FOMAREがsmall indies tableより初の全国流通盤「If I stay」を12月6日にリリースする。音楽ナタリーではこれを記念して、small indies tableに所属するyonige、KOTORI、FOMAREのフロントマン3名と、レーベルの創設者である渡辺旭氏（THE NINTH APOLLOほか主宰）、鈴木健太郎氏（REDLINE主宰）による座談会を企画。3組の魅力やsmall indies table立ち上げの理由、レーベルの目指すところなど、ざっくばらんに語り合ってもらった。

取材・文 / 小林千絵　撮影 / 草場雄介

yonigeをリリースするためにレーベル設立

──最初に鈴木さんと渡辺さん、small indies tableを設立した経緯を教えてもらえますでしょうか？

鈴木健太郎　とあるバンドのライブの打ち上げで、牛丸（ありさ / yonige）に「女の子の逆襲」っていうデモをもらって。普段はもらった音源って聴かないんですけど、そのときはたまたま聴いたんですよ。

渡辺旭　へえ、普段聴かへんのや？

鈴木　はい。でも、そのときはなんでかはよくわかんないんですけど聴いて。そしたらそれがめちゃくちゃよかった。フレーズやメロディがキャッチーだし、ストレートでどこか毒のある歌詞はリスナーの共感を呼ぶと思った。で、すぐ旭さんに「（THE NINTH APOLLOから）リリースしないんですか？」って電話したら「リリースはしたいけど、THE NINTH APOLLOから出すのはちょっと違うんだよね」って言われて。「じゃあ一緒にレーベル作りますか」と。だからsmall indies tableはyonigeの作品をリリースするために作ったレーベルなんです。

──渡辺さんはsmall indies table設立前からyonigeのことをずっと見ていたと思うのですが、渡辺さんがyonigeに惹かれたポイントはどこですか？

渡辺　カリスマ性と呼ぶんか、もしくは金の匂いって呼ぶんかわからんけど（笑）、リハで牛丸が歌ってるだけで「おお」って感じる何かがあった。コンテストとか落ちまくってたんやけど、yonigeを見て「お！」と思わない音楽関係者の感性がわからなかった。

──でもsmall indies table設立までリリースしなかったのは「THE NINTH APOLLOじゃない」という気持ちがあったから？

渡辺　そうやね。

──その「yonigeはTHE NINTH APOLLOじゃない」という判断はどういったものからだったんですか？

渡辺　うーん……牛丸とも話したけど、なんかナインスじゃないよな？

牛丸ありさ（yonige）　はい。私的にTHE NINTH APOLLOは男臭い男たちだけでいてほしくて。だから私たちは違うなと思いました。ナインスは大好きだけど。

ギラついた目をしたKOTORI

──ではKOTORI、FOMAREと所属バンドが増えていった経緯を教えてください。

鈴木　KOTORIは俺がYouTubeでめちゃくちゃディグってた時期に見つけたんです。たまたま「19歳」のライブミュージックビデオみたいなのが上がってて……クソダサいヤツ（笑）。

横山優也（KOTORI）　僕的にはめちゃくちゃ「キタ！」っていう出来でしたけどね（笑）。

鈴木　でも「曲がカッコいいな」って思って、ライブを観に行って決めました。初期衝動と言うか……自分が初めてGOING STEADYを観たときみたいな衝撃を感じたんですよね。ライブの演奏は荒削りで、歌もまともに歌えてなかったんですけど、メンバーの姿勢とかギラついた目にグッときた。

横山　いきなり「事務所来て」って言われたので「どんな話なんだろう」と思いながら行ったら「CDいつ出す？」って言われて……即決でした。

──渡辺さんはKOTORIにどういう印象を？

渡辺　第一印象は「立ち位置ヘン」やったな。

横山　最初、ベース（佐藤知己）が真ん中で、僕が上手だったんですよね。

渡辺　そう。だからすぐ健太郎に「立ち位置変えたほうがいいよ」って言ったもんな。このバンドは横山を真ん中にするだけで大丈夫だと思った。だからホンモノなんやなって。

──“ホンモノ”というのは曲がよかったとかそういうことですか？

渡辺　うーん……曲のよし悪しでバンドを判断することはないんよなあ。

──では何が“ホンモノ”だったんですか？

渡辺　オーラ？ 横山と牛丸には黄色いオーラがある。口では説明できへんけど、なんか光るものがあってん。第一印象はそれで、今のKOTORIは若手バンドの中で一番カッコいいライブをしてるんちゃうかなと思う。

──KOTORIをTHE NINTH APOLLOからリリースするという案はなかったんですか？

渡辺　まったくなかった。KOTORIはsmall indies tableがしっくりきたなあ。

鈴木　そうっすね。旭さんと話し合ってるわけじゃないけど、個人的にsmall indies tableは土臭くて、どこか毒があるバンドが所属するレーベルかなって思っていて、そこにKOTORIはぴったりだった。

──横山さんはsmall indies tableにどういうイメージを持っていましたか？

横山　yonigeがいるレーベル。当時いくつかのレーベルから声をかけてもらってたんですけど、全部メールを無視してたんです。でも健太郎さんはライブを観に来てくれたし、調べたらyonigeがいるレーベルで。僕らは無名バンドだったので、とりあえず知名度が上がるレーベルに入りたいなと思って、small indies tableに決めました。