ファンの方に向けた決意表明
──続いて、9月25日リリースのBAND-MAIDのニューアルバム「Epic Narratives」についてお聞きします。まとまった音源としては2022年9月発売のEP「Unleash」以来となります。
小鳩 「Unleash」という作品はコロナ禍からの解放をテーマにしていたので、今回はそこから続くストーリーを描くことをまず考えました。
KANAMI 今までは「ファンの方がこういう曲をやったら喜ぶんじゃないか」ってことや、「ハードロックを演奏するメイド」という強みを意識して曲を書いていたんですけど、このアルバムを作り始めたときは自分の感情をもっと大事にしたいと考え始めていて。コロナの期間中は悲しいこととかしんどいこともたくさんあったけど、そこを乗り越えてひさしぶりに有観客でお給仕(ライブ)ができた喜びもあったので、アルバムにはそういう感情を詰め込んだ曲がそろっています。
SAIKI 「Unleash」を経て自分たちがまず楽しむということを改めて大事にしたいなと思っていましたし、だからこそKANAMIのそういう意向にメンバーとしても賛成できました。
小鳩 今回のアルバムではSAIKIが書いた歌詞も増えまして、そこも新しい一面として感じてもらえる大きな要素かなと思いますっぽ。
SAIKI GLAYさんの30周年のあとに言いづらいんですけど、BAND-MAIDも10周年を迎えまして。それでひと区切りというか、自分たちが10年続けられたことを皆さんともお祝いしたので、新たな門出を祝いつつ、これからの決意表明を込めることも意識しました。
──他者に向けて思いを届ける以上に自分たちの思いを吐露することに重点を置いたという点は、「壮大で素敵な体験についての語り」を意味するアルバムタイトル「Epic Narratives」にもつながりますよね。
SAIKI そうですね。なので、ファンの方に向けた決意表明を音楽だけではなくタイトルやジャケットにも込めた、壮大な物語になっています。
小鳩 1曲1曲にストーリーがあって、それを1つの街のようにキュッと詰まった感じにしたいというのが大きなイメージとしてあって。
SAIKI 街をもっと発展させたいというのがコンセプトですね。
HISASHI それがこのジャケットに表されているんだ。
小鳩 そうです。「完結した物語を描くんじゃなくて、もっとたくさんの人がいて、街のように広がりを感じられるものにしたい」というジャケットのイメージをSAIKIからもらっていたので、物語を継いでいくような雰囲気を出そうということになり、いくつか提案した中から決まったのがこの「Epic Narratives」でしたっぽ。
──SAIKIさんは作詞を多く担当するようになって、以前と変化を感じることはありましたか?
SAIKI 変わりましたね。さっきTERUさんは私を陽キャって言いましたけど、歌詞では逆なんですよ(笑)。このギャップを武器にしたいという思いも強かったので、作詞ではそこは常に意識していました。
TERU 皆さんのアルバムに対する熱い思いとは真逆で申し訳ないんだけど、僕らは今回アルバムの曲順をくじで決めたんですよ。
SAIKI・KANAMI えーっ、すごい!(笑)
小鳩 私、それインタビューで読みましたっぽ(笑)。でも、制作でそういう楽しみ方ができるのってすごく素敵だなって思いましたっぽ。
KANAMI BAND-MAIDも30周年のときにやろう!
HISASHI 不思議とまとまったんだよね。めちゃくちゃしっくりくる流れになった。でも、変なルールがあって。大富豪みたいに革命ってカードを入れて、曲順が逆になるっていう(笑)。
一同 (笑)。
TERU でも、あれは革命がなかったら厳しかったよね。
小鳩 私たち、いつも曲順はすごく迷うんですっぽ。
HISASHI 迷うから、結果くじになったのよ。
SAIKI なるほど。そういうのもアリなんですね(笑)。
BAND-MAIDは海外姐さん
──こういう対談の機会もなかなかないと思うので、お互いに気になっていたことを聞いてみてはどうでしょう。GLAYの皆さんからBAND-MAIDの皆さんに聞いてみたいことって何かありますか?
TERU やっぱり海外のことですかね。
HISASHI そうだね。海外姐さんですから(笑)。
一同 (笑)。
HISASHI GLAYも海外でライブをしたことがあるんだけど、すごくお金がかかるんだよね。
小鳩 そうですっぽね、お金はかかりますっぽね。
SAIKI GLAYさんは演出がすごいから、余計にかかるんじゃないですか?
TERU 演出じゃないの。車で移動するじゃない? でも車だと疲れるから、飛行機にしてもらうの(笑)。
小鳩・SAIKI・KANAMI おおー。
SAIKI 私たちは前回バスで移動していました。大型バスの中で寝泊まりしながらツアーを回って。
HISASHI おお、噂で聞くやつだ。海外ツアー中、大変なこととかありました?
小鳩 最初の頃は食がやっぱり大変だったっぽね。
SAIKI そうだね。なので、慣れてくるとレンジで炊けるごはんとか味噌汁をいっぱい持参するようになりましたね。
HISASHI 食は気持ちと直結するもんね。
小鳩 私たち、たぶんお二人が想像する以上に食べるんですっぽ(笑)。常にテーブルに乗り切らないくらい食べたいというタイプなので。
TERU そうなんだ(笑)。ライブをして、終わったら移動して、翌日に次の会場に着いてっていう感じ?
小鳩 そうですっぽ。
HISASHI (資料に掲載されていた2022年のUSツアースケジュールを目にして)これ、すごい日程じゃない? 1日おきとか連チャンばかりだし。
TERU サンフランシスコからロス、サンディエゴの流れはわかるけど……すごいね。
小鳩 今まで行ったことがないところにも行こうということで、細かく回らせてもらって。
SAIKI このときはフィラデルフィアがすごかったよね。
TERU お客さんが?
SAIKI いえ、街の治安が。会場は安全なんですけど、1人で街に出るのは絶対にダメだと言われました。お給仕が終わったあとも急いでバスに乗って。
小鳩 大きいバスってすぐに目をつけられるみたいで。ケータリングを用意してくださる方も追いかけられたって言ってましたっぽ。
TERU そういえばGLAYもニューヨークで「BE WITH YOU」のミュージックビデオ撮影をしたとき、朝にスタッフがビュッフェの用意をしていたら長蛇の列ができたよね(笑)。
SAIKI えーっ、街の人がみんな並んだんですか?
TERU そう、炊き出しと勘違いして(笑)。あれは忘れられないなあ。
バンドって夢がある
──逆に、BAND-MAIDの皆さんからGLAYの皆さんに聞いてみたいことは?
小鳩 聞きたいことはたくさんあるけど、何から聞いていいのかわからないっぽ(笑)。
HISASHI なんでもいいですよ(笑)。
KANAMI じゃあ……国民全員が知っているような楽曲がGLAYさんにはいくつもあるじゃないですか。私たちもそういう曲を作ることを1つの目標として掲げているので……皆さんの耳に残るような心地よい、一度聴いたら忘れられないメロディや歌詞を作る秘訣を教えてほしくて。そういうことって、バンド全体で話したりするんですか?
HISASHI 全然話さないよね。
KANAMI 話さないんですか?
SAIKI それぞれ自由に?
HISASHI そう、自由にやりたいことをやった結果。だから、BAND-MAIDも一番得意なことを続ければいいと思うんだよね。それは強みだと思うから。
KANAMI 得意なこと……じゃあ好きなことをやっていいってことかな?
SAIKI 引き続きね。間違いじゃないということで。
KANAMI HISASHIさんから一番得意なこと、好きなことを続ければいいと許可をいただきました!(笑)
HISASHI 本当にそれが一番。あとは、ちょっと俯瞰で見て「BAND-MAIDのこういうところは、ほかのバンドにはない」という魅力を見つけると絶対に強いから。で、それを続けるってことだよね。
KANAMI ありがとうございます! わあ、聞きたいことがいっぱいありすぎて……もういっこ私から聞いていい?
小鳩・SAIKI いいよ(笑)。
KANAMI 私は作曲みたいにゼロからイチを作るのは得意なんですけど、アレンジのようにイチを100にしていく作業が本当に不得意で。例えばベースのMISAが持ってきたデモのアイデアをうまく広げられずだとか……それが3年ぐらい続いているんです。
TERU 僕らもデビュー10周年前後の頃はすごく悩んでいましたよ。「こうじゃないな」ってほとんど完成したものをバラしちゃうことも何度もあったし。ただ、アレンジは必ず4人で集まって、ドラマーの永井(利光)さんにも入ってもらっていて、それをずっと続けてきた経験があったから今は人に任せても大丈夫という考え方に変わってきたのかな。だから、誰しも一度は通るんじゃないですかね。
SAIKI GLAYさんにもそういう時代があったんですね。
HISASHI あとは、得意な人に任せるっていうのもすごくいいアイデアだと思うよ。
KANAMI じゃあ、これからも任せようかな? HISASHIさんにも言ってもらえたし(笑)。
TERU 意外と5人で集まってやると、いいひらめきが出るかもしれない。
KANAMI 確かに、やったことないもんね。
TERU 「あ、いいね」と思う瞬間が必ずあるから。行き詰まったときに突然TAKUROが「HISASHI、ちょっとイントロ弾いてみて」と言ってHISASHIが弾いたフレーズが「BEAUTIFUL DREAMER」の誕生のきっかけになったり。
KANAMI BAND-MAIDは常にデータのやり取りで曲作りをしてきたから、そういうことをやったことがなくて。
TERU 亀田(誠治)さんからもそういう姿勢が「すごくバンドっぽい」って言われるし、今も変わらずその形でやっているから。
KANAMI すぐにやらねば。
小鳩 一度やってみようっぽ。
TERU 10年経ったし、たまにはそういうことをやってみてもいいかもね。誰かの家に集まってでもいいし。
KANAMI 本当にありがとうございます!
SAIKI 10周年から先のヒントが見つかりました。
TERU 僕らもひさしぶりにこんな話をして、10周年と30周年の違いをいろいろ感じました。
HISASHI 10年を過ぎても「続けていてよかった」と思うことはたくさんあると思うから。
TERU HISASHIなんかすごい夢をたくさん叶えてきたからね。大好きな声優さんを自分の曲に起用したりさ(笑)。
SAIKI そうだ、そういう夢も叶えちゃっていいんですものね。
小鳩 夢を増やしてもいけるっぽね。
SAIKI バンドって夢があっていいですね。
プロフィール
GLAY(グレイ)
北海道函館市出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年に活動を開始し、1989年にHISASHI(G)、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に12枚目のシングル「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には千葉・幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブを開催し、当時有料の単独ライブとしては日本最多観客動員を記録する。2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」(現:LSG)を設立。メジャーデビュー20周年となる2014年には宮城・ひとめぼれスタジアム宮城にて単独ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」を行った。デビュー25周年を迎えた2019年より「GLAY DEMOCRACY」をテーマに精力的な活動を展開。10月にアルバム「NO DEMOCRACY」を、2020年3月にベストアルバム「REVIEW II -BEST OF GLAY-」をリリースした。コロナ禍の2021年3月から6月にかけて配信ライブ企画「THE ENTERTAINMENT STRIKES BACK」を実施。デビュー30周年を迎える2024年は、周年のテーマとして「GLAY EXPO」を掲げて活動中。5月にシングル「whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)- / シェア」を発表し、6月に埼玉・ベルーナドームで単独公演「GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025」を行い、10月に4年ぶりとなるアルバム「Back To The Pops」をリリース。11月から全国アリーナツアーを開催する。
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BAND-MAID(バンドメイド)
小鳩ミク(G, Vo)を中心に、SAIKI(Vo)、KANAMI(G)、AKANE(Dr)、MISA(B)の5人で結成されたガールズロックバンド。メイドの見た目とは相反するハードなロックサウンドが、国内外から支持を得ており、YouTubeの総再生回数は2億を超える。2019年には世界最大級のライブエンタテイメント企業「Live Nation」とツアーパートナーシップを結び、トニー・ヴィスコンティがプロデュースした楽曲を含むアルバム「CONQUEROR」を発表。2020年に全米での活動においてUnited Talent Agencyとアライアンスを結ぶ。2021年にはNetflix映画「Kate」に出演し、ハリウッドデビュー。2022年に開催した全米ツアーでの動員は2万人を超え、全会場のチケットをソールドアウトさせる。同年11月にはGuns N' Rosesの来日公演のサポートアクトを務めた。2023年には結成10周年ツアーを世界各地で行い、アメリカ・シカゴのGrant parkで行われた大型音楽フェス「Lollapalooza」を含め4つの海外フェスにも参加。10周年ツアーのファイナルとして同年11月に神奈川・横浜アリーナでの単独公演を行った。2024年9月に3年半ぶりとなるアルバム「Epic Narratives」をリリースした。