5月25日にデビュー30周年を迎えたGLAYから、ニューシングル「whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)- / シェア」が届けられた。GLAYにとって62枚目、アニバーサリーイヤーを彩る本作には、ENHYPENのJAYをボーカリストに迎えた刺激的なロックチューン「whodunit」と、TAKURO(G)が紡ぐ優しい音と詞が心を弾ませるポップソング「シェア」の2曲を収録。正反対の2曲を通して、GLAYの二面性を味わうことができる。
6月8、9日には埼玉・ベルーナドームでデビュー30周年キックオフ公演「GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025」を行い、以降もさまざまな企画が目白押しのGLAY。音楽ナタリーではTERU(G)にインタビューし、アニバーサリーイヤーの幕開けを飾ったQueenとの対バンのエピソードを切り口に、30歳差というJAYとのコラボレーションで受けた刺激、拠点の1つである北海道・函館での日々について語ってもらった。
取材・文 / 中野明子撮影 / 映美
TERUが受け取った怒髪天・増子直純からの“ご褒美”
──デビュー30周年はQueenとの対バンという華々しい形で幕を開けましたね(参照:GLAYが有言実行のヒット曲満載ライブでQueenにリスペクト表明 初対面も果たす)。
昨年の12月頭に「もしかしたらQueenと競演できるかも」という話をスタッフから伝えられて。僕らのお父さんお母さん世代も知っているような、世界で活躍している伝説的なバンドと競演する機会なんてそうそうないから、どんな条件でオファーされてもやろうよとメンバーと一致団結してたんです。それで、正式に決定したのは今年の1月かな?
──ライブは2月でしたから、かなり急な話ですね……。
そうなんです(笑)。毎年その時期はベネチアに行ってたんだけど、ベネチア行きはバラしてもいいという話をしていたら本当に決まっちゃった。
──セットリストを拝見しましたが、潔いほどのヒット曲のオンパレードで。
GLAYファン以外の人たちが僕らに何を求めるのかを考えたときに、コンセプチュアルなステージよりも、とにかくヒットソングをバンバンやったほうが楽しいんじゃないかと思ったんです。
──現場の熱気を閉じ込めたライブ音源が、最新シングルのカップリング曲として収録されています。
Queenはボーカルのアダム・ランバートがすごく歌が上手だし、それを観に来ている人たちが集まっていたので、とにかく丁寧に歌おうと。動いて盛り上げるのではなく、その人たちの心に届くように歌おうと考えてましたね。
──対バンと言えば、Queenの翌月には箭内道彦さんの還暦イベントで怒髪天と競演しました。Queenの次に怒髪天と対バンというのはすごい振り幅ですね(参照:“道産子バンド”GLAY×怒髪天が箭内道彦60歳を対バンでお祝い、まさかのカバーに大盛り上がり)。
(笑)。怒髪天は同じ北海道出身で、昔からかわいがってもらってたんです。対バンに向けても打ち合わせがてらごはんを一緒に食べたりして。当日は「Winter,again」をカバーしてもらっちゃったし。
──ボーカルの増子直純さんがライブのMCで「Winter,again」は“空間系”の曲で、その空間を埋めているのがTERUさんの歌のうまさだと分析されていました。
うれしいですね。打ち上げでも「TERUくんは本当にいい歌を歌うよね」と言ってくれて、デビュー30年目にして同郷の大先輩に褒めていただけるのはご褒美でしかなかったです。
──増子さんはTERUさんとは違うタイプのシンガーですが、同じステージに立ってみて気付いたことや発見したことはありますか?
増子さんはもともとメタル畑の人なので、めちゃくちゃ声が高いんですよ。だから「Winter,again」の一番高いキーもシャウトできてしまう。怒髪天というバンドにおけるキャラゆえに気付かれないところもあると思うんですけどすごく歌がうまいし、ポテンシャルも高い。そのことを改めて感じました。
──怒髪天へのアンサーとしてカバーされた「雪割り桜」も、GLAYならではのカバーで盛り上がってましたね。
「雪割り桜」はJIROが2013年の「RISING SUN ROCK FESTIVAL」にEZOIST(北海道出身アーティストたちによるスペシャルバンド)として出演したときにカバーしたんです。JIROが怒髪天との対バンに向けて「雪割り桜」ともう1曲をカバーの候補として出してきて、「TERUはどっちやりたい?」と聞いてくれた。それで、みんなで合唱できる曲がいいということで「雪割り桜」を選んで、「TERU ME NIGHT GLAY」(TERUのレギュラー番組)でも「これを当日歌うから覚えてきて」とリスナーにプロモーションをして。絶対、怒髪天の皆さんに喜んでもらおうと。実際に大合唱が起きて、増子さんも大感動したと言ってくれたのでしめしめとなりました(笑)。
──対バンの首謀者である箭内道彦さんとTERUさんは、10年前にナタリーで対談されているんですよね(参照:GLAY「MUSIC LIFE」特集 TERU×箭内道彦対談)。それから10年が経っても交流が続いていて、箭内さんの還暦とGLAYのデビュー30周年という節目のタイミングにライブが開催されるというのは感慨深いものがありました。
あの対談、もう10年前なんですね。以前からTAKUROが箭内さんの企画イベントに精力的に参加していて。草野球もやってると聞いて驚いたんですけど。
──箭内さんの故郷、福島で開催されている「風とロック芋煮会」ですね。
その関係性がある中でTAKUROが、「箭内さんからイベント出演の相談があった。対バン相手は決まってない。俺はどっちでもいいから、みんなの気持ちでやるかやらないか決めてほしい」と言ってきて。それを聞いたときに、ほかのメンバーも箭内さんとTAKUROの関係性を知ってるから、TAKUROは出たいだろうと。だったらやろうよという話になったんです。いろんなアーティストが出るし楽しみだねとかメンバーで話してたら、「対バン相手は怒髪天です」と連絡が来て。全員が「大丈夫か?」ってなりましたね(笑)。
──TAKUROさん、「絶対に勝てないから怒髪天とだけは対バンしたくない」と以前からおっしゃってましたからね。
そうそう。でも、箭内さんが北海道を代表する2バンドをぶつけてみたいと思ったらしく、ついに実現した感じです。
「流石にJAYはOK出ないでしょ!」
──アニバーサリーイヤーとしてはかなり異色の幕開けでしたが、30周年第1弾作品となるシングルもなかなか驚きのある内容で。表題曲の1つ、「whodunit」はENHYPENのJAYさんとのコラボです。おそらく誰もが想像していなかった、予想外の組み合わせだったかと。
2年前くらいからTAKUROが「TERUと一緒に歌える人を探したい」と言っていて。「この人はどう? この人は?」って国内のいろんなアーティストを提案してもらってたんだけど、なかなかしっくりくる人がいなかったんです。それであるときTAKUROに「ENHYPENのJAYとかどう?」と聞かれて、「OKしてくれてたらいいけど、流石にJAYはOK出ないでしょ!」と思いながらダメ元でオファーしたら快諾をいただいたというのがコラボの経緯です。話を聞いたら、もともとJAYはロックに興味があって、いつか自分でもバンドを組んでみたいと思ってたらしいんです。
──そもそもTAKUROさんはなんでTERUさんと誰かを歌わせたいと思ったんでしょうね。
ここ2、3年で周りからライブでの歌を評価されるようになったのを受けて、TAKUROが「TERUの歌は最近ホントにすごい。だからこそ、誰かとぶつけてみたいんだよね」と言ってたんです。
──TERUさんの歌をさらに進化させるための意図があったわけですね。
最初は玉置浩二さんを候補に挙げられたんだけど、それはさすがに勘弁してくれと。まだまだ経験を積まないと絶対に食われちゃう。憧れの方ではあるけど、僕のほうが力不足なのでこのタイミングではないだろうと。
──JAYさんとのコラボにあたって、レコーディングで韓国に行かれたとか。
はい。今回、何がうれしかったかというと、HYBEに行けたことなんですよ。もともと韓流のアーティストが大好きなので、HYBE社屋のエレベーターに乗った瞬間に所属アーティストのポスターが貼ってあってテンションが上がりました(笑)。ちなみに「whodunit」と並行して、JAYはENHYPENのレコーディングもしていて。2つのスタジオを行き来してましたね。
──ENHYPENの楽曲におけるJAYさんのボーカルはどちらかと言うとクールなイメージがありますが、「whodunit」ではご自身のパーソナリティと感情を爆発させている印象を受けました。
生身の彼の姿が浮かびますよね。仮歌の段階ですごくカッコよくて。僕自身もこれはいい曲になるという直感があったし、メンバー全員でJAYの歌を聴きながら「めちゃくちゃカッコいいね! これはいいコラボになるね!」と盛り上がってました。
──「whodunit」は歌割りもTERUさんとJAYさんの割合はほぼ1対1。しかも1番のAメロからJAYさんを打ち出す構成という。なかなか大胆なことをするなと思いました。
GLAYの曲にJAYをゲストとして迎える感じではあったんですが、全面的にJAYを出したいと思ってね。だってJAYにとって初めての本格的なソロ活動なのに、GLAYが出しゃばってたらファンの人が寂しくなっちゃうでしょ? ENHYPENやJAYのファンにも楽しんでもらえる形にしたかった。
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JAY、TERUの細胞を沸き立たせる