フラワーカンパニーズ特集|作家・角田光代が語るフラカン愛 (2/2)

50代、フラカンが続けてくれていてよかった

──ライブについても聞かせてください。ずばり、フラカンのライブの魅力とは?

私は人間には誰しも踊りたい欲求があると思っていて、フラカンの音楽はそこに火をつけてくれるんですよね。「脳内百景」も「真冬の盆踊り」(2003年発表の15thシングル)もそうですけど、縄文人の血が騒ぐと言いますか(笑)。あと、フラカンは野音(日比谷公園大音楽堂)のステージが似合うと思っているんです。彼らの音楽を聴きながら野外で踊るのは気持ちいいし、ぜひまたやってほしい。2023年にピーズとフラカンのツーマンライブを野音で観たのですが、周りのお客さんたちがみんな同級生みたいな気がしてきて。すごい踊るんですけど、ときどき座って、腰を叩いたりして(笑)、それが楽しかったですね。

角田光代

──もちろんフラカンのメンバーも年齢を重ねていて。楽曲やライブを通して、それを隠さずに出しているのも魅力だと思います。

それも「この人たちがいてよかった」と思うことの1つですね。私とメンバーはほぼ同世代なんですが、自分が20代の頃は「50代になるとロックは聴かなくなるんだろうな」と思っていたんですよ。でもそうはならなかった。ロックをずっと聴いてるし、ライブにも行っていて。そうなったときに、もし好きなバンドが30代、40代で辞めてしまったら困るじゃないですか。

──それは困りますね……。

「ロックなんて聴いてていいのかな?」という気持ちになっていたかもしれません。でもフラカンがずっと活動を続けてくれていることで「聴き続けていいんだな」と思えるし、一緒に年齢を重ねてくれることが本当にありがたいです。これは私が思っていることで、間違っていたら申し訳ないんですけど、歳をとりながらロックを歌うことの戸惑い、あるいは抵抗みたいなものもかつてはあった気がするんです。それをバンド自体がだんだん受け入れているのかなと、彼らのアルバムをずっと聴き続けていると、そういうふうに思えてくるんですよね。彼らの音楽を通して、加齢することを考えさせられるところもあります。

──音楽シーン全体を見ても、50代以上のロックバンドが増えてますからね。THE COLLECTORS、怒髪天、the pillowsなども精力的に活動を続けているし、彼らのライブを観ると私自身も「がんばろう」と思えます。

そうですよね。歳をとるのはイヤだなと思うこともあるし、自分の過去の作品に対して「今はあんなふうに書けないな」と思うこともありますけど、フラカンの曲を聴いたり、ライブに行くことで、ある部分はそのままでいられるというか。勝手に自分を重ねているだけですが、ありがたいなと思ってます。今のフラカンのライブもすごいじゃないですか。若いバンドにも負けてないし、どうしてあんなことができるのか。健康管理も大事ですよね。

角田光代

──角田さんはフラカンのメンバーと会ったこともあるそうですが、そのときの印象はどうでしたか?

どうだろう……? 鈴木さんと対談させていただいたときに「どうやって歌詞を書いてるんですか?」みたいなことをお聞きしたんですよ。そうしたら「思いついた言葉をケータイにメモしてます」って、その画面を見せてくれて。いろんな言葉が書いてあったんですけど、「これを人に見せていいんだろうか?」って、歌の印象のままの気取りのなさに、ちょっとびっくりしました。竹安(堅一 / G)さんは、ときどきライブですごいことを言うのが印象に残ってますね。30周年のときに“前半15年縛り”のライブをやったんですけど、竹安さんが「なんでこういう選曲になったんだっけ?」みたいなことを言い出して。メンバーの皆さんが「説明したじゃん!」と言っているのを見て、なんてぶったまげた人だと思ったんですよね。あと“ライブの日に会場を知らないまま集合場所に行く”という話もライブで聞いて、畏敬の念を覚えました。

──すごい(笑)。グレートマエカワ(B)さんはめちゃくちゃしっかり者ですよね。

本当にそう思います。マエカワさんは町内会長とかもやれるだろうし(笑)、ああいう方がバンドにいると安心ですよね。

角田光代

フラカンが武道館に立つのは当然のこと

──2025年はフラワーカンパニーズにとって大事な1年になります。まず「正しい哺乳類」のリリースがあって、そのあとはアルバムのツアー、そして9月20日には日本武道館公演「フラカンの日本武道館 Part2 ~超・今が旬~」を開催します。フラカンの武道館公演は2015年以来、2度目ですが、メンバーの皆さんは「たとえ満員ならなくても、やれるんだったらやる!」というテンションのようです。

そうなんですね。そういう感じは、私のバンドに対する印象と同じです。そこまで前向きなわけでなくて、「もしかしたらダメかもしれない。でもやるんだよ」という明るさが好きなので。ただ、私はフラカンが武道館で2度目のライブをやるのを“挑戦”だとは思ってないんですよ。あんなにすごいライブバンドなんだから、武道館でやるのは当然だろうなって。だから「やった! うれしい!」というファンの気持ちしかないんです(笑)。

──素晴らしい。今後のフラカンに期待することは?

とにかくライブをやり続けてほしいです。CDも聴きますが、私はフラカンはライブバンドだと思っているし、会場に足を運ぶたびに「ライブっていいな。フラカンはすごいな」と思わせてもらえるので。

角田光代

フラワーカンパニーズ 公演情報

フラワーカンパニーズ「正しい哺乳類ツアー2025」

  • 2025年1月25日(土)静岡県 FM STAGE
  • 2025年1月26日(日)岐阜県 yanagase ants
  • 2025年2月4日(火)東京都 下北沢SHELTER
  • 2025年2月8日(土)香川県 DIME
  • 2025年2月9日(日)愛媛県 WStudioRED
  • 2025年2月11日(火・祝)大分県 T.O.P.S Bitts HALL
  • 2025年2月13日(木)大阪府 FANDANGO
  • 2025年3月1日(土)新潟県 CLUB RIVERST
  • 2025年3月2日(日)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2025年3月13日(木)岡山県 PEPPERLAND
  • 2025年3月15日(土)鹿児島県 SR HALL
  • 2025年3月16日(日)福岡県 BEAT STATION
  • 2025年3月20日(木・祝)青森県 青森Quarter
  • 2025年3月22日(土)宮城県 darwin
  • 2025年3月23日(日)福島県 福島OUTLINE
  • 2025年4月5日(土)愛知県 ElectricLadyLand
  • 2025年4月6日(日)石川県 Kanazawa AZ
  • 2025年4月12日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2025年4月19日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2025年4月29日(火・祝)大阪府 BIGCAT
  • 2025年5月2日(金)東京都 SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

<出演者>
フラワーカンパニーズ


フラワーカンパニーズ「正しい哺乳類ツアー2025」番外編 沖縄ツーマンライブ

2025年3月7日(金)沖縄県 Output

<出演者>
フラワーカンパニーズ / Shaolong To The Sky


フラカンの日本武道館 Part2 ~超・今が旬~

2025年9月20日(土)東京都 日本武道館

<出演者>
フラワーカンパニーズ

プロフィール

フラワーカンパニーズ

1989年4月に鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、ミスター小西(Dr)の4人により名古屋で結成されたロックバンド。地元・名古屋を拠点とした精力的なライブ活動を経て、1994年に上京。1995年にアルバム「フラカンのフェイクでいこう」でメジャーデビューを果たす。2004年に発表された楽曲「深夜高速」は、ファンのみならず多くのロックファンから愛され続け、バンド結成20周年を迎えた2009年には「深夜高速」をさまざまなアーティストがカバーしたコンピレーションアルバム「深夜高速 -生きててよかったの集い-」がリリースされた。2015年12月には、結成26年目にして自身初となる日本武道館公演「フラカンの日本武道館 ~生きててよかった、そんな夜はココだ!~」を開催。2017年6月には自主レーベル「チキン・スキン・レコード」を立ち上げた。2025年1月に通算20枚目のオリジナルアルバム「正しい哺乳類」を発表。同月から全21公演のツアー「正しい哺乳類ツアー2025」を行い、9月には2度目となる日本武道館公演「フラカンの日本武道館 Part2 ~超・今が旬~」を開催する。

角田光代(カクタミツヨ)

1967年、神奈川県生まれ。1990年に「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞してデビューを果たす。2005年に「対岸の彼女」で直木賞、2007年に「八日目の蝉」で中央公論文芸賞、2014年に「私のなかの彼女」で河合隼雄物語賞、2021年に「源氏物語」の現代語訳で読売文学賞など、数々の賞を受賞している。