GALNERYUS特集|SYU、Masatoshi “SHO” Ono、YUHKIが語るメジャーデビュー20周年アルバム

2003年にアルバム「The Flag Of Punishment」でメジャーデビューし、昨年20周年を迎えたGALNERYUS。コンスタントなリリースや精力的なライブ活動の中、テレビアニメ「HUNTER×HUNTER」「RAINBOW-二舎六房の七人-」「曇天に笑う」の主題歌を手がけるなどヘヴィメタルバンドの枠にとらわれない活動で国内外にファンダムを築いてきた。

そんな彼らから届けられた新作は、昨年迎えたメジャーデビュー20周年を記念したオリジナルアルバム「THE STARS WILL LIGHT THE WAY」。先行配信曲「THE REASON WE FIGHT」「IN WATER'S GAZE」を含む全10曲入りで、メンバーが口をそろえて自信作だと語る充実した内容となっている。

音楽ナタリーでは本作の発売を記念し、約10年ぶりにGALNERYUSへのインタビューを実施。SYU(G)、Masatoshi “SHO” Ono(Vo)、YUHKI(Key)の3人に、バンドの歩みやアルバムに込めた思いを語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一撮影 / 斎藤大嗣

大きなファミリーになった

──前回ナタリーでGALNERYUSに取材したのは10年前、ちょうどデビュー10周年イヤーに突入したタイミングでした(参照:GALNERYUS「RELIVING THE IRONHEARTED FLAG」インタビュー)。あの時点でOnoさんとTAKAさんが加入して4年、5年近く経っていましたね。

Masatoshi “SHO” Ono(Vo) そう考えると、かなり長く居座ってますね(笑)。

──今回のインタビューではまず、前回の取材以降の10年を振り返れたらと思います。2014年以降でバンドにとって大きな変化は、まずドラマーのメンバーチェンジが続いたことではないでしょうか。

SYU(G) 自分たちとしてはメンバーチェンジはもちろん望んでいたことではなかったし、できればずっと同じメンバーで続けられたらと思っていたんですけどね。Jun-ichiさん(※初代ドラマー。2016年脱退)に関しては個人的な都合だったので、今も大阪でライブをしたら観に来てくれるくらい良好な関係が築けている状態です。Jun-ichiさんの脱退後、FUMIYA(※2代目ドラマー。2016~2020年在籍)が加入することになるんですけど、FUMIYAはそれまで一緒にスタジオに入ったりして、腕の立つドラマーだっていうのは重々承知していたので加入してもらって。でも、彼も個人的な都合で脱退せざるを得ない状況になってしまいました。で、現在参加してくれているLEAに関してはYouTubeで見つけたんですが、Jun-ichiさんの安定感とFUMIYAの瞬発力という、歴代ドラマーのいいところを全部持っていて。もともとGALNERYUSが好きでずっとコピーしてくれていた子だったので、すごく頼もしい存在です。

Ono LEAくんはオフィシャルモバイルサイトの沖縄限定ライブにも来てるんですよ。

SYU 当時、Onoさんに書いてもらったサインを、この間Xにポストしてましたよね。

YUHKI(Key) まあ、ただのファンですから(笑)。

GALNERYUS

GALNERYUS

──(笑)。ファンとしてGALNERYUSをずっと聴いていた人がメンバーになるということは、それだけバンドが長く続いているということですよね。

SYU 確かに。LEAがまだ10歳になるかならないかの頃に、このバンドは始まってるわけですし。それこそ、結成当時から応援してくれているファンが結婚して子供を産んで、その子がGALNERYUSファンになってくれたり、そういう現象も多々ありますからね。そう考えると、すごく大きなファミリーになったなと。

自信につながった2枚のコンセプトアルバム

──音楽面でこの10年を振り返ると、「UNDER THE FORCE OF COURAGE」(2015年)と「ULTIMATE SACRIFICE」(2017年)というコンセプトアルバムにチャレンジしたことは、バンドにとって非常に大きい出来事だったのでは? これまでも事前にコンセプトを用意してアルバム制作に取りかかっていたとは思いますが、1枚を通してストーリーを持つアルバムを作ったことは、それ以前と大きな違いだったのかなと。

SYU 10周年を越えて何をしていくか考えたときに、やっていなかったことをしたくて。アルバムを常にコンセプチュアルにすることは1stアルバム「The Flag Of Punishment」(2003年)のときから変わっていないんですけど、1曲目からラストまで全部のストーリーをつなげて制作したのが「UNDER THE FORCE OF COURAGE」と「ULTIMATE SACRIFICE」だった。この2作に関しては、自分たちでも本当に誇れるアルバムになったと心から思います。ただ、今同じことをやれと言われてもできないと思いますが(笑)。

YUHKI 本当に制作がしんどいんですよ(笑)。だけど、あの2枚を作れたのは自分にとっても大きな自信につながったし、GALNERYUSにとっても大きな進歩になったことは間違いないです。

YUHKI(Key)

YUHKI(Key)

SYU 普段の制作の場合、iPhoneの音声メモに残した曲のアイデアの断片をつなぎ合わせて曲として完成させて、アルバムとしてまとめ上げるんですけど、コンセプトアルバムの場合はまずタイトルを決めて、抽象的でもいいから「どういった雰囲気の曲」「どういった場面の曲」が欲しいかを最初に並べていくんです。制作においてそれが非常に効率的でしたね。

──Onoさんは15年近くにわたりGALNERYUSで活動を続けていますが、ハイトーンが求められるヘヴィメタルシンガーとしては加齢との戦いもあるのではないかと思います。

Ono 確かに走ったり飛んだり跳ねたりみたいな体力は落ちてきているけど(笑)、20曲とか30曲続けて歌うのは大丈夫なんですよ。「よく最後まで声が出ますね」と周りから言われることがあって、正直疲れてはいるけどライブの後半になって声が枯れちゃうようなことにはならない。先日、ANTHEMとイベントで一緒だったんですけど、マイクチェックで「は~っ!」って高音で叫んだら森川(之雄)さんから「マイクチェックも声高いんだね。BとかCとかまだ出るの?」と聞かれたんです。それで「実はFで歌ってるんですよ」って伝えたら、「大変だね……」と返ってきましたから(笑)。でも、それがGALNERYUSなので。GALNERYUSの曲を歌うときは緊張感が伴いますけど、自分のできる範囲でやれることを続けていきたいですね。

コロナ禍の苦しい記憶をそのままパッケージしたかった

──2020年からの数年は、GALNERYUSに限らずすべてのバンドがコロナの影響で思うように活動できない状況となりました。そんな中、GALNERYUSはスペシャルアルバムという形態で2作(2021年の「UNION GIVES STRENGTH」、2023年の「BETWEEN DREAD AND VALOR」)を発表しましたが、あれはコロナ禍で顔を付き合わせてフルアルバムをがっつり制作できなかったことも影響したんでしょうか?

SYU それも多少はあります。コロナ禍ならではじゃないけど、自分たちが感じている苦しい思いが世界中の人達と共通しているのだとしたら、それは記録として残しておく意義があるんじゃないかと思ったんです。だから、どういう心境でいたのかをわざと暗めの曲で表現したりしました。ほかのアーティストさんの中にはきっと明るい曲をあえて作る方も多かったと思うんですけど、僕らはそのまんまストレートに表現しました。

Ono 記録ですからね。過去を振り返ったときにGALNERYUSとしてこうだったとか、個人としてあの年はこうだったとか。

Masatoshi “SHO” Ono(Vo)

Masatoshi “SHO” Ono(Vo)

SYU 良くも悪くも、コロナ禍のGALNERYUSをパッケージすることはできたのかなと思います。

YUHKI その中でも自分は「HOLD ON」(「UNION GIVES STRENGTH」収録曲)という、「またみんなに会いたいよ」という前向きなメッセージを込めた曲を作っていて。

SYU 「WHATEVER IT TAKES (Raise Our Hands!)」(「UNION GIVES STRENGTH」収録)も前向きな歌詞だったもんね。ただ1曲目の「THE HOWLING DARKNESS」が聴き手に重くのしかかる、カオスな曲だったから、その印象が強いアルバムかもしれないね。

デビュー20周年アルバムで示すバンドの今

──そして2024年9月、バンドのメジャーデビュー20周年を記念したアルバム「THE STARS WILL LIGHT THE WAY」がリリースされました。オリジナルアルバムとしては2019年の「INTO THE PURGATORY」以来5年ぶりとなりますが、今回は巡り巡って清々しいまでの王道メロディックスピードメタルアルバムに仕上がりましたね。しかも、アルバムの流れも起承転結がはっきりしているから、60分を超える内容なのに気持ちよく楽しむことができました。

SYU ありがとうございます。作り始める前はもっと間奏が緻密な曲が多くなると予想していたんですけど、作り終えてみたら極めてストレートでキャッチーなアルバムになりました。ちょうどツアーの合間に曲作りをしていたから、そこも影響したのかな。あと、今回僕の曲に関しては変拍子が一切なくて、その要素はYUHKIさんの曲「IN WATER'S GAZE」にすべて凝縮されている。超絶中の超絶みたいな大サーカスのようなアレンジになっています(笑)。

SYU(G)

SYU(G)

──制作に臨む前、アルバムのテーマはあったんでしょうか?

SYU 20周年記念盤っていう名目がまずあったので、今までGALNERYUSでやってきたことをすべて詰め込めたらなとは考えたんですけど、僕らは「UNDER THE FORCE OF COURAGE」や「ULTIMATE SACRIFICE」みたいに濃厚なコンセプトアルバムもあれば、「VETELGYUS」(2014年)みたいなキャッチーなアルバムもあって、作品ごとにキャラクターが独立して存在しているんです。最終的にすべてを1枚に凝縮するのは難しい。なので、今回はスペシャルアルバム2枚を経てコロナ禍から復活したGALNERYUSじゃないけど、「これからもまだまだがんばってやっていくぞ」という意思表示と言いますか。ストレートな曲がずらりと並ぶことで、バンドとしていい健康状態が表現できたんじゃないかと思います。

YUHKI やっぱり年齢を重ねると、いろんな意味で勢いがなくなってくるわけですよ。でも、GALNERYUSの音楽性は変わらないわけで、SYUは遠慮なく速い曲ぶち込んでくる(笑)。そういう現実と向き合いながらも、初心に帰るような勢いやストレートさを表現したかったんです。