音楽ナタリー Power Push - FLOW

GARNiDELiA・tokuと語る 音楽とアニメのクロスオーバー

今アニメを観てる人たちに残念な思いをさせたくない

──KOHSHIさんは「Steppin' out」の制作についてはいかがでしたか?

KOHSHI tokuさんのアレンジでは2番のAメロが急に3拍子になっていて(笑)、デモから譜割りが変わっていたから歌詞を変えて。レコーディングの直前にこのアレンジが上がってきたのでちょっと慌てたりもしたんですけど、地方ライブへ向かう車での移動中、メンバーみんなでサービスエリアで初めて聴いたときには「ま、アリじゃない?」って。

一同 あはははは(笑)。

toku そこについては僕も「デモから変えすぎたかな」「元に戻されるかもな」と思ったんですけど、とりあえず聴いてもらおうかなという。

TAKE(G / FLOW)

TAKE この前「デュラララ!!×2 結」の声優の豊永利行さんと対談させていただいたとき、「Steppin' out」について「2番のAメロが一番『デュラララ!!』感があります」っておっしゃってて。「デュラララ!!」のストーリーみたいな、先の展開の読めなさ、現実と非現実が入れ替わる感じを音楽で表現しているって言っていただきました。

toku よかった(笑)。

TAKE あと、あのアニメってオープニングの途中に回想シーンが入るんですけど、そのために曲に新しいセクションを作れたりして面白かったですね。

──「デュラララ!!」シリーズのオープニング映像って、途中に前の週のエピソードを振り返るナレーションが入る、珍しい構成になっているから、テーマソングにもそのためのブリッジ的なセクションが必要になりますよね。

TAKE 普通の構成ならああいうセクションは入れないんですけど、あの部分を作れたことでアニメサイズからフル尺に広げるとき、そこにラップを乗せる展開を作れたし。tokuさんとも「デュラララ!!」ともコラボして完成した曲っていう印象です。

──すでに放送も始まっていますが、ファンの方からのリアクションは聞こえてきていますか?

TAKE もうTwitterでぐいぐいエゴサして見てます(笑)。「けっこう評判悪くないぞ」って。

──「もうアルバムも10枚目ですね」っていうインタビュー、つまりキャリア十分の方にお話を聞いてるはずなのに、まさか今もファンの反応をそんなに気になさっていたとは(笑)。

TAKE 気が小さいんですよ(笑)。もう心配で。自分も幼少の頃アニメを観てきた世代だから、やっぱり今観てる人たちに残念な思いをさせたくないっていうのがあって。アニメの世界観って楽曲との相乗効果で作られる面があるというか、テーマソングによってその世界観をより鮮やかなものにできるじゃないですか。そういう楽曲をちゃんとした形で届けたいっていう気持ちがあるので、アニメに携わらせていただくときは毎回が勝負ですよね。

──KOHSHIさんもアニメのタイアップが付いている曲の詞を書くときって、心構えが変わってくるものですか?

KOHSHI そうですね。今回はわりと作品自体に寄り添うような感じで作業をして。日常と非日常、普通と異常みたいなテーマが「デュラララ!!」という作品から感じ取れたので。これをテーマにするのも面白いかなと思って書き始めました。

──完全に作品のための詞を書くわけでもなく、「デュラララ!!」の物語の流れを面白がって書くという感じですね。

KOHSHI 自分が作品から感じたものを曲にアウトプットするっていう。歌詞の中に作品との化学変化が欲しいので。

自分のレトリックをどれだけぶっ壊せるか

──アレンジャーが変わることによって詞も変わるものなんですか?

KOHSHI そうですね。例えば今回のアルバムで言えば疾風さんとやった「魑魅魍魎」は、もろに津軽三味線が入るから「これはちょっと和でいきたいな」っていう狙いもあって、あえて古い言葉をチョイスして。今までそういうことはあまりしてこなかったから、ちょうどいいタイミングだしやりたいと。

TAKE 歌詞に一番影響があった曲はこの「魑魅魍魎」だったと思うね、今回は。

──当然KOHSHIさんにはKOHSHIさんのレトリックがあるはずじゃないですか。だけど新しい血が混ざるのであれば、自分の言葉遣いすら変えてしまっても構わない。

KOHSHI 全然。むしろレトリックをぶっ壊したいんですよ。毎回アルバムの制作作業の中で、どれだけ壊せて再構築できるかっていうのが個人的なテーマであって。それをやらせてもらえるセッションはすごくありがたかったですね。

toku (大きく頷く)

──tokuさんもここ最近、綾野ましろさんや井口裕香さんに楽曲を提供したり、あとGARNiDELiAの「PRIDE」という曲では、じんさんと共演したり、コラボレーションの機会も増えてますよね。

toku(GARNiDELiA)

toku 1人で楽曲制作はもちろん、レコーディングもできるプライベートスタジオを持ってるんですけど、だからこそ逆に「ここで完結してしまっているとプラスαが生まれにくいよな」と思ったりもしますから。でも1人の力でその状況を壊すのは難しいんですよ。それで外部のアーティストと交わってみたら、より一層ストイックに、しかも楽しく曲を作れるんじゃないか、という発想に至って。いつものやり方で作れば、いつもの自分のサウンドになることはもうわかってるから、そこに迷いはもうないわけですし。迷いなく曲を書き、レコーディングをしつつ、その上で誰かとストイックに楽しく制作することで生まれるプラスαに賭けたいという気持ちはありますね。プライベートスタジオに籠もるのってすごく落ち着くんですけど、外に打って出ることにビビってられないっていうか。

TAKE 単純に自分たち自身、曲を作ることをもっと楽しむっていうか、ね。誰かと組むことで自分たちも感動したいというか。そういう探究心に突き動かされてますね。

toku ええ。FLOWの皆さんにしてもやっぱり風格があるし、そういう方々の曲に自分のエッセンスを加えられたことには「すごくいい機会をいただいたな」としか思えなくて。長いキャリアがあって代表作もたくさんあるバンドさんと音楽で交われることはクリエイターとしても面白いし、しかもFLOWさんはアニメやアニソンが好きな人たちっていう、エンタテインメントに対するアンテナが高そうな人たちに向けた挑戦をしている。「そういう人たちだからこそ、今も売れ続けているんだろうな」という尊敬の念もすごくあったので、今回のコラボは本当にうれしかったんです。

TAKE ありがとうございます!

ニューアルバム「#10」 / 2016年2月3日発売 / Ki/oon Music
初回限定盤 [CD+DVD] / 3500円 / KSCL-2682~3
通常盤 [CD] / 3000円 / KSCL-2684
CD収録曲
  1. 虹の空 -Album Ver-
  2. Oblivion feat.HISASHI(GLAY)
  3. DARK SHADOW feat. TeddyLoid
  4. Steppin’out(編曲:toku[GARNiDELiA]&FLOW)
  5. 光追いかけて -Crystal Lake mix -
  6. 魑魅魍魎 feat. 疾風
  7. DECATHLON feat. AFRA
  8. JOY TO THE WORLD feat. キバオブアキバ
  9. World Symphony(編曲:井上ジョー&FLOW)
  10. Good Days ~君を忘れない~(編曲:NAOTO[ORANGE RANGE]&FLOW)
初回限定盤DVD
  • 「虹の空」Music Video
  • 「Steppin' out」 Music Video (Album Ver.)
  • 「FLOW WORLD TOUR 2015 極 -kiwami-」ドキュメンタリー
FLOW LIVE TOUR 2016「#10」
2016年2月14日(日)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3(※男性限定ライブ)
2016年2月18日(木)大阪府 BIGCAT
2016年2月20日(土)福岡県 DRUM Be-1
2016年2月21日(日)広島県 SECOND CRUTCH
2016年3月4日(金)石川県 vanvan V4
2016年3月5日(土)愛知県 ElectricLadyLand
2016年3月12日(土)香川県 DIME
2016年3月13日(日)京都府 KYOTO MUSE(※女性限定ライブ)
2016年3月19日(土)北海道 cube garden
2016年3月21日(月・祝)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
2016年3月26日(土)東京都 Zepp Tokyo
FLOW(フロウ)
FLOW

1998年に兄弟であるKOHSHI(Vo)とTAKE(G)が結成したミクスチャーロックバンド。1999年にKEIGO(Vo)とGOT'S(B)、2000年にIWASAKI(Dr)が加入し、現在の編成となる。2003年7月にシングル「ブラスター」でメジャーデビュー。2005年6月にリリースしたシングル「DAYS」がテレビアニメ「交響詩篇エウレカセブン」のオープニングテーマに起用されて大ヒットし、一躍人気を高める。2008年9月には初の日本武道館ワンマンライブを開催し、大成功を収めた。数々のアニメ主題歌を担当したことから海外でも注目を集め、2010年6月リリースのアルバム「MICROCOSM」は欧米44カ国で発売される。メジャーデビュー10周年に突入した2012年7月からは「FLOW THE MAX!!!」と銘打ち、47都道府県ツアーなどさまざまな活動を展開。2015年2月にはアニメ作品への提供曲を収録したベストアルバム「FLOW ANIME BEST 極」をリリースし、初のワールドツアー「FLOW WORLD TOUR 2015 極」を世界8カ国で開催した。2016年2月に10枚目のフルアルバム「#10」を発表し、同月より全国ツアー「FLOW LIVE TOUR 2016『#10』」を行う。

toku(トク)
FLOW

メイリア(Vo)との男女2人組ユニット・GARNiDELiAのコンポーザー。2010年にGARNiDELiAとは別名義で動画共有サイトにオリジナル曲「ARiA」を投稿し、ユニットとしての活動を開始した。2010年末にミニアルバム「ONE」をインディーズで発表し、その後は国内外のイベントに多数出演。2014年3月にアニメ「キルラキル」のオープニングテーマ「ambiguous」でメジャーデビューを果たした。2015年1月にはメジャー1stアルバム「Linkage Ring」を、8月にはインディーズ時代の楽曲を集めたベストアルバム「BiRTHiA」をリリース。ユニットでの活躍のほか、アンジェラ・アキやLiSAといったアーティストの楽曲を手がけるなど、作曲家および編曲家としても活動している。