flumpoolインタビュー|デビュー15周年を経てさらに意欲的に、向上心燃やす4人が向かう先は (2/2)

今感じていることをしっかり形に

──15周年を経たflumpoolはツアーと並行して、新曲を続々配信されていたのも印象的です。

山村 そうですね。気持ち的にはもうアニバーサリーではなく、次のflumpoolに向けて動いている感じで。15年の中で作ってきた曲たちはどれも皆さんに愛していただいているし、僕らにとっても大切なものではあるんですけど、ずっとそればかりを歌っていくのもまた違うと思うんですよ。やっぱり今、自分たちが生きている時代に感じていることをしっかり形にしていきたい気持ちが強いんです。アニバーサリーを迎えたうえで次の曲を早く作りたくなっているのは、バンドとしていい循環をしているかなとは思いますね。創作意欲はこれまで以上に高まってます。

──では今年リリースされた楽曲について聞かせてください。まず4月に配信されたのが「君に恋したあの日から」です。

山村 この曲は今開催しているツアーのテーマ曲として作ったもので。15年という年月の中で得たものを1曲にしたかったんですよね。長い時間が経つことで変わっていくものももちろんあるけど、一方では変わらないものもある。その変わらないものとして、僕らとファンとの関係性も含めた、大切な人との絆をラブソングの形として歌おうと思いました。

阪井 さっきメンバーの関係性が15年で1周回ったという話をしましたけど、この曲でもそんなことをイメージしていたところはあって。15年の中でいろんな楽曲をリリースしてきたけど、ここではすごくシンプルに、4人だけでも演奏できるような曲にしたかった。いろんなものを削ぎ落として、シンプルにしていく過程では、「果たしてこれが正解なのか?」という自問自答もありました。でもメンバーが珍しく褒めてくれたし、結果的にすごくいい曲になったなと自分でも思えて。初心に帰れた感覚がありましたね。

尼川 珍しく褒めました。

阪井 珍しかったなあ、確かに。

尼川 シンプルでわかりやすいところがよかったんですよね。言ったら15年前の自分たちが聴いても純粋に「いいな」と思える雰囲気というか。そういうところに惹かれたんだと思います。

尼川元気(B)

尼川元気(B)

小倉 全体的にシンプルではあるけれど、ドラムとしては今までと違うパターンを盛り込んでいるところもあって。そこが自分としてはすごく楽しかったですね。初心に戻ったかのようなシンプルさを持ちつつも、ちゃんと今のflumpoolとしてのこだわりを注げているところがいいですよね。演奏していて楽しい1曲です。

──6月には、山村さんが出演された映画「風の奏の君へ」の主題歌として書き下ろされた「いきづく feat. Nao Matsushita」がリリースされました。

山村 この曲を作ったのは2年前くらい、コロナ禍でした。映画の撮影後に主題歌のお話をいただけたんですよね。俳優としては素人ながらも映画に出演させていただいた中で、自分の過去を振り返ることもあったし、価値観に対しての大切な気付きみたいなものがたくさんあったので、それを楽曲に落とし込んだ感じでしたね。

──そこで得たのはどんな気付きだったんですか?

山村 映画の舞台は岡山の美作という大自然を有する場所だったんですけど、そこで1カ月弱、住み込みでロケをする中で、自分はそこで見た景色の美しさを音楽として届けたかったことに気付いたんです。言い換えれば、流行りに惑わされることなく、時を経ても変わらないものを歌っていきたいというか。

──なるほど。その気付きが、人と人との関係性という普遍的なテーマを持つ「いきづく」の歌詞につながっていったわけですか。

山村 そうですね。ロケの休憩時間に裏山でボーッとしているとき、咲いている花や木々を風が揺らすのを見て、目には見えない風というものがカラダを手に入れたように思えたんですよ。それって僕たちが生きている中にある命や時間の流れも同じじゃないですか。それらは目には見えないものだけど、大切な何かに触れたときに形が生まれるというか。たぶん、人間は1人だけだと生きている実感を持ちづらいものだけど、そこに誰かという存在が現れ、介在してくれることで目に見えるようになるんですよね。コロナ禍ではそこがなくなってしまったから空虚な時間が続いたけど、今はまた以前のように大切な人との関係から生きていることを感じられるようになってきた。僕らにとって、それはファンの存在でもあるけど、そういう関係はやっぱり素晴らしいなと思うんです。大自然の中から学んだそんなことを、この曲の歌詞には込めましたね。タイトルは“生きることに気付く”という意味から、“いきづく”にしました。

山村隆太(Vo, G)

山村隆太(Vo, G)

──映画で共演された松下奈緒さんをフィーチャリングボーカリストに迎えたことで、曲に込められたテーマへの説得力が増していますね。

山村 そうですね。2つの声が1つに重なることで生まれる相乗効果は感じてもらえると思います。

阪井 曲作りは楽しかったですよ。女性とコラボする曲自体が初めてだったので、今までとは違う音域の幅でどうハーモニーを作り、声が重なり合うメロディを作っていくかとか、新しい挑戦ができたと思います。

──ちなみに山村さんが映画に出演されるのは初になるんですよね。

山村 そうですね。恐縮です(笑)。

阪井 尼川と誠司と僕の3人で公開初日に観に行きましたけど、やっぱりちゃんとは観れない感覚はあったかな。山村のことを近い距離で知りすぎているので(笑)。

尼川 そうやな。ギリギリで見てられへんかった。

阪井 ギリギリ見れたんじゃないんや。見られなかったんや(笑)。

小倉 自分は演技のことについてはまったくわからないですけど、今回の山村はすごく自然体で、物語の中にちゃんと馴染んでいる感じはしましたけどね。映画のストーリーも素晴らしかったし、「いきづく」が流れるタイミングも感動的でしたよ。

小倉誠司(Dr)

小倉誠司(Dr)

尼川 うん。映画はホンマにものすごくよかった!

山村 本当にいい作品になっているので、「いきづく」とともに楽しんでくれたらうれしいですね。

自分自身の心の声を解き放て

──7月3日には「SUMMER LION」がリリースされました。この曲は放送中のドラマ「ひだまりが聴こえる」のオープニングテーマとなっています。

阪井 この曲は完成させるまでにけっこう悩みましたね。夏のイメージを持つ楽曲としていろんなパターンを作ったんですけど、真っ昼間の夏感、パーッと広がりのある夏の曲というよりは、ひと夏の切なさを感じてもらえるような曲にしたい思いがありました。

山村 うん。で、ドラマの原作マンガを読んだうえで歌詞を書かせてもらって。主人公の大切な人が難聴を抱えていて、心を閉ざしてしまうというストーリーなんですけど、それは別に難聴を抱えていない人でもあり得ることじゃないですか。一番恐れるべきは自分自身の声さえも聞こえなくなることなので、この曲を聴いてくれた人たちが自分自身の心の声を解き放てるようになってもらえたらいいなと思いながら書きました。

──「SUMMER LION」というタイトルにはどんな意味を込めたんですか?

山村 歌詞の中では“太陽”と“向日葵”というモチーフを象徴的に使っていますけど、向日葵が太陽の光を追い求めるように、大切なものを求める自分の本能には蓋をしないでほしいなと思ったんです。で、本能や太陽というイメージからライオンの姿がパッと浮かんだ。向日葵もね、シルエット的にはライオンっぽかったりもするじゃないですか(笑)。で、そこに夏の曲であるという意味で“SUMMER”を付けてタイトルにしました。

──「Wake me up」とか「Knock, knock, knock」とか、ライブでのシンガロングが楽しみになるパートもありますね。

山村 そうですね。コロナ禍を経て、ライブでは一緒に声を出すということを大事にしたいと思ったので、そういう部分は意識しました。

──そして、7月14日の東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演で発表がありましたが、flumpoolは現在、ニューアルバムを鋭意制作中なんですよね。

阪井 今、まさにやってますね。今年はここまでに3曲を配信してますけど、アルバムではflumpoolとしてのコアな部分ももっと突き詰めたいなと。いろんな挑戦ができているからすごく楽しいですね。

阪井一生(G)

阪井一生(G)

山村 そうだね。「どんな曲がいいかな」とか、一生と細かくやりとりしながら作っていくのが楽しいです。

阪井 15周年を経て、初めてのアルバムという意味ではだいぶハードル高いけどね(笑)。でも、しっかり次のflumpoolを見せられるアルバムにしたいと思います。

小倉 プレッシャーを感じてしまうところもあるとは思うけど、一生の曲も、山村の歌詞も、どんなものが出てくるかが本当に楽しみ。で、僕や尼川はそれを最高の演奏で形にしていけたらなと。僕らが楽しんで作れば、ファンの方にもきっと楽しんでもらえる作品になるのは間違いないので。

尼川 現段階ではまだ1曲も聴いていないので、僕もファンの方と同じような感覚ですけどね。「どんなアルバムになるんやろう?」という(笑)。楽しみです。

山村 さっきも話しましたけど、目には見えない感情や命、絆に形を与えるのは誰かの存在がなくてはならなくて。僕らにとっての誰かは、間違いなくファンの方々なので、いろんな目に見えないものを、目に見えない音楽に込めて届けるので、そこに皆さんが形を与えてくれたらいいなと思います。アルバム、楽しみにしていてください。

プロフィール

flumpool(フランプール)

山村隆太(Vo, G)、阪井一生(G)、尼川元気(B)、小倉誠司(Dr)の4人からなるバンド。2008年10月に配信シングル「花になれ」でメジャーデビュー。2009年にシングル「星に願いを」のヒットで注目され、10月には初の東京・日本武道館公演、年末には「NHK紅白歌合戦」への初出場を果たした。2014年5月に初のベストアルバム「The Best 2008-2014『MONUMENT』」を発表。2017年12月より山村が歌唱時機能性発声障害の治療に専念することを受けて約1年間活動を休止し、2019年1月に活動を再開した。2021年に所属事務所のアミューズから独立し、2022年3月にはコンセプトアルバム「A Spring Breath」をリリース。デビュー15周年を迎えた2023年10月には日本武道館公演を開催した。2024年4月に「君に恋したあの日から」、6月に「いきづく feat. Nao Matsushita」、7月に「SUMMER LION」を配信リリースした。