1枚のアナログ盤だと思って聴いてね」って感じのアルバムではあるので。もちろん既存曲を飛ばしてほしくはないし、あとシャッフル機能とか使われてもたまったもんじゃない。「ちょっと頼むよお。何その、便利なようで迷惑極まりない機能」って(笑)。

プロデューサー氏の“いい思い付き”

──そしてすでに再三触れていることではあるんですけど、このアルバムには絶対に無視できない1曲「DAWN GATE」があります。もともと……。

e-ZUKA 「The Other self」のカップリングですね。

──ただシングルバージョンは10分弱ではなかった。

e-ZUKA ウチのプロデューサーがときどき思い付きで物を言うんですよ(笑)「Queenの『Bohemian Rhapsody』って最初シングルで出たときは3分くらいだったんだけど、アルバムに入ってるのはすごく長いんだよね。そういう曲やんない?」とか。で、僕は長い曲を作らされることになり……。

KISHOW ははははは(笑)。

e-ZUKA それを短くエディットしたものが「The Other self」バージョンで、今回、その完全版を出したって感じなんです。ただ今となっては「あのプロデューサー、たまにはいいこと言うな」っていう気はしてますけどね。オープニングの「Blue Pandora Box」と「silence」がトータルで8分くらいで、「DAWN GATE」が9分50秒。組曲と大作を作れた上に、これまでのGRANRODEO、ひいてはこれまでの僕の音とも確実に違う、新しいチャレンジもできている。我ながらすごく上手に“ドーナツ”を作れたな、と思ってます(笑)。

ニューアルバム「カルマとラビリンス」2014年9月24日発売 / Lantis
初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / LACA-35430 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3240円 / LACA-15430 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Blue Pandora Box
  2. silence(「musicるTV」9月度オープニングテーマ)
  3. 変幻自在のマジカルスター(「黒子のバスケ」第2期新OP主題歌)
  4. ボルケーノ
  5. DARK SHAME(「CODE:BREAKER」OP主題歌)
  6. baby bad boy(PS3用ゲームソフト「スーパーロボット大戦OG INFINITE BATTLE」OP主題歌)
  7. The Other self(「黒子のバスケ」第2期OP主題歌)
  8. 桜色第2ボタン
  9. 偏愛の輪舞曲(「カーニヴァル」OP主題歌)
  10. 絶頂ポイズン
  11. Pink Phantom
  12. wonder color
  13. DAWN GATE
初回限定盤 DVD収録内容
  1. カルマとラビリンス(Music Clip)
  2. OPENING ※
  3. 欲望∞ ※
  4. メリーゴーランド ※
  5. NO PLACE LIKE A STAGE ※
  6. OPENING ※※
  7. SUPERNOVA ※※
  8. Y・W・F ※※
  9. メズマライズ ※※

※:GRANRODEO LIVE TOUR 2014 MAGICAL RODEO TOUR@Zepp Tokyo 2014.6.28 男子限定ライブ

※※:GRANRODEO LIVE TOUR 2014 MAGICAL RODEO TOUR@Zepp Tokyo 2014.6.29 女子限定ライブ

ライブBlu-ray / DVD「GRANRODEO LIVE 2014 G9 ROCK☆SHOW」2014年10月22日発売 / Lantis
「GRANRODEO LIVE 2014 G9 ROCK☆SHOW」
Blu-ray3枚組 / 12744円 / LABX-8081~3 / Amazon.co.jp
DVD3枚組 / 10584円 / LABM-7156~8 / Amazon.co.jp
DISC1
  • G9 ROCK☆SHOWさいたまスーパーアリーナ公演
DISC2
  • G9 ROCK☆SHOW大阪城ホール公演
DISC3
  • 「MAGICAL RODEO TOUR」メイキング映像
  • 「MAGICAL RODEO TOUR」ツアーファイナルZepp Tokyo公演ダイジェスト
GRANRODEO(グランロデオ)

GRANRODEO

KISHOW(谷山紀章)とe-ZUKA(飯塚昌明)からなるユニット。2005年結成。同年11月、アニメ「IGPX」のオープニングテーマにして、ユニットの1stシングル「Go For It!」のリリース直後から、声優としても活躍するKISHOWの表現力豊かなハイトーンボーカルと、e-ZUKAによるハードロックマナーに則ったヘヴィでメロディアスな楽曲群で人気を博す。以来コンスタントにリリースを重ねる一方で、2010年には東京・日本武道館で結成5周年記念ライブを実施。その後も神奈川・横浜アリーナ、大阪・大阪城ホール、埼玉・さいたまスーパーアリーナなどホール、アリーナクラスでのワンマンライブを敢行する一方で「Animelo Summer Live」などの大型フェスでヘッドライナークラスのポジションを確立する。そして2014年9月、6枚目のアルバム「カルマとラビリンス」をリリース。なおメンバーをモデルにした初のオリジナルアニメ「ぐらP&ろで夫」の放送も決定。10月よりBSフジ「ロデオ倶楽部~season II」内でオンエアされる。またランティスYouTubeアカウントでも配信予定。