聴く人をいきなりつかみたい

──“「ドラゴンボール」のエンディングテーマ”って響きは特別なものがありますよね。

渡邊幸一（G, Cho）　ホントにそうですね。めちゃくちゃうれしかったです。

──言い換えれば大きなお題でもあったと思うんですけど、「拝啓、ツラツストラ」はどういう感じでできていったんですか？

金廣真悟（Vo, G）　エンディングテーマということで自分たちの名刺代わりとなるような曲にしたいなと思って。曲の入り方はすごく考えましたね。聴く人をいきなりつかみたかったから、絶対に歌始まりだなと思って。

──サウンド的にも強いインパクトでもってグドモのど真ん中を示すっていう。

金廣　そうですね。そこはすごく意識しました。最初はドラムから始まるっていうパターンも考えたんですけどね。

ペギ（Dr, Cho）　デモを聴かせてもらった段階でこれはすごくいい曲だと思って。ここからどうやったらもっとよくなるんだろうと考えて、僕から「ドラム入りはどうですか？」という提案もして。

金廣　ふふっ（笑）。

──なんで笑ってるの？（笑）

金廣　いや、ドラム入りのパターンもカッコよかったなと思って。

ペギ　とてつもなくカッコいいドラム入りのパターンが生み出されたんですよ！ でも、最終的には歌入りのほうがいいねってなって胸にしまいました。

なんとかポジティブに生きよう

──歌詞の内容はタフなポジティビティで迷いの中の壁をぶち壊していくという。これ、孫悟空感あるなって。

金廣　確かに（笑）。ホントはもうちょっと暗いムードが漂ってたんですけど、せっかく「ドラゴンボール」のエンディングテーマなんだし、ポジティブなほうに寄せていこうと思って。まさに迷いの中にいながらポジティブに生きようとする意志を描くというか。タイトルはニーチェから取ったんですけど。

──「ツァラトゥストラかく語りき」ですね。

金廣　そう。永劫回帰ですね。毎人生、同じことが起こるんだけど、それをポジティブに捉えるというか。「ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ」を書いてるときに「かく語りき」を読んでいて。

──普段から哲学書をよく読んでるんですか？

金廣　いや、全然です。ニーチェとゲーテをちょっと読んだくらいですね。内容もすべて理解してるわけではないんですけど。だから解読書とかも読んで。でも永劫回帰って「ドラゴンボール」の世界観や僕自身のソングライティングに一貫してあるテーマと通じるところがあるなって思ったんです。

──繰り返される生とどう向き合うか。そのシンクロする部分に惹かれたと。

金廣　そう。あと、人生は永劫回帰的なものであると理解しても、実人生はそうはうまく生きられないし、ときには惰性で日々を過ごしてしまうことも絶対あると思うんです。それでもなんとかポジティブに生きようとするというか。だから、そうですね、「ドラゴンボール」で言えばヤムチャ（笑）。ああいう不器用な生き方をしているキャラクターにリアルなものを感じるし。

──Bメロの「喜びだけじゃなくて 苦しみもグミに変えて 食べちゃえば身も心も きっと今の僕を超えられるはずです」という一節がいいなと。

金廣　「ドラゴンボール改」では魔人ブウ編が展開されるんですけど、ブウはお菓子が好きで、人をチョコレートやクッキーに変えて食べちゃうんですよね。それを逆手に取って。

──ああ、そうか。僕は悟空が食べる仙豆を想起したんですよ。一粒食べれば10日間はパワーが出るという。

たなしん（B, Cho）　「苦しみも豆に変えて」ってヤバいな（笑）。

「喝采」の方向性をこれから打ち出していきたい

──初回限定盤Aと通常盤に収録される「喝采」もいいですね。形態がスタンダードなロックソングだからこそ、バンドの音楽力が増していることを如実に感じられる。

金廣　うん、僕も「喝采」はこれからすごく大事にしていきたい曲になったなと思っていて。「拝啓～」はバンドの王道感を強く出したけど、バンドがこれから打ち出していきたい方向性はこっちにあるというか。この曲は（寺岡）呼人さんにプロデュースしてもらったんですけど、初めて歌詞先で作ったんですよ。

──それで言葉数も多いんだ。

金廣　そうですね。たとえば今後アリーナライブができるようになったとして、その本編の最後にやれるような曲を作ってみようという提案を呼人さんからもらって。メンバーともそういう思いを共有して作りました。

──繰り返す自問自答の先にステージで喝采を浴びるという、歌詞の筆致も生々しい。

金廣　そうですね。本編の最後を想定するということで、自分は何が伝えたいんだろうとか、何を歌いたいんだろうってすごく考えました。歌詞は同じで違う曲もいっぱい作ったし。それだけ悩んで作ったんですよね。

──そこまで難産なのも珍しいですよね。

金廣　そうですね。だからここまで強い曲ができたのかなって。

渡邊　すごくいい曲だと思いますね。メンバーみんなこれがリード曲でもいいと思ってるくらい。でも「拝啓～」が「ドラゴンボール」のエンディングで幅広い層に届く曲になったと思うから、そのカップリングとしてグッドモーニングアメリカはこういう面も持っていて、これがやりたいことの1つなんだって伝えられるのはよかったなって。

ペギ　ライブが想像できるし、これまでとは違うライブの終わり方ができる曲だと思う。

たなしん　金ちゃん（金廣）が作る曲って、メンバーの僕が聴いても共感できて、背中を押してもらってるような気持ちになるんですよ。気分が落ちてるときにがんばろうって思えたり。この「喝采」という曲は、よりメッセージ性が強いし、一度聴いてもらえれば深く響く曲になったと思います。