風男塾|卒業の日を前に 愛刃健水“青春の10年”に思うこと

初めて卒業を実感した日

──ニューアルバム「Funfare」のリード曲「青春」は健水さんの卒業ソングですが、この曲は寂しい気持ちを吹き飛ばすようなポジティブさに満ちていますね。

健水 はい。風男塾らしさもすごくありますし、この曲を卒業ソングとしてもらい、聴いたとき、俺は「迷うことはないな」って思いました。この曲のまっすぐな歌詞とメロディに、今までの気持ち、今思っている気持ちをぶつけたら、ファンのみんなに思いは届くだろうと。最初に聴いたときからファンの皆さんが喜んでくれるだろうという自信がありましたね。

──ミュージックビデオも、健水さんを送るためのサプライズパーティをメンバーが企てるという内容で。終盤には健水さんが涙をぬぐうような後ろ姿もちょっとだけ映っていましたが……。

健水 ちょっとどころじゃなかったんですよ!

一同 あはははは!(笑)

健水 最後のほうにはもう止められなくなって、ボロボロに泣いて帰りました。なんというか、初めてみんなで一緒に卒業を実感した日だったんです。

真咲 そうかもしれない。

健水 今までは横1列、隣に並んでいたメンバーと向き合って話していると、「あ、ここから離れるんだ」って客観的な目線になって、グッときちゃって……リアルな感情が詰まったMVになったと思います。お芝居をしてはいるんだけど、すごくナチュラルな自分たちが出ている気がする。

 ホントにこの日の撮影、めちゃくちゃ濃かったですよね。自分は4回目のMV撮影だったんですけど、後輩が入ったこともあって「成長した姿を見せないと」という思いもありました。何より、1日中みんなと一緒にいたので、後輩との仲もいっそう深まったんです。

柚希関汰

関汰 長時間の撮影だったんですけど、メンバーの皆さんとしっかり話せたのはこの日が初めてだったんです。撮影を終えて家に帰ってきたとき、「うれしかったな」という思い出でいっぱいになりました。俺は橙摩くんと2人でお菓子を並べるシーンがあったんですけど、2人きりだから緊張していて……。

橙摩 そうだったの?(笑)

関汰 だけど、すごく仲よくしてくれたのがうれしくて。完成したMVを観ても、みんなとちゃんと仲よくなれたことを感じました。また何年か経ってこのMVを観返したら「この日に仲よくなれたんだよな」って思い出すんだろうな……。

 そうだね。そして、終盤には健水くんを送り出すシーンがあるんですけど、直接言葉を交わさず「行ってきます」「行ってらっしゃい」って言い合うようなやりとりをするんですね。そんなやりとりはこれまで経験したことがなかったから、別れをその一瞬で感じて、健水くんの卒業をすごく実感してしまったんですけど……周りのみんなはすごくたくましい姿で立っていたんですよ。その姿を見て「これからもみんなとやっていける」と確かに思えてうれしくなりました。そこのシーンのみんなの表情は、ぜひ観てほしいです。

自分の使命

──そして、アルバムには健水さんの初のソロ曲「忘れ雪」も収録されています。作詞ははなわさんですね。

健水 はなわさんに「最後なのでよろしくお願いします」って自らお願いしたんです。どんな曲が来てもチャレンジとしてがんばらせてもらおうと思って、いろいろイメージしていたんですよ。「同じ時代に生まれた若者たち」みたいな感じなのか、「勝つんだ!」みたいな面白い感じなのか……明るい曲を予想していたんですけど、届いた曲はめっちゃバラードだったので、驚きましたね。ただ、風男塾にラブバラードを書くというのは、はなわさんにとってもチャレンジだったみたいなんです。なので、風男塾が今までしてこなかった表現方法でファンのみんなに気持ちを伝えるのが自分の使命なのかな、と思って。いろんな気持ちを持ちながら歌わせてもらいました。

──はなわさんが書いた歌詞については、どう思いましたか?

愛刃健水

健水 ラブストーリーではあるんですけど、はなわさんが書いてくれる歌詞って「この一文、どういう意味なんやろう」というフレーズがけっこうあるんですよ。この曲にも「ここってどういう意味なんやろう?」と思うところがちょこちょこあって。でもそれって、受け取り方が聴く人によって違う、解釈が何百通りにも増えるような部分なんだろうなと感じたんです。だから、自分が全部を解釈しようとするよりも、皆さんに解釈を委ねようと。歌ってみて「すごく深いな」と思いましたね。

──この曲を歌うとき、健水さんの頭の中にはどんな景色が思い浮かぶんでしょう。

健水 「忘れ雪」という言葉が美しいから、歌うときも「キレイなイメージを持とう」と意識してはいたんですけど、いざ歌ってみると思い浮かぶのは、ステージで歌っている自分でしたね。自分が一番長くいた場所は、ステージの上だったので。サイリウムの光とか、ファンの皆さんの声とか、そういうものを思い浮かべながら歌いました。自分はこれまで皆さんに支えてもらってきたので、この曲が届けばいいなという気持ちになりました。

真咲 さっき健水くんが「人によって受け取り方、解釈が変わってくる」と言っていたけど、ホントにそう思います。歌詞だけ見ると「悲恋のストーリーなのかな」と感じたんですけど、実際に健水くんが歌っているのを聴いたら、健水くんとファンの皆さんの関係性を歌っているようにも思えて、「なんかいいなあ」って。最後の「いつかキミとどこかで出会った時に 強がりじゃない笑顔で そう手を振るのさ」という部分も、いつかまた再会できるのかなと感じられる。それは健水くんが歌うからそう聞こえるんだろうし……だからこれからもこの曲は、健水くんのソロ曲として残してほしいなって思います。

橙摩 雪って冷たいものだけど、この曲ってすごく温かいんです。健水くんだからこそ、温かく愛を込めて歌えるというか……ライブでも、もう健水くんの表情1つひとつが優しくて。舞台袖から見た、健水くんが会場にいるお客さん全員の顔を見ている愛のこもった表情がすごく心に焼き付いています。

健水 いやあ……ありがたいです。

紅竜真咲

真咲 あ、あともう1つ、感想いいですか? 俺、メンバー同士の“関係性萌え”が好きなんですけど、健水くんの最後のソロ曲に、健水くんの唯一無二の同期である雪村涼真くんの「雪」という字が入っているのがいいなって。これは意図してのことなんですか?

健水 いや! 「忘れ雪」というワードをはなわさんが考えて、調べたら実際にある言葉だとわかってタイトルに付けたみたい。ただ、そこまで考えてないのにそういうふうに捉えられるってことにも、意味があるのかもしれないね。

 すごい。

──健水さん自身は、そういったことは心によぎりました?

健水 いやあ……それが、歌詞も彼に合うんですよね!(笑)

一同 あはははは(笑)。