グッドモーニングアメリカのニューアルバム「502号室のシリウス」が完成した。メロディックパンク由来のコーラスワークを効果的に生かしたアプローチなど、自分たちが本来持っている武器を見つめ直した意欲作だ。5月に金廣真悟(Vo, G)がポリープの手術を受け活動休止するなど(参照:グッドモーニングアメリカ、金廣ポリープ手術のため3カ月ライブ活動休止)、メンバーはバンドの状況に逆風が吹いていることを自覚している。しかし、本作にはその風向きを変える力があることを信じてもいる。音楽ナタリーではメンバー全員にインタビューを実施。彼らは、本作が完成するまでの道のりとグッドモーニングアメリカの今を腹蔵なく語ってくれた。
取材・文 / 三宅正一(ONBU) 撮影 / 西槇太一
今のグッドモーニングアメリカがよくも悪くも詰まったアルバムに
──コンセプトを設けないのはグッドモーニングアメリカの作品作りの通例だと思うんですけど、1曲1曲に自由なマインドを感じさせる内容で。ここに来てメロディックパンク寄りの曲が多いのが印象的でした。
金廣真悟(Vo, G) 確かにメロコア感はかなりあると思います。僕のポリープの手術で5月から3カ月間活動休止したんですけど、再開後に曲を作り出したときにペギ(Dr, Cho)から「コーラスやハモリをもっと入れたほうがいいと思う」という提案があって。
──そう、コーラスやハモリを随所で際立たせてますよね。
金廣 もともとコーラスやハモリを入れた曲は好きだったんですけど、キャリアを重ねるにつれ減ってきていたところがあって。でも、今回は初期衝動にプラスしてメロコア感を押し出すと言うか、自分たちがかつて武器としていたものと向き合ってみようということになったんです。曲作りは前々作、前作の方法論を踏襲してメンバー4人で集まって進めていったので。そういう意味では地続きの制作の中で変化できた感覚があります。「花火」なんかは前作のときに録ったけど入れなかった曲で。さらにハモリを入れてメロコアっぽくしたりしました。今のグッドモーニングアメリカがよくも悪くも詰まったアルバムになったと思うんですよね。
──悪くもと言うのは?
金廣 なんて言うか、生々しさですかね。聴く人によって捉え方は違うと思うけど、今の自分たちのライブ感が強いアルバムだと思います。温度や血を感じられるような。
キーはコーラス
──ペギくんはどうでしょう?
ペギ(Dr, Cho) 前々作からメンバーで曲のアイデアを持ち寄るようになったんですけど、今作はそのやり方をより生かせたアルバムになったと思います。コーラスやハモリを入れたいという発想もその延長線上にあるもので。俺は前身バンド(for better,for worse)を外から見ていて、コーラスやハモリがこのバンドの武器だと思ってたので。独特のコーラスワークを持ってるなって。でも、もともと持っているその武器を今はライブでも使えてないと思ったんです。それで「その武器を生かしませんか? コーラスやハモリを可能な範囲でガンガン入れていきましょうよ!」という提案をしました。そういう意味でもよりバンドらしさを追求したアルバムだと思います。レコーディングもデジタル加工された音からアナログ感のある音にしようと提案したんです。
──4人の中でペギくんが一番意見を言うんですか?
金廣 そうですね。ほかの3人は特に意見を言わないと言うか……変になあなあになってる部分があるので。「言わなくてもわかってるよね?」みたいな。
──暗黙の了解だ。
金廣 そう。でも、ペギはそこを言葉に出して言ってくれるので。ペギが出してくれた面白いアイデアは採用したいと思うし。
──ペギくんはバンドにある暗黙の了解を突き破ってやろうという思いがありますか?
ペギ 突拍子もないことを言ってるようで、本当はみんなが感じていることを俺が先陣を切って言ってるような気がするんですよ。だから、コーラスやハモリについても「そうしませんか?」という提案をしたときに金廣さんもすぐに「確かに」って納得したり。ほかのメンバーが俺の意見に付いてきてくれるのは、やっぱり内心では思ってるけど言葉にしてなかっただけなんだと思うんですよね。
──幸一くんは今のペギくんの話を聞いてどう思いますか?
渡邊幸一(G, Cho) その通りだなと思います。今作のキーはコーラスで、グッドモーニングアメリカの作品史上、ここまでみんなのコーラスを生かすのは初めての試みだったので。今まではハモリも全部かねちゃん(金廣)の声を重ねていて。僕自身、歌うことは好きなんですけど、自信があるわけではなくて。でも、前々からコーラスは武器だなと思っていたし、それをペギが口火を切って提案してくれたんですよ。とりあえず「星は変わらない」のワンコーラスだけ試しにやってみたんですよ。僕とペギがハモるバージョンとかねちゃんだけの声で重ねるバージョンを録ってみて。もちろん、かねちゃんだけのバージョンはすごくきれいなんですけど、自分たちでもワンコーラスだけやってみて「これ、めっちゃいい!」と思えたんです。だから、積極的にトライしたいと思えた。実際、思いきってトライしてよかったですね。
──バンドとしての熱量をコーラスにも込められただろうし。
渡邊 そうですね。音源でもライブ感のある熱量を出したかったし。
──たなしんはどうでしょう?
たなしん(B, Cho) 僕も同じように感じてます。人間味のある熱量の高いアルバムと言うか。レコーディングの仕方もそうですし、フレーズ作りに関してもずっと背伸びしていたところがあって。でも、今回はライブ中に自分がマックスでプレイできるフレーズを意識しながらレコーディングに臨めたんです。コーラスに関しても(ペギから)提案してもらったことで、バンドがワクワクする方向に行けるなと思いました。
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辞めようかなとも思っていた
- グッドモーニングアメリカ
「502号室のシリウス」 - 2017年10月4日発売 / 日本コロムビア
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初回限定盤 [CD+DVD]
3600円 / COZP-1379~80 -
通常盤 [CD]
3000円 / COCP-40117
- CD収録曲
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- ハルカカナタ
- 花火
- ダンスダンスダンス
- 風と鳴いて融けてゆけ
- あなたの事だよ
- The Sheeple
- 煙に巻かれたい
- フライデイナイト
- アンカーズアウェイ
- 星は変わらない
- ハブーブの後に
- She's...
- 初回限定盤DVD収録内容
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オフィシャルファンクラブ「グドモクルー」限定LIVE「今宵会」SHIBUYA TSUTAYA O-Crest 2017.8.1
- そして今宵は語り合おう
- 2014年6月25日我思ふ
- 春が迎えに来るまで
- 下らない毎日が
- たった6文字じゃ
- STAY WITH ME
- 世界終わらせないで
- ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ
- 言葉にならない
ライブ情報
- 八王子天狗祭2017
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- 2017年11月11日(土)
東京都 エスフォルタアリーナ八王子
OPEN 10:00 / START 11:00 - 出演者 グッドモーニングアメリカ / a flood of circle / 175R / COUNTRY YARD / Gacharic Spin / ゴールデンボンバー / 四星球 / Halo at 四畳半 / 04 Limited Sazabys / POETASTER / フラチナリズム / BRADIO / MAGIC OF LiFE / Rhythmic Toy World / 忘れらんねえよ / and more
- 2017年11月11日(土)
- グッドモーニングアメリカ「502号室のシリウスツアー」
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- 2017年12月15日(金)千葉県 千葉LOOK
- 2018年1月13日(土)京都府 KYOTO MUSE
- 2018年1月14日(日)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
- 2018年1月20日(土)東京都 八王子Match Vox
- 2018年1月21日(日)神奈川県 横浜BAYSIS
- 2018年1月27日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2018年1月28日(日)宮城県 仙台MACANA
- 2018年2月3日(土)岡山県 IMAGE
- 2018年2月4日(日)静岡県 HAMAMATSU FORCE
- 2018年2月10日(土)福岡県 LIVE HOUSE CB
- 2018年2月11日(日・祝)広島県 CAVE-BE
- 2018年2月12日(月・祝)香川県 DIME
- 2018年2月18日(日)北海道 BESSIE HALL
- 2018年2月24日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2018年2月25日(日)群馬県 前橋DYVER
- 2018年3月3日(土)長野県 ALECX
- 2018年3月4日(日)石川県 vanvanV4
- and more
- グッドモーニングアメリカ
- 金廣真悟(Vo, G)、渡邊幸一(G, Cho)、たなしん(B, Cho)、ペギ(Dr, Cho)からなる4人組バンド。2001年に前身バンドfor better,for worseを結成し、2007年より現在のバンド名に変更。for better,for worse時代は英語詞だったが、バンド名変更を機に日本語詞へと切り替え、サウンドもよりポップさを増す方向へ転換した。2008年より現在の編成で活動を開始し、自主企画の開催や作品のリリースを積極的に行う。2012年冬には初のワンマンツアーを成功に収め、2013年5月に1stフルアルバム「未来へのスパイラル」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。2014年5月にはテレビアニメ「ドラゴンボール改」のエンディングテーマに採用された「拝啓、ツラツストラ」をシングルとしてリリースした。同年10月に2ndフルアルバム「inトーキョーシティ」を発表し、2015年8月にテレビアニメ「ドラゴンボール超(スーパー)」のエンディングテーマ「ハローハローハロー」をシングルリリース。今作よりコロムビア内のロックレーベル・TRIADに移籍した。10月には3rdフルアルバム「グッドモーニングアメリカ」を発表。11月に初の東京・日本武道館単独公演を行った。2016年1~4月にワンマンツアー「グッドモーニングアメリカ TOUR 2016」を実施し、11月には地元・八王子で主催イベント「八王子天狗祭2016」を成功させた。12月に4thアルバム「鉛空のスターゲイザー」をリリース。同作のレコ発ツアー終了後より金廣の声帯ポリープ摘出手術に伴い、3カ月間ライブ活動を休止する。2017年7月に活動を再開し、10月にニューアルバム「502号室のシリウス」を発表した。