flumpoolが自分たちの役割を再確認、20周年に向けて放つ「Shape the water」 (2/2)

メロディメイカーとしての阪井一生の才能

──アルバムの冒頭3曲はコライト楽曲になっています。2曲目は釣俊輔さんと作られた「アラシノヨルニ」です。

阪井 これも同様に、まず釣さんに軸となるものを先に作ってもらって、そこに僕がメロディを乗せ、全体的なアレンジを構築していく流れで。やり方は基本的に「Keep it up!!」と一緒。ただ、こっちは最初に完成形のイメージを共有するのではなく、釣さんからもらったものに乗っかった感じかな。その結果、“Theバンド”な雰囲気というか、王道のギターロックな仕上がりになりました。アルバムにそういうテイストの曲があってもいいなとは思っていたので、バッチリでした。

──コライトで作られた楽曲は、メンバーとしてもいつもとは違う雰囲気を感じる部分もありますか?

阪井 どうなんやろう。感じてくれてる?

山村 新鮮さはもちろん感じます。ただ、メロディ自体は一生が作っているものなので、「flumpoolやな」という感覚は絶対外してこないんですよ。

阪井 あー確かに確かに。

山村 そんな中で、阪井一生が持っているメロディメイカーとしての才能を改めて強く感じたところはありましたね。コライトによって、そこがより際立って感じられたというか。

──うんうん。今回は一聴してグッと入ってくるメロディの強い曲ばかりですもんね。

阪井 あ、本当ですか。それはうれしい(笑)。

阪井一生(G)

阪井一生(G)

──3曲目の「Love's Ebb and Flow」はUTAさんとのコライトで生まれた曲です。

山村 これはまた別のやり方やったよな。

阪井 そう。これは僕が作ったデモをUTAさんに崩していってもらったんですよ。2番から急に展開が変わる流れとかを作ってもらって。自分にはない素晴らしいアイデアをいただけました。こういうタイプの曲はアルバムならではやと思うんですけど、山村の声が一番ハマるんですよ。年齢も40歳になったというのもあるし。大人でグルーヴィな感じがより似合うようになってきたなと。(尼川)元気さんのベースもだいぶカッコいい曲やしね。

山村 歌について一生はそう言ってくれるんですけど、自分だとあんまりわからないんですよね。どういうことなのかなって。

阪井 ちょっとザラッとした感じというか。こういう歌いっぷりは得意だと思うけどな。

──ちょっとブラックミュージックを感じさせる歌になっていますよね。flumpoolのレパートリーには多くないタイプだけど、めちゃくちゃカッコいいと思いました。

山村 8ビートで歌うよりは確かに歌いやすいところはありますけどね。ちょっと独特なグルーヴだからこその歌いやすさというか。

阪井 やっぱりエロいからやろ、声が。エロさがちょうどいいのよ(笑)。

山村 イヤな言い方やな。ちょうどいいエロさって(笑)。

──そこって山村さんのルーツが影響している部分もあるんですかね?

山村 いやー全然ないですよ。むしろそういう音楽はあんまり通ってない。

阪井 でもTHE YELLOW MONKEYとかさ。

山村 ああ、確かに。影響を受けてるとか言うのはおこがましいですけど、吉井(和哉)さんの息遣いとか、音を点ではなく線でなぞっていくような、まさにエロい歌い方はすごく魅力的だなと思いますね。それが自分にできているかはわからないし、得意かどうかもわからないんですけど。まあでもそこをメンバーである一生が感じ取ってくれているのは純粋にうれしいことです。

flumpool

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羽田空港にひたすら通って作詞作業

──山村さんは今回もすべての歌詞を手がけていますが、作詞作業はいかがでしたか? 「形のないものに形を与える」という大きなコンセプトがあるうえで、さまざまなシチュエーションの中で多様な思いをつづられていますよね。

山村 楽しさもありつつ、さっきも言ったように届くかわからない中で書くということに対しての重圧もすごく大きくて。一生が作るメロディには、それがどんなにロックなサウンドであっても、根っこには歌謡曲的な耳馴染みのいいキャッチ―さがあるから、そこに言葉を乗せられる幸せを感じつつ、でもふさわしい言葉を選べなければそれを台無しにもしてしまうわけだし。だから今回は一生のメロディが呼んでいる言葉を選ぶことを特に意識しましたね。そのうえで1つ、歌詞を書く場所にもこだわったんですよ。外国人に囲まれながら歌詞を書くっていうことに挑戦して。

山村隆太(Vo、G)

山村隆太(Vo、G)

阪井 どういうこと? どういう状況なん、それ(笑)。どうやったらその状況になるの、まず?

山村 空港に行ったり、観光地に行ったりとか。

──なぜ外国人に囲まれて書こうと思ったんですか?

山村 目の前にいる外国人の方たちのように、言葉がわからない人が聴いても同じ感情になってもらえるような歌詞を書きたいと思ったんですよ。一生のメロディには国籍も関係なく伝わる力があると思うので、それを今度は僕が言葉で翻訳していく、というか。メロディが持つ感情が喜びなのか怒りなのか、それを僕が通訳できたらいいなと。洋楽を聴いていて、言葉がわからないながらも抱いた感情が、実際歌詞に書かれている内容とリンクする経験をしたことがあったので、自分たちの曲もそうなったらいいなと思い、まずは書く環境から変えてみたんです。羽田空港とかにひたすら通いましたからね(笑)。

阪井 確かに今作は全曲、メロディと言葉のハマりがよかったし、聴いててすごく気持ちいフレーズが多かったんですよね。「うんうん、こういう言葉がハマるよね」という部分を完璧にわかってくれてるなって、今までで一番感じました。歌詞の内容に関してはちょっと読解力がないので、すみません。

山村 なんでやねん! 外国人でも理解できるようにって話をしてたのに。なんで日本語知ってるお前が理解できへんねん(笑)。

阪井 まだ届いてへんよ。俺が理解できないんやから(笑)。

山村 まだまだかー(笑)。

尼川元気(B)

尼川元気(B)

このアルバムは自分への贈り物

──アルバムには山村さんが作曲を手がけた「夕日に染められて君は」も収録されていますね。

阪井 この曲はだいぶ温めたよね。出したほうがいいってずっと言ってたんですけど、イヤがり続け(笑)。

山村 いやもう、おこがましいですから。一生が作ってくれたいい曲がいっぱいあるので。

阪井 こうやってビビり倒してるんですよ。今回も最初は入れたくないみたいな感じだった。でも「今回、入れへんかったらもう無理やで。曲にも旬とかあるんやから」と説得して。

──どんなときにできた曲なんですか?

山村 前作「Real」に向けた曲作りのタイミングで、「NEW DAY DREAMER」と一緒の時期に作りました。バンド感のある曲とは違ったアコースティックな世界を持つ曲があってもいいなっていうことで挑戦してみたんですよね。

阪井 当時、(Naoki)Itaiさんとのコライトで作ったんよな。土台としての曲があって、そこにカラオケみたいにみんなが勝手にメロディを乗せて歌い回していくやり方で。自分も一回、その現場に行ったんですけど、だいぶ面白いやり方やなと思った。

小倉誠司(Dr)

小倉誠司(Dr)

山村 そのとき一生もちょっとメロディを出してくれたから、それも入ってるよね。まあ一生とは違うコンポーザーの曲が入っているという意味では、アルバムの1つのフックにはなると思うし、自分としてはすごく思い入れの強い曲でもあるので、収録できたのはうれしいです。箸休めと思って聴いていただければ(笑)。

阪井 なんでそんな自信ないねん! 自信持てよ。そこは「一番いいでしょ!」ぐらい言わなアカンやろ(笑)。

──あははは。柔らかで温かい山村さんらしい、本当に素晴らしい1曲だと思います。

山村 ありがとうございます。でもね、今回のアルバムは本当に自信あるんですよ。ここ数年、コロナ禍なんかもあったし、いつまで音楽が続けられるんだろうとふとしたときに思うことが多かった。でも、その思いが払拭できたというかね。本当に偶然だったんですけど、アルバムが完成したのが自分の誕生日の1月21日だったんです。そのときに、このアルバムが自分への贈り物であり、ここから20周年に向けて進むflumpoolへのプレゼントなんじゃないかなという気持ちになれて。こんなにいいアルバムができたなら、まだまだ音楽を続けていいよと言われているような気持ちにもなれたんですよね。それくらいの自信作になりました。

みんなでギュッと1つに

──本作のリリース後、5月には約10年ぶりとなるZeppツアー「flumpool LIMITED TOUR 2025『Shape the water』」の開催が控えていますね。

山村 最近の僕らはホールでのライブが中心になっていますけど、ライブハウスでの一体感、箱の中でみんながひとつになるような感覚も、やっぱりライブの醍醐味だと思うんですよね。15周年を経た今、インディーズ時代に大阪のライブハウスでやっていた頃の感覚を改めて求めていたところもあったのかもしれません。ホールとはまた違う、みんなでギュッとひとつになる瞬間を思い切り楽しみたいと思います。

阪井 アルバムの曲たちを初めて披露する場でもあるので、みんなのリアクションがすごく楽しみ。「意外にこの曲が盛り上がるんだな」とか、自分たちが想像していないことも起きたりするのがライブのよさだと思うんで、そこも楽しみですね。新曲が多いから緊張はしますけど(笑)。

──尼川さんと小倉(誠司)さんもライブに向けて気合いが入ってそうですね。

阪井 いや、ビビってんじゃないですか(笑)。今回の曲たちはけっこう難しいから。かなり練習しとかなヤバイ曲もあると思うんで。

山村 前回はベスト的な内容のツアーだったからな。そことはまた違ってくるよね。

阪井 そうそう。なので4人でマジにがんばって臨みます。じゃないと俺らが置いてかれる(笑)。

flumpool

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公演情報

flumpool LIMITED TOUR 2025「Shape the water」

  • 2025年5月11日(日)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2025年5月16日(金)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
  • 2025年5月17日(土)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
  • 2025年5月25日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2025年5月30日(金)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
  • 2025年5月31日(土)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)

プロフィール

flumpool(フランプール)

山村隆太(Vo, G)、阪井一生(G)、尼川元気(B)、小倉誠司(Dr)の4人からなるバンド。2008年10月に配信シングル「花になれ」でメジャーデビュー。2009年にシングル「星に願いを」のヒットで注目され、10月には初の東京・日本武道館公演、年末には「NHK紅白歌合戦」への初出場を果たした。2014年5月に初のベストアルバム「The Best 2008-2014『MONUMENT』」を発表。2017年12月より山村が歌唱時機能性発声障害の治療に専念することを受けて約1年間活動を休止し、2019年1月に活動を再開した。2021年に所属事務所のアミューズから独立し、2022年3月にはコンセプトアルバム「A Spring Breath」をリリース。デビュー15周年を迎えた2023年10月には日本武道館公演を開催した。2024年4月に「君に恋したあの日から」、6月に「いきづく feat. Nao Matsushita」、7月に「SUMMER LION」を配信リリース。2025年3月にニューアルバム「Shape the water」を発表した。