「こうあるべき」と思い込みすぎてしんどくなった

──今の後藤さんの活動を見ていると、バンドメンバーを始め、周りの人にすごく恵まれてる感じがしますね。

めっちゃそうやね。ありがたい。あ、でも昔もそうやったんかもしれへん。ミドリんときも。でもボクがこう、シャットダウンしてたっていうか……寄せ付けへんかったんかもしれへん。今はもう、すごいありがとうって思う、うん。

──そう思えるようになったのは後藤さんにとって大きな進歩ですよね。

いいことなんかな？ それって。

──いいことだと思いますけど？

ほら「後藤まりこはこうあるべき」みたいな、そう思ってる人もおるやろ？

──常に殺伐としているべきとか？

うん、まあボク自身がそう思ってたところもあるけど。だからなんか今のボクを「いいと思うよ」って言われても「ほんとにそうかな？」ってちょっとだけ思ってしまうとこがある。

──もちろんミドリの頃に後藤さんが発していた苛立ちや怒りはある種の人たちに必要とされていたと思いますけど、でもその人たちのためにずっと苛立ち続けてるわけにもいかないですし。

そうやねんな……怒ってないときに「怒れ」って言われてもなあ。ミドリのときも最後はそんなふうになってしまった。「（フロアに）飛び込みたくないけど飛び込まな」っていう。ボクが勝手に思い込みすぎてたのかもしれんけど。それでこう、しんどくなってしまった。

好いてくれてたらうれしいしありがとうって思う

──こうして話を聞いていても、ミドリが解散に至った理由にはやはり後藤さん自身の意識の変化が大きいように感じます。先日はTwitterで呼びかけてファンとの飲み会を企画してましたけど、そんなのも昔だったら考えられなかったでしょうし。

そうやなー。なんかボクのことを好きな人のことが嫌いやってん。嫌いっていうか恥ずかしかって、無理！ってなってた。だけど今はすごい好きやで。うん。好いてくれてたらうれしいし。ありがとう！ 好き好きー！ みたいな感じになった。

──壁を取り去って、心を開くことができた。

そうやね。完全にそう。

──ある程度年齢を重ねたからっていうのもあるんですかね。

え、歳なん、これ？ マジか。

──いや、年齢だけじゃなく、いろんな経験をすることで世界が広がったというか。

それ要約して歳ってことやん（笑）。

──ただミドリの頃は若さ故の偏狭さがバンドの魅力になっていた面もあったし、それはそれで良かったとも思いますけど。

あれはあれでカッコよかったと思う。でも最近ミドリのCD聴いてるんやけど、つらいとか悲しいとか苦しいとかが、こう……やっぱ。なんかそういうネガティブなところが伝わってきて「うわ、聴かれへん！」って思って。

──その反動なのか、今回のアルバムは優しい歌が多いように感じます。

自分で意識はしてへんけど、うん、そうかも。好きやでほんまに、このCDボクは。