BUMP OF CHICKENの音楽が寄り添ってくれた
──はるさんはどんなふうに音楽に目覚めたんですか?
はる 小学生の頃、iPodにお父さん選りすぐりのアルバムをいっぱい入れてもらって、その中にBUMP OF CHICKENの「jupiter」があったんですよ。そのアルバムを延々とリピートして聴いてロックに目覚めました。で、高校3年生のときにコロナ禍が重なったんですけど、家にいても暇だし、受験生だったけど勉強もしたくなくて。そんなときに、お父さんの部屋にあったギターを勝手に持ち出して、弾き語りの練習を始めたんです。ある程度弾けるようになった頃にインスタに動画を上げてみたら、意外といいねが付いて、そこからどんどんと「自分も聴くだけじゃなく、演奏する立場になれるんだ」という気持ちが大きくなっていきました。バンドをやりたいと思ったきっかけは、自分と同じように弾き語りをインスタに上げていた人がバンドを組んで有名になっていくのを見て、その姿にすごく憧れたこと。その人は自分と同年代だったから「負けてらんないな」とも思ったし。それで「自分で曲を作ってバンドでやりたい」と考えるようになったんです。
──BUMP OF CHICKENはどんな部分が好きだったんですか?
はる 恋愛の曲ばかりじゃなくて、いろんな捉え方ができる曲がいっぱいあること。あと僕は「大丈夫だよ」とか「がんばろうぜ」とか、そういう背中を押すようなことを直接的に表現する曲があまり好きじゃない。BUMP OF CHICKENはそうじゃなくて、横に並んで話を聞いてくれるような感覚の音楽だなと思ったんです。それが当時の自分にすごく刺さったんですよね。
──「直接的ではない」という部分は、はるさんが書く曲にも通じていますよね。
はる そこはかなり意識しています。性格悪いと思われるかもしれないけど、「がんばれ」とか「大丈夫だよ」と歌われても、「いや、俺の何を知っとんねん」と思っちゃうんですよ(笑)。だから自分でも無責任な言葉は歌いたくない。あの頃、自分を救ってくれたBUMP OF CHICKENのように、聴く人の横に並んで「俺もそう思ってるよ」と言ってくれるような曲を書きたいです。
はるが描く主人公たち
──さっきも少し言いましたけど、はるさんの書く歌詞には、報われていなかったり、何かが足りていないと感じていたりする主人公が多いですよね。今回リリースされるアルバム「Toy Box」の1曲目も、タイトルからして「一生片想い」という、満たされなさが明確に刻まれている。でも、それによって打ちひしがれているというよりは、「強い思いがあるんだ」という部分が伝わってくる感覚もある。なんで自分が書く歌詞は、こういうものになるんだと思いますか?
はる 自分に自信がないから、ですかね。「一生片想い」なんて、言ったら情けない主人公ですよね。でも、僕の頭の中にはそういう存在が出てくることが多い。自分の学生時代を振り返っても、クラスで目立つ存在でもなく、「青春を謳歌したか?」と問われても、自信を持って頷ける人間ではなかった。なので、自然と浮かんでくる主人公像に自分自身が入り込んでいる部分はあると思います。「一生片想い」は、モロ俺って感じがしますね(笑)。
──バンドでギターボーカルを担当していると華やかに見えますけど、学生時代はそんなこともなかった?
はる まったく(笑)。クラスの隅っこにいるタイプでした。
──メンバーの立場から、はるさんはどう見えていますか?
ちゅうじょう いやあ、はるさんは根暗だと思いますよ。
一同 (笑)。
ちゅうじょう 今日、取材があるので改めて歌詞をちゃんと見てきたんですけど、「マジで根暗だなあ」と思いました(笑)。でもアルバムの4曲目の「次の恋は実らないで」と7曲目の「相変わらず、愛変わらず」は、個人的にめっちゃ刺さって。ただ僕の恋愛体験に重なるってことなんですけど(笑)、自分がうまく言葉で言い表せなかった気持ちを、曲で言ってくれた感覚がありますね。きっとそう思うリスナーも多いんじゃないかな。
──「ルックアットミー」の歌詞で、「好きですって息を吸って吐いてみたく言えたならば テンプレートラブソングに心動かなかったかもね」と歌っているじゃないですか。はるさんにとってラブソングとはどんなものなのか、あるいは曲で歌われている「テンプレートラブソング」とはどんなものなのか、聞きたいです。
はる 「テンプレートラブソング」というのは、明確に悪い意味で使っていますね。さっきも言ったように僕は直接的な表現が嫌いだから、すっげえわかりやすい言葉で書かれているラブソングが好きになれない。ただ、本当はそこにうらましさも感じているし、テンプレートラブソングのように思いを伝えてみたいって気持ちもあるんだと思います。でも、それが言えないんだっていう。
同世代のバンドマンには負けたくない
──ちゅうじょうさんも共感したという、アルバムに収録される新曲「次の恋は実らないで」は、はるさんにとってはどんな曲ですか?
はる 僕、すぐに人と比べて嫉妬しちゃうんです。ただ、同世代のバンドマンに負けたらめっちゃ悔しいけど、ありえんくらいイケメンの俳優に負けても、別に何も思わない気がする。「もう手に負えません」って感じになっちゃって。そういう気持ちから派生して書いた曲ですね。僕らには珍しく男目線の曲なんですよ。このアルバムの中では、一番自分が出ているかもしれない。
──バンドマンには負けたくないって気持ちがあるんですね。
はる それはめっちゃあります。同世代には特に。いろんな面で負けたくない。
──裏を返すと、「バンドって、自分が悔しいと思えるものなんだ」と気付いた瞬間があるんですか?
はる ああ……バンドを始めるまで、がんばれたことがなかったんです。高校受験も大学受験も人並みにやったくらいだし、運動や部活でも努力した経験がなくて。今、バンドをやっているのが、自分の人生の中で一番素直に努力しているなと思えることです。学生時代は人と比べても最終的には「そりゃそうだよな。俺は負けるよな」と思っていたけど、ここまで努力してみると、人に負けるのってめっちゃ悔しいんですよね。それは23歳にして初めてわかったことかもしれない。
──自分にとって何が大切かを測るとき、意外と「悔しさ」は指標になるんですよね。「悔しい」という感情が芽生えて初めて、それが自分にとって大切な事柄だったんだと気付くこともある。
はる そうですよね。
──「次の恋は実らないで」は、音楽的にも新鮮な感じがしたんですけど、アレンジはどんなふうに考えましたか?
ちゅうじょう 僕らが最初に世に出した曲が「ラブレター」で、あの曲はシンプルなバンドサウンドだったけど、そこからだんだんと経験を積んで、曲にハモりを入れたり、ストリングスやピアノを入れたりするようにもなっていて。でも「次の恋は実らないで」は、「初心に戻ったバンドサウンドを、今の自分たちで鳴らしたらこうだよね」ということをやった曲だと思います。
──言われてみれば確かに、バンドの初心に戻っているけど、「ラブレター」の頃からはるか遠くにたどり着いていると感じます。
ちゅうじょう そうなんですよ。
過去の自分たちに気付かされた
──アルバムでは先ほど話に出た「タカラモノ」「アイラブユーが足りないの」という2つの初期曲を再録していますね。過去曲を改めてレコーディングするのはどんな経験でした?
はる 「アイラブユーが足りないの」を録り直すときに考えたのは、今の自分たちができることや、やりたいことを詰め込もうとすると、盛り盛りになっちゃうなって。3年前の「アイラブユーが足りないの」って、あの頃の自分たちはただ無我夢中で全力だったと思うけど、今の自分たちから見ると、そこにあるのは「無駄のなさ」なんですよね。聴く人に届けるために必要なものが、ここに全部入っているっていう。なので、最初はせっかく再録するんだから3年前のバージョンとは大きな変化を付けようとも考えていたんですけど、当時の自分たちが全力で作った「アイラブユーが足りないの」の無駄のなさをちゃんと生かすべきだよなと考え直しました。かなり過去の自分たちに勉強させられた再録になったなと思います。
──メジャーデビューというタイミングだし、いろんなものを付け足していくという発想もあると思うけど、結果的には再録も「次の恋は実らないで」も、どっちかと言えばバンドにとって大切なものを再確認するようなレコーディングだったんですね。
ちゅうじょう そう思います。「アイラブユーが足りないの」はリリースされてからずっとライブの定番曲になっているから、ライブアレンジにも近付けたし、逆に、「タカラモノ」の再録はストリングスやピアノをもっと足して物語性を生み出すことで、歌詞に没入できるアレンジにしたし。今、必要なことを考えたレコーディングだったと思います。
──さっき武道館という話も出ましたけど、ガラクタはこの先どうなっていきたいですか?
はる 昔自分を救ってくれたバンドみたいに、僕らの音楽を聴いた誰かがバンドを始めるきっかけになったらいいですよね。あと、常にカッコよくいたいです。……同世代のバンドよりは(笑)。
公演情報
ガラクタ Toy BOX TOUR 2026
- 2026年2月1日(日)北海道 Crazy Monkey
- 2026年2月13日(金)広島県 SIX ONE Live STAR
- 2026年2月15日(日)大阪府 Music Club JANUS
- 2026年2月18日(水)東京都 LIQUIDROOM
- 2026年2月23日(月・祝)福岡県 DRUM Be-1
- 2026年3月26日(木)愛知県 Zepp Nagoya
プロフィール
ガラクタ
はる(Vo, G)、こた(G)、ひろと(B)、ちゅうじょう(Dr)からなる4ピースバンド。“誰かにとってはタカラモノになる音楽を”というコンセプトのもと、2022年に愛知・名古屋で結成された。“SNS+恋愛”をテーマにした等身大な歌詞とポップなギターロックサウンドを武器に、音楽ファンの注目を浴びている。2025年12月発表の1stアルバム「Toy BOX」でユニバーサルミュージックからメジャーデビュー。2026年2月からは全国6都市を巡るツアー「Toy BOX TOUR 2026」を開催する。
ガラクタ (@garakuta_band_) | Instagram


