GLAY「whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)- / シェア」特集|TERUインタビューで迫るJAYとの刺激に満ちた制作 (3/3)

TAKUROに確かめる「このアプローチでいいのか?」

──ハードなロックチューンの「whodunit」に対して、「シェア」はみずみずしいポップナンバーで、TERUさんの優しいボーカルが耳に残ります。

この曲は「このアプローチでいいのか?」って何度もTAKUROに確認しながら歌いました。

──それはどうして?

曲のポップな空気に引っ張られてすごくハキハキ歌ってるんですが、最初はそれが正解なのかわからなくて。イメージとしては菊池桃子さんとか80年代アイドルのキュートな感じ。そのイメージを浮かべながら歌ってみたら、TAKUROから「まさしくこれだ」と。TAKUROはどうも1980年代の歌謡ポップのイメージでこの曲を作ったらしいんですよね。「MUSIC LIFE」(2014年11月リリースのアルバム)以降、TAKUROはシティポップブームとか、その時々の流行を取り入れてGLAYの音楽に昇華することに挑戦しているんです。「シェア」はその挑戦の1つですね。

TERU(Vo)

──歌詞には四季折々の描写と近しい人や家族への思いが細やかにつづられています。日常的な風景が浮かぶ歌詞ですね。

僕はTAKUROといる時間がめちゃくちゃ多くて。TAKUROがロスから帰ってくると週に3、4回一緒にごはんを食べるんです。そういうときに、「シェア」では日常会話で出てくる言葉を使って、難しいことを言わずに「好き / 嫌い」みたいな感情を書きたいんだよねと言われて。自分が気にかけている震災や戦争に対する思いをちりばめつつも、純粋に音楽を楽しむうえでは難しくなりすぎないように、あくまでもポップソングを作ることを意識したみたいです。

──当初、TERUさんの歌のアプローチに迷いがあったとはいえ、それがTAKUROさんにとっては正解だったんですね。TERUさんがTAKUROさんの曲をスムーズと歌えるのは、日常的にコミュニケーションを取っているからなんでしょうか?

そうかもしれないです。常日頃、自分が思っていることだったり、家族のことだったり深い話をよくしていて。そういうやりとりを通してお互いのことを理解していているから、歌詞を読むと「あのときTAKUROが話していたことかな?」とか「あの風景のことを書いてるのかな?」とか、自然に想像できるんですよね。だから僕は、TAKUROの書いた歌詞について意識して理解をしようとはしてないんです。

──お互いの関係性があるからこそ、細かい説明がなくても曲の世界に入っていける。ちなみに私は「シェア」を聴きながら、GLAYが誕生した函館の景色が浮かびました。

ああ、最近はTAKUROも函館で過ごすことが多いので、そこで感じていることも曲や歌詞に反映されていると思います。「海峡の街にて」(2023年リリースのシングル「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」収録)もそうでしたね。TAKUROの場合、ロス、東京、函館の3カ所を移動する大変さもあるけど、それぞれの場所で考えることや感じていることを残しておきたいという思いがあるんでしょうね。

TERU(Vo)
TERU(Vo)

ニューアルバムは“みんなが安心するGLAY”

──「シェア」はTERUさんが作られた函館のスタジオでレコーディングされたんですよね。モバイルサイトのコンテンツ「G-CONNECT」で「世界で一番TERUの歌を引き出してくれる場所が函館のスタジオ」と書かれていましたが、スタジオを作られてから音楽との向き合い方は変わりましたか?

変わりましたね。僕、東京に住んでいるときはほとんど音楽を聴かないんです。ツアーの準備期間にGLAYの曲を聴くくらいで、普段はテレビでニュースばかり観てる。それが函館に戻ると逆にテレビをまったく観ない。毎日音楽ばかり聴いてるんです。最近レトロなオーディオ機器を買ったんですが、そしたら無性にジャズが聴きたくなって。1日中ジャズを流していたりするし、耳に入った曲が気になったらスマホでタイトルを調べてじっくり聴いてみたり。函館だと音楽中心の生活になりますね。朝起きて必ずすることが、リビングで「Coldplayかけて」ってAlexaに言うこと。制作中はスタッフも一緒に住んでいるので、毎朝聴かせてます。

──(笑)。

東京にいるときはどうしても情報が気になるんですよね。常に新しいニュースを知っておきたいという衝動に駆られる。そして、ニュースに触れて感じたことや思ったことを「G-CONNECT」でファンの子に向けて発信したくなる。ただ、情報があふれているから、そこに音楽が加わると自分がオーバーフローを起こしてしまう。だから東京で聴く音楽はGLAYで十分、みたいな。一方で函館の生活はいかにのんびりして、いかに自然に触れるかが大事。函館での生活は心の凪なんです。

──忙しない東京での生活、心の凪である函館、2都市間でTERUさんのモードはまったく違うんですね。

そう。そして、函館にいるときは、情報がないからこそ音楽を必要とする瞬間がある。音楽に限らず、自然の音を聞くのも好きになりましたね。今の季節だと鶯の鳴き声とか聞こえて気持ちがいいんです。スタジオの窓からは海も見えて、その景色が癒しになってます。

──音楽の話だと、最近は曲作りのほうはいかがですか?

うーん、「限界突破」以降まだ衝動が生まれない感じかな?

──TERUさんが曲を作るうえで衝動は必要?

必要なものですね。最近は函館に滞在することが多くて、音楽と真剣に向き合ってはいるんですが、衝動は起きない。歌と向き合うことで、十分満たされているんですよね。アウトプットをするにしても、今は絵のほうが自分のモードに合ってる。おそらくまたサイクルで楽曲制作欲が出てくると思いますが。

TERU(Vo)

──音楽についてはインプットする時期なのかもしれないですね。ところで今後GLAYはアルバムもリリース予定と伺っていますが、ひと言で表現するとどんな作品ですか?

大胆な新しい挑戦はありませんが、「これこれ! これがGLAYだよね」と思っていただけるような、安心感のあるアルバムですね。穏やかな愛情を「BELOVED」(1996年リリース)で表現したり、ロックがやりたくて「THE FRUSTRATED」(2004年リリース)を作って、「HIGHCOMMUNICATIONS」ツアーを始めたり、音楽と真剣に向き合って「MUSIC LIFE」(2014年リリース)を作ったり……いろんな時代のGLAYがいるけど、今回は全部を取り込んで“みんなが安心するGLAY”を形にした感じです。

──デビュー30周年にふさわしい集大成的な作品になりそうですね。話は少し戻りますが、TAKUROさんがおっしゃっていた「TERUさんの歌が最近すごい」というのは私も心から同意するところで。年々声のレンジが広がって、発声もクリアになることで、より歌やメッセージがダイレクトに響くようになっているような。普通は年を重ねると声が低くなって、かすれがちになると思うんですが。

毎日練習していますので……というのは嘘ですが(笑)、コロナ禍にオンラインでやっていた「LIVE at HOME」が一番大きかったんじゃないかな。あの時期は自分1人で過去のGLAYの曲をアレンジして、ギターもピアノも弾いて、歌もレコーディングしてたんです。TAKUROと一緒に演奏したり、村潤(GLAYのライブやレコーディングのサポートを務める村山☆潤)に手伝ってもらったりもしたけど基本は1人。レコーディングをしたものを自分でチェックして、ピッチが気持ち悪かったら歌い直したりというのを繰り返す中でどんどん耳がよくなったんです。あと毎日必死で歌うと喉に疲労が蓄積していってかすれてしまう。それで、だんだん自然と軽く歌えるようになっていきました。

──力の抜き差しの塩梅をつかんだ?

そうですね。スポーツもそうですけど、力みすぎると本番で自分の力を100%発揮できないって言いません? 歌もそうで、適度に脱力して歌うほうが声も出るんです。あと体が歪んでいると歌うときに負担が大きくなってしまうから、意識して姿勢を直したり、角度を変えて歌うことで負担を減らしたり。それと喉に影響するのであまり怒鳴らないようにもしてますね(笑)。

──今はじっくりと歌と向き合っている時期なんですね。

70歳になっても歌っていたい。その歳になってもアリーナツアーもドームツアーもやりたいという高い目標があるからこそ、それに向けて努力しているだけなんです。

──つまり、GLAYにとってデビュー30周年はあくまでも途上だと。

そうですね。僕らの先輩には“50周年選手”がいますから、まだまだですよ。

TERU(Vo)

ライブ情報

GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025

  • 2024年6月8日(土)埼玉県 ベルーナドーム
  • 2024年6月9日(日)埼玉県 ベルーナドーム

プロフィール

GLAY(グレイ)

北海道函館市出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年に活動を開始し、1989年にHISASHI(G)、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に12枚目のシングル「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には千葉・幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブを開催し、当時有料の単独ライブとしては日本最多観客動員を記録する。2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」(現:LSG)を設立。メジャーデビュー20周年となる2014年には宮城・ひとめぼれスタジアム宮城にて単独ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」を行った。デビュー25周年を迎えた2019年より「GLAY DEMOCRACY」をテーマに精力的な活動を展開。10月にアルバム「NO DEMOCRACY」を、2020年3月にベストアルバム「REVIEW II -BEST OF GLAY-」をリリースした。コロナ禍の2021年3月から6月にかけて配信ライブ企画「THE ENTERTAINMENT STRIKES BACK」を実施。同年10月に2年ぶりのオリジナルアルバム「FREEDOM ONLY」をリリースした。デビュー30周年を迎える2024年は、周年のテーマとして「GLAY EXPO」を掲げて活動。5月にシングル「whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)- / シェア」を発表し、6月に埼玉・ベルーナドームで単独公演「GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025」を行う。