フタを開けたら全部FLOWになっちゃう
──僕が特に引っかかったのはその2曲なんですが、ほかに皆さんがレコーディングでこだわった「ここを聴いてくれ」というポイントもぜひ教えてください。
KEIGO こだわりとは違う話になっちゃうんですけど、今回「流れ星~Shooting Star~」をカバーできたことがすごくうれしくて。HOME MADE 家族とは完全に同世代で元レーベルメイトでもあって、コラボ経験もあったりして仲もいいんですよ。同じ時代を走ってきた戦友として、歌詞ひとつ取っても同じ景色を見ている気持ちになれたというか。この機会に改めてカバーできたのはめちゃくちゃうれしかったですね。
KOHSHI 俺は「シルエット」ですかね。KANA-BOONはわりと下の世代にあたるバンドなんだけど、そういうバンドの曲をカバーする機会というのもこういう企画でもなければなかなかないことなんで、歌えてよかった。この曲もそれこそ息継ぎが大変で、「なんでみんなブレスいらないんだろう?」って思いましたね(笑)。
KEIGO 確かにね。みんな、息継ぎしなさすぎ(笑)。
KOHSHI ラスサビ行く前とか、マジで切れ目なく歌い続けてんだよ。だいぶキーも高いし。
──「シルエット」に関して言うと、このAメロがスカだということによく気付きましたよね。
TAKE ははは。BPMの感じで「これは絶対にスカだ」と思ったんですよ。その発想の延長でイントロとかにはレゲエの要素も入れていて、音楽の変遷をアレンジで表現するという(笑)。
GOT’S インドネシアに行ったとき、KANA-BOONのメンバーもびっくりしてたよね。
──では、リズム隊のお二人の推しポイントはどこでしょうか。
IWASAKI そうすね、Anlyの「カラノココロ」かなあ。こういうアフタービートの感じはあまりやってこなかったので、ある意味ではバンドの新しい扉を開けさせてもらった感覚というか。もちろんミディアムテンポの16ビートという意味では「DAYS」とかもあったけど、これはまた全然別種のものなんですよね。すごく勉強になった。
GOT’S ベース的にも、「カラノココロ」は世に言う“ベースっぽい”アレンジというか(笑)。過去の曲で、CHOKKAKUさんに編曲してもらった「KANDATA」という曲があるんですけど、そのときもちょっとFLOWっぽくない、ポップスのマナーで弾くベースに挑戦していて。それがすごく大変だったのを覚えてるんですよ。それから何年もそういうアプローチに手を着けてこなかったというのもあって、「よし、ひさびさにやってみるか」って感じでやったもので。
TAKE テンポが絶妙に遅いんだよね。ちょうど勢いでいけない。
IWASAKI うちにはあんまりないBPMだからね。
GOT’S 今回のアルバムで一番時間をかけてベースのアレンジをした曲なので、ちょっと注目して聴いてほしいです。
──TAKEさんがギタリスト的に聴いてもらいたいポイントは?
TAKE そうだなあ……やっぱり原曲にないリードを弾いているところなんかは、普通にカバーならではの楽しみ方ができる要素かなと思いますね。「遥か彼方」とか。
──今回はカバーアルバムだからこそ、一貫性のあるギターの音色で“FLOW感”を強調しているような印象も受けたんですが。
TAKE いや、でも確か竿は全曲変えてますね。アンプも実はコロコロ変えていて……だから結局のところ、この楽器隊3人が演奏すると自然にFLOWのサウンドになるってことだと思いますよ。そこにボーカル2人の声が乗ることで完全体になる。どうしてもそうなっちゃうんで、だからこそ逆にいろんな挑戦もできるし、カバーアルバムというコンセプトの意味もあるのかなという気がしてますね。それぞれが新しいアプローチに挑戦するんだけど、フタを開けたら全部FLOWになっちゃうっていう(笑)。
「GO!!!」を“流す”ようになったら終わり
──ラストには、ボーナストラック的に「THE FIRST TAKE」の音源が収録されています。これを聴いてすごく思ったんですけど、今なお「GO!!!」をこんなに楽しそうに演奏できるのって相当すごいことですよね。
TAKE 飽きもせずにね(笑)。19年間、何万回と演奏してきたものを。
KOHSHI ずっとお茶漬け食えるみたいな。お茶漬けと呼ぶにはだいぶ味濃いけど(笑)。
KEIGO “やっぱこれだ感”はずっとあるんですよね。何万回やってても、ライブでこれを歌うと「やっぱ『GO!!!』だよな!」ってなる。
IWASAKI 19年の間に、ちょっとだけ封印した時期も実はあるんですよ。“FLOWイコール「GO!!!」”みたいな見られ方に対する反発心もあって、「それだけじゃないんだ」って思いがあったりもしたんですけど……でも「やっぱりこれだよね」みたいなところに自分たちも自然に回帰して、それからはずっと普通にやり続けてますね。
──キャリアのあるバンドが初期の曲をやり続ける場合、新鮮さを保つためにアレンジを加えたりもしがちだったりするじゃないですか。
TAKE ジャズアレンジにしてみたりね。
──でも「GO!!!」はそのままやっていて、よく飽きないなと(笑)。
KOHSHI カラオケでは歌い飽きてますけど。
KEIGO ガハハハハ! だいたい「GO!!!」入れられるもんね。
GOT’S リハでやってるときとかは「もう飽きた」って感じもあるんですけど(笑)。本番はもうアフタートークくらいの感覚で、変に緊張することもないし、何があってもこの曲だけは大丈夫かなっていうのはあるよね。
──でも、“流す”みたいな方向にも行ってない。お客さんに求められて仕方なくやっているんじゃなくて、バンドの皆さんが本当に楽しんでいるのが伝わってきます。
GOT’S それはきっと、お客さんが常にすごくいい反応をしてくれるおかげもあると思います。
TAKE 「THE FIRST TAKE」みたいな閉鎖された空間であれだけ楽しくやれるのも、その残像が常にあるからだと思うんですよね。この19年の歴史の中で全国各地、世界各国でお客さんとともに作り上げてきた光景が、「GO!!!」を演奏するたびに頭の中によみがえってくる。その積み重ねがこのテイクにつながったんじゃないかな。
KOHSHI 歌っている身としては、「この曲を“流す”ようになったら終わりだな」とめちゃくちゃ思っていて。常にギリギリのところで攻めたステージングをしなければ表現しきれない曲だし、スタジオのマイク前でかしこまって歌うような曲では絶対にないから。お客さんの前でピョンピョン跳ねながら、ヒザいわせながらやる曲だから。ほかの曲とは決定的に異質なもの、という感覚はありますね。
KEIGO この曲で跳べなくなったら終わりだな、っていう。
──それをこの先も10年20年と続けていけるかが勝負ですね。
KOHSHI マジでそれなんだよなあ。未来は見ないようにしてるんだけど(笑)、その時は間違いなく来るからね。
──まあ、でも海の向こうにはミック・ジャガーさんとかもいらっしゃることですし。
KEIGO いらっしゃるんですよねえ。
KOHSHI ホントそう。ああいう存在は励みになりますよね。
気付いたら20年経っていた
──FLOWはメジャーデビュー20周年を迎えましたけど、バンドを長く続ける秘訣などは何かあるんでしょうか。
IWASAKI ……辞めないことかな。
一同 (笑)。
──それは真理ですね。
IWASAKI 実際のところ、気付いたら20年経っていたっていうだけで。アルバムを作ったりライブをしたり、そういう日々の一歩一歩がつながっていった結果でしかないんですよ。この先も25年30年と、行けることならもちろんずっと行きたいし、なんかそういう感じですよね。そんなに大それたことをしている感覚はまったくなくて。
GOT’S 10周年のときも15周年のときも、そんな感じだったなよなと思って。もちろん記念のイベントをやったりもしてるんですけど、それはお客さんに喜んでもらいたいからであって、自分たちに何かを達成した実感があるわけではないんですよ。まあ「続いてるな」って感じで。
──バンドの危機みたいなものも特になかった?
GOT’S なかったですね。辞める辞めないみたいな話も特になかったし。
TAKE やっぱり長く続けていくとね、恋人や夫婦関係とかもそうだと思うんですけど、どんどん落ち着いていくんですよ。もちろんクリエイティブな部分でぶつかることはあるし、ぶつかってきたけど。
KEIGO たぶん、そこでお互いを否定しなかったから続けてこられたのかもしれないですね。音楽のことで意見がぶつかったときに相手の人格まで否定しちゃったら、もしかして取り返しの付かないヒビが入っていた可能性もあったのかなと今ふと思いました。
──なるほど、確かにそれは大事なことですね。ちなみに次の周年は25なのか26(フロー)なのか、どっちになるんでしょう?
TAKE どっちもです。
GOT’S アニバーサリーイヤーが2年続くの?(笑)
TAKE あとは、2026年ってのもあるんで。
KEIGO 多いな(笑)。
GOT’S 「あいつら、だいたい周年だな」って思われそう。
KEIGO 「また言ってるよ」。
TAKE 「毎年周年じゃねえか」。
──ずっと閉店セールしてるお店みたいですね。
KOHSHI ははは(笑)。「一生閉店しねえな」って?
──ということは、20周年が終わってもFLOWのターンがまた来る感じですね。
KOHSHI すぐ来ますね。
TAKE ずっとですよ(笑)。
Anly
あのFLOWが「カラノココロ」をカバーしてくれる人生になるとは…と沸々と感慨深さを噛み締めています。
サウンド面ではストリングスの動きがまるで忍術を繰り出してるかのようで、ギターソロも加わり聴き応えがありました。歌には切なさが混じり、優しい風が木の葉の里を吹き抜けていくように感じました。
先日開催された「NARUTO THE LIVE」の会場でお会いした際に「この曲、研究したんだよ」と仰られていて、後輩の楽曲なのにこんなにも愛情を持って「カラノココロ」をカバーして頂けたんだと感謝が溢れました。とても幸せです。本当にありがとうございます。
皆に愛されるバンドたる所以ですね。このverの「カラノココロ」がたくさんの人に届きますように。
プロフィール
Anly(アンリィ)
沖縄・伊江島出身、1997年生まれのシンガーソングライター。2015年11月に関西テレビ・フジテレビ系ドラマ「サイレーン 刑事×彼女×完全悪女」の主題歌「太陽に笑え」でメジャーデビューした。2023年10月には5thアルバム「26ml」と、テレビアニメ「Dr.STONE NEW WORLD」第2クールのエンディングテーマを表題曲としたシングル「好きにしなよ」をリリース。
いきものがかり
「NARUTO」、そして「ブルーバード」という作品を通して、FLOWの皆さんと繋がれたことをとても光栄に思っています。フィーチャリングヴォーカルとしてダイアナ・ガーネットさんが加わり、男女の声が激しくぶつかりあうことで、自分たちのメロディに、FLOWの皆さんらしい熱いスピリットを与えてくださったと思っています。
プロフィール
いきものがかり
1999年結成され、2006年にシングル「SAKURA」でメジャーデビュー。「ブルーバード」「YELL」「じょいふる」「風が吹いている」など、等身大のポップチューンで老若男女問わず幅広い層から支持を集める。2024年2月からホールツアー「いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2024 ~あなたと!わたしと!みんなで!歌いまSHOW!!~」を開催する。
RYO(ORANGE RANGE)
どんな曲調でもしっかり自分色に演奏してしまえるFLOWにはいつも驚かされます!
この「ビバ★ロック」という曲は、ORANGE RANGEにとっては2003年のメジャーデビュー初年度の楽曲ともあって、若かった頃の勢いや壮大さなど重要な部分が詰まった曲なんですが、FLOW節を残しながら、ちゃんと忠実にストレートに再現されていて嬉しかったです。
また「NARUTO」と繋いでくれてありがとう! FLOW!!
プロフィール
ORANGE RANGE(オレンジレンジ)
2001年に結成された、沖縄出身・在住の5人組バンド。2003年にシングル「キリキリマイ」でメジャーデビューを果たし、「上海ハニー」「ロコローション」「花」「ラヴ・パレード」「キズナ」「イケナイ太陽」など、ヒット曲を連発する。2023年7月に新曲「解放カーニバル」を配信リリースし、10月より全国ツアー「LIVE TOUR 023 ~NAKED×REFINISHED -revenge-~」を行った。
プロフィール
FLOW(フロウ)
5人組ミクスチャーロックバンド。2003年にシングル「ブラスター」でソニー・ミュージックのレーベルKi/oonからメジャーデビュー。2004年にリリースした「GO!!!」がアニメ「NARUTO-ナルト-」のオープニングテーマ、2005年発表の「DAYS」がアニメ「交響詩篇エウレカセブン」のオープニングテーマにそれぞれ使用され注目を浴びる。そのほか「コードギアス反逆のルルーシュ」のオープニングテーマ「COLORS」、「テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス」のオープニング主題歌「風ノ唄」などこれまでに数多くのアニメ作品の楽曲を担当。日本国内だけでなくアジア、北米、南米、ヨーロッパ、中東などでのライブ実績もあり、2018年にはアニソンをテーマにしたメジャーデビュー15周年ツアーを日本国内と中南米5カ国で実施した。メジャーデビュー20周年を迎えた2023年7月に千葉・幕張メッセ国際展示場でアニバーサリーライブ「FLOW 20th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE 2023 ~アニメ縛りフェスティバル~」を開催。8月に「NARUTO」シリーズ主題歌のカバーアルバム「FLOW THE COVER ~NARUTO縛り~」を発表した。11月にテレビアニメ「帰還者の魔法は特別です」のオープニングテーマ「GET BACK」を表題曲としたシングルをリリース。12月にライブツアー「FLOW THE CARNIVAL 2023 ~NARUTO縛り~」を行った。
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