GIRLFRIEND×清水翔太|スクールの先輩から後輩へ贈る「それだけ。」の話

平均年齢19歳のバンドGIRLFRIENDが、2019年11月から今年1月にかけ、3カ月連続で配信シングルをリリースした。

そのラストを飾ったのが、彼女たちの出身校である大阪・キャレスボーカル&ダンススクールの先輩、清水翔太がプロデュースした「それだけ。」。彼女たちと同世代の女性を主人公に、寂しさや迷いや切なさ、恋人へのひたむきな愛情を、まっすぐな言葉と詩情あふれるメロディで表現したバラードだ。

音楽ナタリーではGIRLFRIENDの4人と清水にインタビューを実施。「彼女たちだからこそ歌えた楽曲」と言わしめた、単に楽曲提供という間柄にとどまらない、お互いへの思いを語ってもらった。

取材・文 / 高岡洋詞 撮影 / 草場雄介

私たちの大スター

──ちょっと意外性のあるコラボレーションですね。まず実現の経緯からお聞かせください。

清水翔太

清水翔太 「それだけ。」はけっこう前に書いた曲なんですよ。ただ歌詞の方向性やテーマは女性向きだし、音楽性やキャラ的に自分が歌う曲でもない、かといって歌ってもらう人もいない……ということで眠らせてたというか。GIRLFRIENDのことは、同じスクールの出身ということもあって、知ってはいました。曲をちゃんと聴いたことはなかったけど、あるとき僕のライブに遊びに来てくれたので、そのあとに聴いてみて、「それだけ。」のことを思い出したんです。半ば忘れかけていた曲なんですけど、彼女たちが歌ったらよさそうだな、歌ってほしいなって。

──大阪のキャレスボーカル&ダンススクールですよね。出身者同士でつながりはあったりするんですか?

清水 いや、ないですね。

──GIRLFRIENDの皆さんは?

SAKIKA(Vo, G) 翔太さんはスクールでは本当に大スターでした。

MIREI(Dr) いやいや、“世間で”だから(笑)。

SAKIKA 世間でもスクールでも大スターです(笑)。学内でもよく曲がかかっていて、誰もが知っていました。たまに大阪に帰ってこられたとき、生徒にピアノの弾き語りを聴かせてくださったりして。私たちがバンドをやり始めたくらいのときに、覗き見してくださったの覚えてますか?

清水 うん、覚えてる。

SAKIKA そのときにご挨拶させていただきました。

──みんなの憧れの先輩だったんですね。そんな人にプロデュースしてもらえるというお話は光栄だったでしょう。

MIREI すごく光栄です! 初めて「それだけ。」を聴かせていただいたときは「こんないい曲いただいていいんですか?」って、みんなで大興奮したのを覚えてます。

SAKIKA そうでした。「本当に本当にうれしい!」みたいな。

MIREI そんなおとなしい感じじゃなくて、なんかもっと「ウオー!」みたいな(笑)。

──清水さんはGIRLFRIENDのどういうところを見て、この曲を歌ってもらいたいと思ったんですか?

清水 オフィシャルコメントにも書いたんですけど、この曲はすごくピュアで健康的なんですよ。彼女たちも若いから健康的だし、いい意味で本当にピュアだし、まっすぐだし。そういう人に歌ってほしいなと思っていた曲だから。僕の周りの女性アーティストって、加藤ミリヤにしても青山テルマにしても當山みれいにしても、健康的じゃないんです(笑)。それは悪い意味では全然なくて、だからこそ表現できる“痛さ”とかもあるんですけど。それでこの曲は行き場所がなかったんですよ、ずっと。

──清水さんはバンドのプロデュースは初めてですよね?

清水 そうです。僕は自分の曲はピアノでコードだけ付けて打ち込んでいくやり方なので、バンドサウンドの作り方はわからない。だから詞と曲を知り合いのバンドに渡して、とりあえず音源にしてもらって、寝かせていたのを彼女たちに投げました。いつもアレンジは自分たちでするって言うから、「じゃあどうぞ」って渡して、「何かこうしたほうがいいんじゃない?っていうことがあれば言わせてもらうね」みたいな。言わせてもらうというより、一緒に話し合うみたいなことをして、完成したんです。“清水翔太プロデュース”というほどいろいろやってはいないんですよ。

──アレンジ面で難しかったことはありますか?

NAGISA(G) デモにはイントロがなかったんですけど、ギターのフレーズに悩みました。去年の夏からずっと制作してたんですけど、一番時間がかかったのはそこかもしれないです。

MINA(B) 洗練された曲だから「この曲に自分のベースを乗せられるんだ!」っていう喜びをすごく感じたんですけど、メロディに寄り添うようなベースラインを考えようと、かなり試行錯誤した記憶があります。出るところは出て、支えるところは支えるみたいな、足し算と引き算をバランスよくできたらなと思って作りました。

MIREI ドラムは「めっちゃロック!」みたいな感じじゃないので、グルーヴ感のあるリズムをすごく意識しました。レコーディング中にも「こういう聞こえ方はどうですか?」みたいに相談しながら。

SAKIKAの声が全然違った

──ボーカルはいかがですか?

SAKIKA(Vo, G)

SAKIKA 私たちの持ち曲にはバラードってなかったんです。わりとまっすぐ強く歌う曲ばっかりで、こういうメロディラインがしっかりある曲もあんまりなかったので、どれだけ力を抜けるかが課題というか、この曲の主人公に似合う歌い方をいろいろ考えながら歌いました。

──清水さんはボーカリストですから、やっぱり歌には一番厳しくなるのではないかと思うのですが。

清水 もちろんそうなんですけど、全部は立ち会えないので、一番大事なことだけ伝えました。この曲がどういうストーリーで、主人公の感情がどう動いているのか。詞を書いた人間としては、演技とまでは言わないけど、主人公の感情をなぞるような歌い方をしてほしいんですよ。自分で歌えば完璧に表現できるけど、自分以外の人が歌う場合はすべてを理解してもらうのは難しいと思うから、「ここは主人公はこういう気持ちだよ」とか、できるだけ説明して。歌の技術的な部分については特に何も言いませんでした。その技術をどう使うかっていうさじ加減もあるし。

SAKIKA 仮歌を入れる段階で、翔太さん直々に細かくディレクションしていただきました。それを持ち帰ってメンバーやスタッフさんに聴いてもらったら、「声が全然違うね」って言われたんです。だから、ディレクションしていただいたことを本番のレコーディングでどれだけ表現できるかをすごく意識しました。「ここは強く言って」「ここは優しく言って」みたいに、感情を聴かせるように。

──メンバーの皆さんには、SAKIKAさんの歌声が今までとどのように違って聞こえたんでしょうか?

MIREI 私たちの曲ってわりとロックサウンドなのでSAKIKAはいつも張って歌うんですけど、この曲ではどちらかというと内に内にというイメージの歌い方をしてるなと思ったんです。声が野太くなくて、悲しそうにも聞こえるし、いつものSAKIKAじゃない感じが新鮮やなって。