ナタリー PowerPush - GENERAL HEAD MOUNTAIN

大型新人メジャーデビュー 4曲入りシングルでシーンを刺す

GENERAL HEAD MOUNTAINが11月4日、コロムビアミュージックエンタテインメントよりメジャーデビューを果たす。

今回リリースされる「羽」は、バンドのさまざまな顔を詰め込んだ名刺代わりの4曲入りシングル。ナタリーでは中心人物である松尾昭彦(Vo,B)にインタビューを行い、新作の話題を軸に、表現者としての意気込みを聞いた。

取材・文/高橋美穂

ずっとメジャーに行きたかった

──このたびメジャーデビューをするわけですが、これはずっと目指していたところではあったんですか?

僕はずっとメジャーに行きたかったです。誰もが「うん」って言うシーンで、こういうことをやってたら楽しいなって、漠然と思ってました。ずっとレーベルを探してたんで、こうなってよかったと思ってます(笑)。

──じゃあ、デビューシングルに「羽」を選んだのは?

(収録されている)4曲とも書き下ろしたんですけど、これが僕らっぽいな、って思って。そこは一番考えましたね。インディーズからの曲を持って(メジャーに)上がることは考えてなかったので。インディーズのときにリリースした曲はもう僕の中で完結してるし、出したものを掘り返すのもあんまり。また作ればいいやって。

──そして収録されている4曲とも、タイトルが漢字1文字に統一されてますね。

シングルとはいえ、作品として成立させたくて。最初にできた「羽」が1文字だったのでこうなりました。録った順が曲順なんですよ。

──そのへんも潔いですよね。

そうですね。相変わらずです(笑)。

──曲に関しても潔いと思ったんですよ。削ぎ落とされて、GENERAL HEAD MOUNTAINにとって大切な言葉や歌が一番際立って聴こえてくるっていう。

確かに、前よりは無駄は減ったかもしれないですね。的確に、手っ取り早く刺す方法を模索してたので(笑)。

──結果的に伝わりやすくなってますよね。

あの……前までは、歌詞をフィクションで書くことが多かったんです。それは僕が年齢的にもまだクソガキで、何も語れない状況だったので。でも、このシングルを作るにあたって、その先のアルバムのことも考えてたんですけど、アルバムのテーマはそろそろ“自分”じゃないかっていう。だから以前より言葉はわかりやすくなってると思います。

──自分というテーマを出そうと思ったきっかけは?

極力は出したくないんですよ(苦笑)。すっからかんで語ることもないし。

──私が前にインタビューしたときもそうおっしゃってましたね。

まあ、カッコつけても仕方がないので。でも今後表現するにあたって、自分ってのは避けて通れない大きなテーマではあると思ってますから。それで、出すなら今だろうなと。年を取り過ぎても、何を語っていやがるんだよっていうことになるので。

──じゃあ年齢的にも心境的にも、いいタイミングのメジャーデビューだったんですね。

そうかもしれないですね。

ポップとバラードとクソみたいな曲

──そして表題曲の「羽」は、今までの激しさが出た楽曲ですが、続く「傘」や「恋」っていうミドルな楽曲を1曲目にしなかったのは、今までの自分たちの軸を通すアピールですか?

それはもちろん。あとは最後に「糸」が入ってるっていうのが一番のミソなんですけど。こういうのが楽しいんですよね。メジャーのシングルに、テンポ235(BPM)の超速の曲が入ってるっていう。メジャー最速じゃないですかね(笑)。

──最後に入れた意図っていうのは?

アルバム聴きたくなってくれよ、っていう意味で。

──なるほど。「恋」でしみじみした空気をブチ壊すかのような。

ツンデレです(笑)。でも、全部があって僕たちだよって思ってるので、そういうシングルにはしたかったですよね。

──以前よりもスローな楽曲の割合が増えてるんで、そういうモードになってるのかなとも思ったんですけど。

いや、感覚は変わってないですね。ただ、4曲入れようってなったときに、これしかなかったっていう。速くてわかりやすい曲と、どうみてもポップ、あとバラード、クソみたいな曲っていう(笑)。それを1個ずつ出して。これがふくらんだらアルバムになるっていう感じですね。

──じゃあ優しさが増えてきているわけではない?

ああ、以前よりは増えてるかもしれないですね。アルバムを聴いたらわかると思うんです(笑)。

ライブではコーラスなしでも戦える

──今回はストリングスやピアノも効果的に使って、3ピースのロックバンドに留まらないアレンジに仕上げてますよね。

曲を作るときに音が鳴るんですよ。でも、全部を入れるわけにはいかないので、ここは欲しいなってところしか入れてないですけど。基本、ピアノやストリングスは、“わかりやすい光”っていうイメージで入れてます。ただライブは、できた瞬間の爆発力や緊張感だけが伝わればいいので、3人だけでいいんです。CDとライブは分けて考えてますね。僕らはライブではコーラスもないくらいなので。僕のところにしかマイクが立ってないんですよ。人に僕の歌を歌われるのが嫌いなんで。

──ええっ!? メンバーであれ?

はい。表現するときに人の歌を聴きたくないんですよね。最初、ギター(オカダ)は違うバンドで歌ってたので、(このバンドでも)歌いたかったみたいで、あいつの前にもマイクがあったんです。でも、僕はどうにかしてそのマイクをなくしたいと思って。MCさせたりして「ダメじゃん」って言ってマイクを奪ったっていう(笑)。

──計画的です(笑)。

でもほんとに、ライブになればコーラスなくても戦えると思ってるんで。あと僕、メロを結構変えたりするんで。俺を縛るな、自由にさせろっていう。

──オーディエンスは楽しいですけど、メンバーは大変でしょうね。

すごく大変だと思いますよ。ライブ前はメンバーに曲順くらいしか教えないので。一応(曲順表のMCをするところに)線を引きますけど、何をしゃべるかわからないよ、いつ歌い出すかわからないよっていう、そういう緊張感はありますね。ライブ後の反省会もないですし。

──そこは個人個人で……?

反省してくださいって。僕の失敗に関しても聞かないでくださいっていうことで(笑)。

最初の4行が出るまでは時間がかかる

──歌詞に関しても、個の領域を大切にしているというか、松尾さんの独自の世界を感じます。

どうなんですかね。周りと比べたことはないですけど、僕っぽいなと思ったりはします、読み直したときに。

──歌詞はどうやって書いていくんですか?

基本はメロとある程度のバンドアレンジが頭の中でできて、そこに乗せていきます。僕の曲はだいたい頭の中に、全体を語る上での景色があったりするんです。「羽」だったら、最初の4行で季節と思い出を重ねながら風景を描いて、そっからぐわーって語りだす、みたいな。たいがい、最初の4行が出るまでは時間がかかるんですよね。そっからは早いです。

──あと今回、自分について書いたということは、実体験が反映されているということですか?

そうですね。「恋」に関しては、友達の話を聞いて書いたんですけど。自分は遠距離恋愛はできないタイプなので、うわ、マジか!? って言いながら聞いてて。で、一番印象に残った部分を切り抜いたんです。それが「結構無言が続くんだよね」っていう言葉で。

──非常に切ない歌詞ですよね。

そうですね。なんてロマンチックな野郎だって話なんですけど。僕がこういうこと言えるなら、もうちょいいい恋愛をしてると思う(苦笑)。でも人に話を聞いて書いたのも初めてなんで、いい勉強になりました。

──いろいろと新しい試みにトライした1枚なんですね。

もう、すべてアルバムのためですね。

──自分の中で手法を増やしていこう、みたいな?

そうっす、そんな感じ。

メジャーデビューシングル『羽』 / 2009年11月4日発売 / 1050円(税込) / コロムビアミュージックエンタテインメント / COCA-16300

  • Amazon.co.jpへ
CD収録曲
GENERAL HEAD MOUNTAIN
(じぇねらるへっどまうんてん)

2000年1月、松尾昭彦(Vo,B)を中心に宮崎で結成。2003年5月に現メンバーであるオカダコウキ(G)、海太(Dr)が加入する。2005年にインディーズレーベルより初音源「追憶の唄々」をリリース。その後もリリースを重ね、2008年に1stフルアルバム「月かなしブルー」を発表。椎名林檎「罪と罰」カバーの収録や、マンガ家の魚喃キリコがジャケットを手がけたことなどで話題を集める。その後、コロムビアミュージックエンタテインメントと契約し、2009年11月シングル「羽」でメジャーデビュー。