ナタリー PowerPush - GLAY

TERU&JIROが語る豪雨の函館ライブ

今年7月末に地元函館で2日間にわたる凱旋野外ライブ「GLAY Special Live 2013 in HAKODATE GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.1」を開催したGLAY。「晴れバンド」として知られる彼らだが、この公演では悪天候に見舞われ、特に2日目は豪雨の中でのライブとなった。しかしそんな状況の中でもメンバーもオーディエンスも笑顔を浮かべ、全身全霊でライブを楽しんでいた。そんなドラマチックな2日間の模様が、いよいよ11月27日に映像化される。

今回ナタリーは、TERU(Vo)とJIRO(B)の2人にインタビューを実施。雨がGLAYにもたらしたものはなんだったのか? 初の大規模な凱旋ライブで感じたことや、ファンへの思いとともに故郷での2日間を振り返ってもらった。

取材・文 / 中野明子

「晴れバンド」から「全天候型バンド」に

TERU(Vo)

──ライブから約3カ月が経ちますが、振り返ってみて2日間が終わったときの心境ってどんなものでしたか?

TERU(Vo) ほっとした、ですかね。それが最初の気持ちですね。楽しかったっていうよりも、終わってよかったーっていう。

──GLAYはこれまで大規模な野外ライブを何度も開催してますが、それらとの違いはありましたか?

TERU 地元の函館っていうこともあって、市とタッグを組んで街中をGLAY一色にしたというのは初めてでしたね。空港でGLAYの「Eternally」がかかってたり、どこに行ってもGLAYの曲が聞こえてきたり、僕らを応援するフラッグやビルボードが街角に飾ってあったり。函館とGLAYの密接な関係性の中でできたライブだったと思いますね。

JIRO(B) そもそも函館でこの規模でライブをやるのが初めてだったんですよね。ってことは、このプロジェクトに関わる人たちにとっても、すべてが初めてのことだった。だから想像できないことが多すぎて。その中で周りのスタッフが、函館市の行政の人たちと関わってくれて、下地を作ってくれて。ファンの子たちにもすごい大変な中、函館まで来てもらってその中で見えた信頼関係もあったし。みんなが大変な思いをしたぶん、ほんとに無事終わってよかった。あと2日目が土砂降りでしたけど、あれはファンと僕らとスタッフをつないだ、いい雨だったんじゃないかなと(笑)。

──今回のライブは「雨」がひとつのキーワードになってくると思うんですよね。

TERU ですよね(笑)。今回は雨が原因で当日のリハーサルがほとんどできなかったんです。いつもだったら、何がなんでもリハーサルをやって音を出さないと不安でステージに立てないんですけど、10年以上一緒に歩んできてるスタッフもいて、その中で信頼関係があったからリハーサルを30分で切り上げて本番に臨むことができた。

──函館入りする前に練習を積み重ねてるわけですが、本番になったときどんなところが変わりましたか?

TERU 音の広がり方とか、リハーサルではしっかり聞こえてた音が野外でやった瞬間に、ハイハットが聞こえなくなったりとか。あと今回の函館のライブに関しては花道がT字になってて、そこでの音の確認も念入りにしたかったんですけど、天候的にそうもいかなくて。演奏自体は自信はあったんですけども、1日目の「口唇」で出だしに失敗しちゃいまして。全員がつなぎの確認を忘れてたっていう。やっぱ練習もしないとダメだねっていうこともわかりました(笑)。

JIRO ははははは(笑)。

──雨が降ったことで「晴れバンド」という肩書きは失いましたが、その点はどう感じてますか?

TERU いやよかったなと。それが今まではプレッシャーだったんで(笑)。

──プレッシャーだったんですか?

TERU 毎回毎回「晴れ男がいるので大丈夫ですよね?」とか「私はカッパを持っていきませんから!」って言うファンの子がいたりとか。「一応持っていこうよ」とは思うんですけど(笑)。今までどの野外ライブでも、台風が近付いてても前日に外れていったりっていう奇跡があったんで、今回も絶対晴れる!と思ってたんですけど。凱旋ライブで雨に打たれて……まあ、おかげでTAKUROが言う「全天候型バンド」に生まれ変われたから。

70代のおじいちゃんが「GLAYを観てみたい」

──ライブって自分たちでコントロールできない部分があるし、予測不能なことが起きがちだとは思うんです。そういう事態に遭遇したときの対処法みたいなのってありますか?

JIRO そうですね、あんまりナーバスにならないことですね。前に一度TERUの喉の調子が悪くて、ライブ中に声が出なかったことがあったんですけど、そのときに「悔しいけどうれしい」って言ったんですよね。

──それはどういう意味ですか?

JIRO(B)

JIRO 「みんなが見守ってくれてる」「温かい目で俺を見てくれてることがうれしい」って。TERUの性格は知ってるので、本当はすごく悔しかったと思うんですよ。でもその感情すらも超えて、僕らを愛してくれてるファンの人たちの優しさに感動してた。やっぱりTERUの声が出ないのって、GLAYにとっては一番のトラブルだと思うんです。僕らの楽器が音が出なかったとか、演奏が途中で止まっちゃったとしても大したトラブルじゃないというか。このバンドを引っ張ってるTERUがファンの人たちを信頼してステージに立ってるっていうのがわかったとき、これから何が起きても大丈夫だろうなって思いましたね。2年ぐらい前のツアーのことだったんですけど。

──函館のライブを観て感じたんですが、GLAYって自分たちのためというよりはお客さんのためにステージに立ち続けてるんじゃないかと。

JIRO ほんとにそうですね。函館ライブに関しては特にその思いが強くて。函館ってめったにアーティストがコンサートに来てくれなくて。でも、中学校ぐらいのときに竜童組の野外ライブを観に行って、よく来てくれたよなあって思ったんですよね。僕、曲とか全然知らなくて、友達に連れて行ってもらったんですけど。大きいステージで爆音で聴く体験っていうのが印象に残ってて。今回はなかなか函館から出ない人たちに、僕らなりではありますけどエンタテインメントを届けられたなと。

──ちゃんと地元に恩返しができたと。

JIRO あとから聞いた話なんですけど、70代ぐらいのおじいちゃんが「GLAYっていうバンドが函館出身だっていうのは知ってるけど、どんな音楽やってるのかは知らない。でも函館にそんなにたくさんの人を呼ぶバンドなんだったら観てみたい」って言って、自分でチケット取って来てくれたっていうエピソードを聞いてうれしくなったり。周りの人たちからも、地元の人たちのGLAYに対する評価が上がったという報告を聞くんですよ(笑)。交通手段や宿が十分にフォローできなくて各方面に迷惑をかけたと思うんですけど、下地はできたんで、街を盛り上げる一環として続けていけたらなと思ってます。

ニューシングル「DIAMOND SKIN / 虹のポケット / CRAZY DANCE」/ 2013年11月27日発売 / loversoul music & associates
CD+DVD 1800円 / PCCN-00011
CD+DVD 1800円 / PCCN-00011
CD 1200円 / PCCN-00012
GLAY CHRISTMAS SHOW 2013 ACOUSTIC MILLION DOLLAR NIGHT
GLAY(ぐれい)

函館出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年、シングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催。この人数は単独の有料公演としては、日本のみならず全世界での史上最多動員記録である。その後も数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2008年8月には初のアメリカライブをサンフランシスコとロサンゼルスで行った。2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」を設立し、2012年7月の長居スタジアムライブにてデビュー20周年に向けた7大サプライズを発表。この一環として、12月にシングル「JUSTICE [from] GUILTY」「運命論」を、2013年1月にオリジナルアルバム「JUSTICE」「GUILTY」を2枚同時リリースした。2月からは約25万人を動員する全国アリーナツアーがスタート。その後、5月からは香港、台北にてアジア公演を、7月には函館・緑の島野外特設ステージにて野外ライブ「GLAY Special Live 2013 in HAKODATE GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.1」を開催した。11月には函館ライブの模様が収められたDVD / Blu-rayと、通算49枚目となるトリプルAサイドシングル「DIAMOND SKIN / 虹のポケット / CRAZY DANCE」が同時発売。12月から10年ぶりのアコースティックライブを、GLAY初となるツアーという形で行うことが決定している。