映画「ハケンアニメ!」が5月20日に全国の劇場で公開される。
「ハケンアニメ!」は、世界中が注目する日本のアニメ業界を舞台に、もっとも成功したアニメの称号=「ハケン(覇権)」を手にすべく奮闘する者たちの姿を描く“お仕事ムービー”。劇中で火花を散らす2人のアニメ監督には、吉岡里帆と中村倫也がキャスティングされた。
この映画の主題歌「エクレール」を手がけたのは、川谷絵音(indigo la End、ゲスの極み乙女。、ichikoro、美的計画)、中嶋イッキュウ(Vo / tricot)、くっきー!(B / 野性爆弾)、小籔千豊(Dr)、新垣隆(Key)からなるバンド・ジェニーハイ。映画の中で、キーアイテムとなる洋菓子エクレアをタイトルに冠した「エクレール」は、自分の想像を超える作品を生み出そうと奮闘する人々を描く「ハケンアニメ!」の世界観を見事に反映した、バンド史上もっともポップな仕上がりの楽曲となっている。
映画の公開を記念してナタリーでは、音楽ナタリーと映画ナタリーにまたがり「ハケンアニメ!」の特集を展開。ジェニーハイのメンバー5人と吉岡、中村による座談会をそれぞれ掲載する。音楽ナタリーでは「エクレール」誕生秘話や、レコーディングでのエピソードなどについてじっくりと語り合ってもらった。
取材・文 / 黒田隆憲撮影 / 曽我美芽
キラキラした目でしゃべっている里帆ちゃんを見るのはひさしぶり
──まずはジェニーハイによる映画「ハケンアニメ!」の主題歌「エクレール」を聴いた、吉岡さんと中村さんの感想をお聞かせください。
中村倫也 今日はもう、(吉岡)里帆ちゃんがしゃべりたくて仕方がないみたいですよ(笑)。
吉岡里帆 本当に主題歌がよすぎて……とにかく聴いてうれしくなったことをまずお伝えしたかったんです。映画の完パケを観て、エンドロールでのワクワク感がすごいんです。本編ではどちらかというとつらいシーンが続くし、うまくいくシーンは映画の中でも一瞬なので、本編が終わって「エクレール」が流れたときは、すべてが報われたような開放感がありました。映画の中で群野葵ちゃん役を演じた高野(麻里佳)さんが、中嶋イッキュウさんとデュエットされているのも二重にうれしくて。映画本編の“その後”みたいな、アナザーストーリー感がありました。
中村 歌詞が里帆ちゃんが演じている瞳の目線に近い感じがするから、余計に感情移入できたよね。これだけポップなのに個性的で、中毒性もあって。しかも映画の主題歌としてこんなにも世界観とマッチするのはすごいことだなと思いました。しかし、こんなにキラキラした目でしゃべっている里帆ちゃんを現場で見るのはひさしぶりな気がするよ。
吉岡 あははは。映画館まで足を運んでくださった人たちには、ぜひ歌詞にも注目してほしいです。
──特に気に入っているフレーズは?
吉岡 最後のサビの「なんでもない想像が あなたの感動になるまで 貫け」というところが大好きです。泣きましたもん。
小籔千豊(ジェニーハイ) それはありがたいです。プロモーターの方、「吉岡里帆が泣いた!」を、この曲のキャッチコピーにしてください。
一同 (笑)。
吉岡 「夢の続きに見えるシーン そんなわけない状況も 作り出せるの 私たち 時間はかかるけど」っていう歌詞も好きです。これ、私がいつも演じながら思っていることなんですよ。みんなに「できない」と言われても「できるもん!」と思って過ごしているし、時間がかかってもいいからいいものを作りたいと思っているし。すごくいい歌詞だなと思いました。
もう1つの「ハケンアニメ!」の主題歌の行方
川谷絵音(ジェニーハイ) 「エクレール」、実は最初はまったく違う曲だったんですよ。
吉岡 え、そうだったんですか?
川谷 映画を観て感じた通りに書いた最初のデモが製作サイドの思い描いていたものとは全然違っていたみたいで。僕は「これが100点!」と思って提出したんですけど、「違う」と言われてボツになって(笑)。そういう経験はこれまでなかったんですよ。それで「どうしよう?」と少し悩んだんですけど、映画を観たときに感じた別の印象を記憶の中から引っ張り出して、それで作り直したけど「やっぱり違うかも……」となって、フィードバックが返ってくる前にサビのメロディを作り直し、さらにコード進行も後から変えたら、「コード進行は前の曲のほうがいい」と言われ、そこだけ元に戻したバージョンがリリースされることになりました。
中村 なるほど。そんな経緯があったんですね。
川谷 だからこの曲は、僕だけの力ではなく監督をはじめ、製作サイドの声を参考にしたことで到達した境地でもあるんです。
吉岡 そんな話を聞くと、ボツになったという曲もめっちゃ聴きたくなります(笑)。
川谷 実はレコーディングしようかなと思っているんだけど、思いっきり「ハケンアニメ!」の歌なので、どう仕上げようか悩み中です。
中村 この曲、冒頭のリズムと歌の絡み方が少し変わってますよね。微妙にズレているというか、リズムが後ろにいっている気がして。どうやって作って、どうやって演奏しているんだろうと聴くたびに不思議な気持ちになる(笑)。そういうのもきっと狙って作られているんでしょうけど。映画もオープニングが大事なように、楽曲もイントロで決まるじゃないですか。そういう意味では、まんまと仕掛けにハマっちゃいましたね。
川谷 イントロのリズムがヘンなのは、最初のバージョンがボツになって、そのあとの最初のパターン1の歌に合うように作ったからなんです。
中嶋イッキュウ(ジェニーハイ) 本当だ。言われてみれば、譜割が全然違う!
川谷 それに合わせてオケを作ったんですけど、メロディを変えて入れてみたら、微妙にずれている感じが面白いというか。狙っていたら作れないような雰囲気になったので、それをそのまま残すことにしたんです。こうやって自分が想像していたのと違う方向に曲が進んでいったほうが、この曲の「私の想像が勝って あなたの感動になるまで」という歌詞にも合うかなと思ったんです。
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ジェニーハイに「あんがとな!」を贈りたい