ナタリー PowerPush - FOLKS

北海道を席巻中!恵庭市在住、新世代バンド

北海道恵庭市のニュータウン恵み野から吹いてきた一陣の風。弟・岩井郁人(Vo, G)と兄・豪利(G, Vo)を中心とした5人組がFOLKSだ。昨年3月発売の自主制作盤「Take off」に続いてリリースされるミニアルバム「NEWTOWN」でメジャーデビューを果たす。

アコースティックとエレクトロニックを巧みに融合させ、繊細で美しいレイヤーを重ねることでにじみ出るエモーショナルで美しいアンサンブル。郁人の甘いボーカルと、浮遊感のあるコーラスワークが見事にマッチし、とてもデビュー作とは思えない完成度の高いサウンドを作り出している。それもそのはず、郁人と野口一雅(B, Cho)は、元Galileo Galileiというキャリアを持っているのだ。しかし彼らのサウンドは、まっさらの新人のようにみずみずしい。

今回の取材は、北海道以外での初ライブとなった東京でのイベント出演の翌日に行われた。

取材・文 / 小野島大

ライブは「再現する場所」じゃない

──昨日はめちゃくちゃ緊張しているように見えました(笑)。

FOLKS

一同 (笑)。

岩井郁人(Vo, G) すげえ意気込んでやって来て。東京のシーンの中で田舎者の僕らがどう見えるのか。すごく楽しみでもあり、恐怖でもあり。でも爪痕残してやるって気持ちでやってました(笑)。

──手応えはありました?

郁人 そう、ですね……自分たちも楽しかったし、お客さんの顔を見たら、ポカーンとしてる人もいたけど、逆にそれがすごくうれしくて。観てない人はいなかったし、つまんなそうな顔してる人もいなかった。なので僕らのことを知ってもらうという意味ではよかったと思います。

──ライブでは、曲によってはドラムスとパーカッションを含め3台の打楽器を鳴らして、かなりリズムを強調してましたね。

郁人 ええ。自主制作盤の「Take off」の段階から一番変わったのは、楽曲に対する解釈なんです。ライブをやることで、よりリズミカルにしたほうがいいなと思った曲もあったし。リズムの強い曲がもともと好きなんです。ブラックミュージックとかファンクとか。最近のEDMも好きだし。とにかくめちゃくちゃいっぱいいろんなものを聴き漁ってて。じゃあ自分たちが鳴らすべき音楽はなんだって、みんなで話し合って、そこからいろんなエッセンスを取り入れてたりしています。

──ライブを経験して具体的に気付いたことって?

郁人 実際にライブでやってみると、この音が鳴ってるかどうかでライブでのお客さんの動きが全然変わるとか、このリズムじゃ全然ノレないなとかあって。曲作りするときに、ライブのことをまったく考えてなかったんですよ。

──自主制作盤を作る前はライブをやってなかったわけですか。

郁人 やってなかったんです。「Take off」のリリースライブが初めてで。それまではヘッドホンで聴いて、音の空間とか質感を楽しむってことに重きを置いてたんです。楽曲のアレンジのクオリティとか。生演奏でお客さんと共有するってことを考えてなかった。だから最初の頃はライブっていうのは「再現する場所」って考えてて。バンドで演奏するときも、楽曲が一番基礎にあって、それを再現することが素晴らしいことだって思ってた。でもいざライブをやってみたら、全然お客さんはノッてくれないし、お客さんに響いてる気がしないんですね。なんかおかしいなと(笑)。それでいろいろ試行錯誤していく中で、楽曲をライブアレンジしてみたり、パーカッションのバランスを変えてみたり、ちょっとノリを変えてみたり、BPMを変えてみたり。いろいろ試してみて、たぶんそれが「NEWTOWN」にはフィードバックされています。

1人の「Take off」から5人の「NEWTOWN」へ

──「Take off」と「NEWTOWN」で一番違うのは録音ですよね。音が前に出てきて迫力が出て、生き生きしてる。

FOLKSの地元である北海道恵庭市恵み野の風景。

郁人 そうですね、はい。すごく聴きやすくなってると思います。

──そこらへんもライブを経て経験したことが反映されてる?

郁人 それもありますし、あと「Take off」のときはミックスを自分でやったんです。誰にもお願いできなかったし、したくなかったので、自分で全部やったんですけど。でも僕1人の作品だった「Take off」が「NEWTOWN」で5人のものになったんです。みんなから「この音はもうちょっとこうしたほうがいいんじゃない」みたいなアドバイスをいろいろもらって。

──あ、「Take off」は郁人さん1人で作ったんですね。

郁人 そうです。兄ちゃん(岩井豪利)の曲も入ってますけど、僕がアレンジしてミックスもして。

──じゃあ実質的にソロに近い。

郁人 そうですね。個人的な作品ではあったと思います。でもそれをみんなで共有してライブで表現する中で思わぬ解釈が出てきて。もっともっとたくさんの人たちに聴いてもらうにはどうしたらいいんだろうって考えたし、集客するためにはどうしたらいいのか考えたときに、やっぱりもっと客観的な作品であるべきだと思いましたね。

──客観的な作品?

郁人 いろんな人に響くっていうか。「Take off」は僕が好きな作品で、僕が聴くために作っていた部分もありました。なのですごく主観的な作品だった。でも僕も、ほかの人もいいと思う作品を作りたい。なので今回はミックスエンジニアを益子(樹)さんにお願いしてすごく正解だった。ディレクションも僕1人でやったわけではなくて。メンバーそれぞれがクリエイターで曲を作れるので、みんなの視点でやってますね。「Take off」のときは歌も自分1人で録って、ディレクションも全部自分1人でやってましたから。でも今回はメンバーにやってもらいました。

──じゃあ今作こそが、バントとしての真の初めての作品であると。

郁人 完全にそうだと思います。

メジャーデビューミニアルバム「NEWTOWN」/ 2014年2月12日発売 / Ki/oon Music / KSCL-2354
[CD] 2310円 / KSCL-2354
収録曲
  1. Everything is Alone
  2. Two young
  3. FOREVER
  4. Good-bye, friends
  5. River
  6. You're right
  7. Replica
FOLKS(ふぉーくす)

2013年1月に結成された岩井郁人(Vo, G)、岩井豪利(G, Vo)、高橋正嗣(Programming, Syn, Cho)、野口一雅(B, Cho)、小林禄与(G, Syn, Per, Cho)からなる5人組。メンバー全員が楽曲制作を行い、ライブではサポートドラムを加えた6人編成でパフォーマンスを行う。2013年3月に初ライブを開催し、同月に自主制作盤「Take off」をリリース。一般公募枠で「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO」にも初出演し、北海道内で着実にその名を広める。2014年2月にキューンミュージックよりメジャーデビューミニアルバム「NEWTOWN」を発表。なお岩井郁人と岩井豪利は兄弟で、メンバー全員が北海道恵庭市にある新興住宅地「恵み野」に住んでいる。