ナタリー PowerPush - FreeTEMPO

逆指名トリビュート「COVERS」発売記念 MONKEY MAJIKメイナードとみちのく仙台ジモティ対談

半沢武志のソロユニット・FreeTEMPOが世に送り出した名曲の数々を、豪華アーティストがカバーしたアルバム「"COVERS" FreeTEMPO COVERED ALBUM」 が9月9日に発売された。この作品はいわゆるトリビュートアルバムとは異なり、彼が自分の曲を歌ってほしいアーティストにカバーを依頼するという、異色の逆指名カバー集。フランスの人気バンドTAHITI 80や空気公団、羊毛とおはな、MONKEY MAJIK、キセル、コトリンゴ、土岐麻子、paris match、曽我部恵一、冨田ラボといった、半沢からの指名を受けたジャンルレスな顔ぶれが参加し、それぞれの個性的な解釈によってFreeTEMPOの楽曲の新たな魅力を提示している。

今回ナタリーPower Pushでは「COVERS」にも参加したMONKEY MAJIKのメイナード・プラントを迎えて半沢との対談を実施。彼らの地元・仙台にて行われたこの対談では、トリビュートアルバムについての話はもちろん、2人の知られざる出会いのいきさつや、地方都市で音楽活動をするということ、そして大きく進化するであろう今後のFreeTEMPOの活動展開についても披露。仲のいい友人同士ならではの、リラックスしたトークが繰り広げられた。

取材・文/橋本尚平 撮影/古内聡一(若王子)

「なんで仙台にいるの?」って、結構聞かれるでしょ?

インタビュー写真

──2人は昔からの友人ということですが、これまで対談の経験はありましたか?

半沢 取材では初めてですね。

メイナード よくラジオ番組とかには出るんだけどね。でも最近ぜんぜん会ってないよー。最近どうしてるの?

半沢 ブレイズ(MONKEY MAJIK)には最近よく会うよ。おとといも近所の神社でお祭りがあったのよ。そこで焼き鳥とか食べてたらブレイズがいて(笑)。

メイナード そうなの?(笑) そっか、たぶんブレイズの家すごい近いよ。

半沢 あっ、そうなんだ。

メイナード 僕は家がちょっと遠いから、全然街のほうに出てこないんだよね。レコーディングしにスタジオに行くくらいかな。でも結局家のスタジオで何でもできちゃうんだよ。そうでもない?

半沢 んー、そうでもないかな。東京でも作業してるし。

──東京にもスタジオを借りてるんですか?

半沢 いや、ちゃんとしたスタジオは仙台に作ってるから。東京のほうはゲストミュージシャンのレコーディングとかミックスで入るくらいだから、ポイントで行く程度。

メイナード 似てる。MONKEY MAJIKもblanc.(メイナードのソロプロジェクト)もだいたい基本はこっちのスタジオで作ってて、東京でやるのはミックスとか最後の調整ぐらいかな。半沢さんの場合はゲストボーカルがいっぱいいるから、東京に限らず韓国とかあちこちでレコーディングやんなきゃいけないよね。

半沢 そうだね。だからイベントやってなくてもいろいろ地方に行くでしょ。そうするといろんな曲が頭に浮かんだりとかするわけですよ。で、それをレコーダーとかケータイとかでメモる感じなんだけど、でも最終的に仕上げるっていうことになると、やっぱり落ち着いてできるのは仙台なんだよね。もうそこじゃないと落ち着かないっていうか、落ち着かないものができそうな気がしてなんか嫌。

メイナード 完璧に一緒だなあ。もっとオリジナルな意見が言いたかったんだけど(笑)。結構聞かれるでしょ? 「なんで仙台にいるの?」って。

半沢 あー、言われる言われる(笑)。

メイナード みんな理由を探すの好きだからね。でも答えなんてないでしょ? 聞かれるのは嫌じゃないんだけど、面白く答えられなくていつもがっかりさせてる感じがするよね(笑)。

半沢 はっきり言うとよくわからない。僕は生まれた頃から30年ぐらい宮城県にいるから、吸いなれた空気があってリラックスできてるっていう部分はちょっとあるけれど。でも逆に言うと、もし東京に住むようになったら情報がいっぱいありすぎて惑わされそう。今の仙台ってちょうど情報がふるいにかけられて必要なものしか届かないから、それでいいかなあ、みたいな。

メイナード 別にほかの街の悪口言ってるんじゃなくて、ホームってそういうもんなんだよね。いろんな地方に行くのはすごい楽しいし、だけどホームに帰るとやっぱり落ち着くっていう。でもねえ、10年くらいしか住んでない僕より半沢さんのほうがぜんぜん宮城県エキスパートだから。

半沢 ははは(笑)。

メイナード うちのドラムのtaxも仙台出身でさ。自分の本当の地元を選んでずっと住み続けたいっていうのはカッコいいなと思いますね。

半沢 いや年月じゃないよ。そこでどういうことやって、どういうこと感じてるかだから。僕は30年のうち20年はボーっとしてるからね。FreeTEMPOやってきて10年経つけど、20年間何やってきたんだろう(笑)。

出会いのきっかけとなった名曲「Sky High」

──FreeTEMPOが2003年に発表した1stアルバム「The World Is Echoed」でメイナードさんが数曲歌ってるんですよね。このきっかけは?

半沢 2曲目の「Sky High」ってトラックを作ったときに、ボーカルは外人の男の人がいいなって思って。でも仙台にはいないだろうなーって考えてたら、たまたま前のマネージャーが「MONKEY MAJIKっていう外人ボーカルのバンドが仙台にいるらしい」っていうのを聞いたので、ライブを観に行って。

メイナード ああ、そうだね。観に来てくれたね。

半沢 挨拶して、曲を聴いてもらったりして、じゃあちょっとやってみましょうかって話が進んだんだよね。

メイナード あーいいねえ、みたいな。当時MONKEY MAJIKってロックしかやってなかったんだけど、僕らにとって表裏みたいな、こういう落ち着いたハウスミュージックも良いなあと思ってて。ちなみにそのデモって半沢さんが歌ってて、それまだ持ってるんですよ。売っちゃおうかな~(笑)。

半沢 あははは(笑)。

メイナード そのデモすごく良かったんですよ。このままでいいじゃーん? ってくらい(笑)。だから半沢さんが歌ったデモの声の雰囲気をキャプチャーしたいなと思って、MONKEYのロックなボーカルとは違う、ちょっとエロいスタイルでいってみたんです。歌い終わってボーカルブースから出たらマネージャーさんが「すごくエロい……」って言ってくれて、そこで初めて「あっ、落ち着いて歌っても気持ちいいんだ」って気付いたんです。半沢さんのおかげで新しいキャラクターができたんですよ。

半沢 僕がそのときメイナードについて思ったのは、ボーカルに対しての応用力だったりイメージ作りだったりが、MONKEY MAJIKでの活動によってもうすでにできてる人なんだなってこと。声も当然良いんだけど、例えば「Sky High」を歌ってもらうのに「空のイメージで」ってお願いすると、それをシンプルに飲みこんで解釈してくれて。歌録りしたのって2回ぐらいだよね? こういう人が仙台にいてくれて本当にうれしいなって思った。すごく身近なところにこんな人がいるってのは、運も良かったのかもしれないけど。

メイナード でもね、最高の作品ができるのはLUCKだけが理由じゃないと思うんだよね。僕はこの曲を聴いたときにとっても感じるものがあって、「これは中途半端にはできない」って思った。こんな素敵な曲のボーカルに自分が選ばれただなんて、これはマジメにやんなきゃマズイなって。2回ぐらいでOKが出たって言うけど、実は歌録りまで1週間ぐらい毎日すごく練習してイメージしてたんだよ。もしかすると今まで一番真剣にやった楽曲じゃないかなあ。って、そんなこと言ったら怒られるけど(笑)。

半沢 知らなかった……。そんな努力が……。

メイナード はっはは(笑)。いやいや、努力だけの人ですから。そういえばさ、「The World Is Echoed」が発売される前にMONKEYが最初に出したEPに、実は半沢さんのストリングスアレンジが入ってるんだよね。誰も知らないだろうけど。

半沢 それあんま覚えてないんだよね……。

メイナード そうそう、たぶん覚えてないよ。俺も忘れてたし(笑)。半沢さんから最初に声かけてもらって、一緒にやろうねーって話してたとき、まず先にちょっとストリングスのアレンジしてくれないか? ってことになったの。そのCD、仙台限定で1000枚しか出してないから、いまeBayで買うと5万円ぐらいするんだよねー(笑)。

半沢 自慢気だね(笑)。

“COVERS” FreeTEMPO COVERED ALBUM / 2009年9月9日発売 / POLYDOR

  • 初回限定盤[2CD] 3300円(税込) / POCS-9006/7 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 [CD] 2800円(税込) / POCS-1029 / 初回限定盤が終了次第、通常盤に以降
DISC1 "COVERS"
  1. HARMONY / TAHITI 80
  2. Birds / 空気公団
  3. Kindly / 羊毛とおはな
  4. Trees / MONKEY MAJIK
  5. You and Me / キセル
  6. Stars / コトリンゴ
  7. Universe Song / 土岐麻子
  8. Feeling / paris match
  9. Sky High / 曽我部恵一
  10. TIME & LOVE FreeTEMPO ver. Tomita Lab Remix / Tomita Lab
DISC2 "WORKS" (BONUS CD / 初回盤のみ)
  1. POWER OF LOVE feat. MINKI LEE / FreeTEMPO × SHEEAN
  2. Last Letter FreeTEMPO Remix / 青山テルマ
  3. RADIO / 半沢武志 (FreeTEMPO)
  4. Lovespace FreeTEMPO Remix / 名取香り
  5. 月の裏で会いましょう (Let‘s go to the darkside of the moon) / bird (オリジナル:ORIGINAL LOVE)
FreeTEMPO(ふりーてんぽ)

アーティスト写真

アーティスト/DJ/リミキサーの半沢武志によるソロプロジェクト。仙台を拠点として活動を行っている。ボサノバやAOR、ハウスの要素を取り入れたクラブミュージックが特徴で、クラブ系音楽ファンを中心に好評を博している。また、日本だけでなく海外でも高い評価を受けており、イタリアのIRMA RECORDSからのリリースも行っている。