ナタリー PowerPush - GENERAL HEAD MOUNTAIN
喜怒哀楽を詰め込んだ“全裸のアルバム”堂々完成
GENERAL HEAD MOUNTAINがメジャー移籍後初となるフルアルバム「深まる日々に、微笑みを。」を1月20日にリリースした。
このアルバムは、2009年11月にシングル「羽」でメジャーデビューを果たした彼らの新たな一歩を刻む意欲作。攻撃的なロックナンバーが唸りを上げて聴き手の心を刺す一方で、本作ではこれまで奥に潜めていた優しさやぬくもりも堂々と提示されている。
ナタリーではバンドを率いる中心人物、松尾昭彦(Vo,B)を直撃。新作に込めた思いを語ってもらった。
取材・文/高橋美穂
刺した上で注入できるようになってきた
──まずは、メジャーデビューアルバムを作り終えた、率直な感想を。
正直、気分は全裸です。良くも悪くも。
──ということは、照れもあった?
照れはあります。けど、そこを見せるのがテーマだったんで達成感はあります。
──全裸くらいまでさらけ出すっていうのは、作る前から考えていたんですか?
「羽」くらいからふわっとあって、「傘」で完全にこれだって思いました。「木漏れ日にツキル」(2009年6月発売)では「全力で刺そう」「ぐちゃって刺すだけの音楽を作ろう」と思って、で、作り終えて結果何が残ったかっていうと、何も残んなかったんですね。だから「刺した上で包み込まないとダメなんだ」って思って、その包み込むものは何かっていうと人間味だっていう。じゃあそれを作んなきゃ、自分を書かなきゃっていうことで。
──時間もかかりましたか?
そうですね。1年間をこれだけに費やした感じです。時間があったからこそできたんだろうな。今まであんだけ人前に立ってたのに、ライブが減って不安になって。でも、そのぶん音楽と自分に向き合ってこのCDを作って。結果この作品が完成したんで、いい1年間でしたけど。
──でも自分と向き合い続けるって、しんどくないですか?
結構しんどかったですけど、そのぶんいっぱい景色を聴いたし、夜の音を聴いたし、視野が広くなったなって。人ともいっぱい会話をしましたね。今まで全然してなかったから。
──資料でいただいたセルフライナーノーツにも、「合鍵」は友達と話して生まれた楽曲だと綴ってますね。
はい。友達を呼びだして「おいっ!」って(笑)。自分はいろんなことを知らなすぎる、興味を持とう、まずは人だって思って、「おい話を聞かせろよ」と。
──どんな話をしたんですか?
朝方になって、女子高生の挨拶を見ながら「よそよそしいね」って話してたり(笑)。「この距離感ヤバいね」とか。そういうつまらない会話です。
──でもそれで、こんなあたたかい曲が生まれたんですね。
そうですね。刺した上で注入できるようにはなってきました。この曲も「おお、いけそうだ」って思ったら、友達に「もう帰れ! また夜電話する」って言って(笑)。
この作品ができたごほうびに花を咲かせてもらった
──「合鍵」のようなあたたかい曲もありますが、前半は速い曲が多いですね。
そうですね。スタートダッシュです。「花にカルテット」で行進が始まって、「青」で一回過去と向き合って「うおお!」って走り出すわけなんですけど。で、走って走って、「深まる日々に、微笑みを。」に繋がっていって。そこでフェイドアウトの瞬間に花が咲いて、また「花にカルテット」に戻るっていう。一応“繰り返し”を表現してるんですけど、絶対誰も気付かないだろうな(笑)。で、ジャケでも花が咲いてるっていう。
──その、今作を提示する“花”ってイメージは、アルバム全体をまとめてから見えた感じなんですか?
そうですね。筒井(はじめ/シングル「羽」のジャケットも手掛けたアーティスト)さんは、代表的な作品に花の絵が多くて、一度は描いてほしいなって思ってたんですけど、最初あんま描きたがってなかったから「いや筒井さん、僕の世界に花を咲かせてください」って言って描いてもらったんです、なんとか。
──それは、お願いするのにふさわしいアルバムを作ることができたから?
そうっす。だからごほうびに「お花を咲かせてくださいよ」って(笑)。そしたらこんなきれいな花が咲きました。
──自分で自分に花を咲かせることができたアルバムだと思ったということ?
そうですね。それがアルバムを作り終えての感想でした。「やったあ!」みたいな(笑)。ちょっと他人事みたいな感覚もあって。実感は……人前で全部歌ったらわくんだろうな。
繰り返すこと、それを受け入れることが大きなテーマ
──自分自身に向き合いながら制作したアルバムとのことですけど、1曲目の「花にカルテット」から、バンドが全員参加してないというところが興味深いですね。
暗いマーチを作ってくれっていう、完全にマーチの解釈を間違えたオーダーをしたんですけど(笑)。でも(過去の作品でも弦やピアノのアレンジを手掛けていた)佐藤さんって方が勘が良くて、これを作ってくれたんです。
──こういうオープニングのイメージがあったんですか?
ラッパ、トランペットとか使いたかったんですよね。ファンファーレじゃないですけど、出発のときにラッパはアガるなって(笑)。行進曲で助走をつけて始めたかった。あとは最後の曲からループしたときのことを考えて、いきなりまた自分がいてもな、って。
──一度客観性を挟んだほうがいいというか。
そうっす。繰り返すときに間が必要だなって思って。
──ループするっていうのもテーマだったんですか?
繰り返すこと、それを受け入れることっていうのを大きなテーマにして作り始めたんです。途中で迷走もしましたけど、「深まる日々に、微笑みを。」ができてからが早かったからですね。ガチッときたっていうか。
GENERAL HEAD MOUNTAIN
(じぇねらるへっどまうんてん)
2000年1月、松尾昭彦(Vo,B)を中心に宮崎で結成。2003年5月に現メンバーであるオカダコウキ(G)、海太(Dr)が加入する。2005年にインディーズレーベルより初音源「追憶の唄々」をリリース。その後もリリースを重ね、2008年に1stフルアルバム「月かなしブルー」を発表。椎名林檎「罪と罰」カバーの収録や、マンガ家の魚喃キリコがジャケットを手がけたことなどで話題を集める。その後、コロムビアミュージックエンタテインメントと契約し、2009年11月シングル「羽」でメジャーデビュー。