その人のことをすごく考えちゃう

──いつも一緒にいる人とはちょっと違う目線からGIRLFRIENDのいいところを見つけて、それを引き出してあげたいという気持ちだったんでしょうか。

清水　シンガーソングライターって、常に自分を客観的に見てるんですよね。誰に向けて歌っているのか、どう見られたいのか、どう評価されたいのかを常に全力で考えてる。そういう人が多いと思うし、少なくとも僕はそうです。それはそれで才能も必要だし、反対に「自分にはこれしかできない。だからそれをやり続けるだけ」というタイプの人もいて、それはそれで評価されれば天才だし。どっちもあるんですけど、僕は自分自身がすごく客観的に考える人間だから、アーティストの本質みたいなところは、たぶんレコード会社とか芸能事務所の大人たちよりいろいろ見えるというか。「もっとこうしたほうがいいのに」とか、「これをやれば将来につながる一歩になるな」とか、「これだけやってたってしょうがないよね」とか。もちろんそれが正解かどうかはわからないけど、見えてないといけない。だからこそ悩む部分もあるんですよ。

──悩む？

清水　はい。「私はこれしかできません」というタイプであれば、自分の曲と同じように書いて「あなたにあげますよ」ってすればいいだけだから楽なんですけど、僕はその人のことをすごく考えちゃう。もし相手がそんなことを求めていなくて、「清水翔太の曲が欲しい」だけだったとしても。それは先輩後輩とか関係ないんです。だからこそおこがましいとも感じるけど、それを織り込んだうえでの“愛がある楽曲提供”というのが自分の目標なんです。プロデュースを頼まれる場合は、そういうことを使命みたいに感じてるから、彼女たちくらいのキャリアの人にとってはすごくいいかもしれない。

──相手のキャリアによってアプローチを変えていらっしゃると。

清水　でも難しいですよね。例えばレコード会社が「清水翔太が書いた曲」ということを打ち出したいだけだとしても、僕はその人自身が書いた曲だと思われるぐらい、その人の世界観を意識することが多いんです。今回のGIRLFRIENDに対しては逆で、彼女たちのキャリアと現状の立ち位置を考えたらこれをやったほうがいいって思ったからこうしたんですけど。そのどっちかです、僕は。

──アプローチは対照的だけど、考えていることの根本は同じということですね。

清水　そうですね。歌い手の場合は考えます。ちょっと前にTEEくんに書いた「片方の未来（produced by 清水翔太）」は、デモからTEEくんっぽく歌ったりとか、彼がナチュラルに歌えるっていうことを意識して作りました。GIRLFRIENDはバンドだから、イメージしづらい部分はありました。バンドといっても実際にはメンバーの1人が曲を作ってるバンドが多いし、あまり考えないほうが楽なんでしょうけど、僕はどうしてもいろいろ考えてしまうから、携わる人が増えれば増えるほど難しくなってきちゃって。4人もいると大変です（笑）。

GIRLFRIEND　（笑）。

音楽はライブで成長していく

清水　あとはこれがどこまで届くかということ。そしてもう1つ大事なのは、音源を作って終わりじゃないということなんです。音楽はライブで成長していくし、特に僕は自分の音楽がライブで育ってきたと感じるんですよ。発売当時に別に売れなかった曲でも、数年後にイントロでドカーンって盛り上がってもらえるようになった曲がいっぱいあるし。この曲に限らず、すべての曲で楽曲自体の成長が必要ですよね。だからライブでどんどんよくなっていくといいよなと思っています。

SAKIKA　GIRLFRIENDのファンの人はすでに聴いてくれているかもしれないけど、それ以外の人にも届いてほしい曲ですし、私たちが届けるべきだと思います。きっとそれは私たちがライブで新しいお客さんに会うときに、この曲をどう表現するかにかかってくるので、自信を持ってもっといろんな人に聴いてもらえるようにがんばりたいと思います。

MINA　翔太さんからいろんなお話を聞けて、「それだけ。」を大切に思う気持ちが倍増しました。この気持ちを今後ライブで出していけるようにしたいです。この前ライブで初めて披露したんですけど、弾いていてすごく楽しくて。もっともっとライブでやりたくなる曲だし、いろんな人に聴いてもらって、この曲も自分たちもどんどん高めていきたいです。

NAGISA　この曲に限らず、今ある私たちの楽曲をもっともっと追求したいです。メンバーそれぞれのエネルギーや思いを詰め込んで、ライブで表現していくことで楽曲を大きく育てていきたいし、私たちも一緒に成長していきたいなと思います。

MIREI　「音源のほうがいい」とは絶対言われたくないですね。SAKIKAの歌はそのときどきの感情で変わると思うし、いろんな経験を積み重ねたら、歌い方も変わっていくと思うので。1つひとつの感情を大事にしながらこの曲に気持ちを込めて、私たち楽器隊もしっかり演奏していきたいなと思います。

──清水さんからGIRLFRIENDにエールを贈るとしたら、どんな言葉をかけますか？

清水　ムズいなあ……僕が19歳の頃って、もう本当に悔しいことばっかりで。クリエイティブと仕事、自由と不自由の間で苦しんでた。でもそれが今の自分の自由を作ってるんですよね。あの頃があったからこその今だと思えば、不自由も悪くなかったと思えたりするし、逆もそう。だから目先の利益を追うだけじゃなくて、長く活動を続けていくことを最優先事項と思ってほしいんです。将来自分が幸せになるために、できるだけストレスを感じずに長く続けていくために、今傷ついたり苦しんだり不自由を感じたりするのは、すごく大事なことだから。今はわがままに、でも、そのわがままが叶わないことを乗りこなしていってほしいですね。

──「乗りこなす」という言葉に先輩の思いを感じました。

清水　乗りこなせなくてダメになっちゃう人もたくさんいる世界ですからね。でもそこを乗り越えれば、どんな波が来てもやり過ごせるようになるし、逆にそれを楽しめるようになったりもするから。

GIRLFRIEND　ありがとうございます！ がんばります！