=LOVE「あの子コンプレックス」発売記念インタビュー|佐々木舞香を中心に描き出す、息が苦しくなるほどの失恋ストーリー

=LOVEにとって通算11枚目のシングル「あの子コンプレックス」がリリースされた。

2017年のデビューから約5年、=LOVEのシングル表題曲のセンターは休養中の期間を除き、髙松瞳が一貫して務めてきた。しかし、今年の4月末、髙松はYouTubeで公開された動画の中で、11thシングルでは表題曲のセンターを担当しないことを報告。彼女が「私がセンターじゃない=LOVEを見てみたいと思ってプロデューサーの指原(莉乃)さんにセンターを降ろさせてくださいとお願いしました」と語る動画はファンの間で大きな話題となった。そして今まで以上にシングルの新情報に関心が寄せられる中、=LOVEは4月30日に行われた全国ツアーの東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演にて新曲「あの子コンプレックス」を初披露。佐々木舞香がこの曲のセンターを務めることが明らかになった。

“=LOVE史上もっとも儚い失恋ソング”である「あの子コンプレックス」は、佐々木を中心としたメンバー11人の高い表現力が発揮された1曲。YouTubeで公開されたミュージックビデオの再生回数は公開後わずか10日ほどで500万回を突破し、=LOVEの人気が上昇し続けていることも証明した。シングルの発売に合わせ、音楽ナタリーでは今回もメンバーを2組に分けてインタビューを実施。「あの子コンプレックス」をはじめとする今作の収録曲の注目ポイントを聞いた。残念ながら齊藤なぎさのみスケジュールの都合で取材不参加となったが、特集内には彼女のコメントも掲載している。

取材・文 / 近藤隼人撮影 / 斎藤大嗣

大場花菜・音嶋莉沙・佐々木舞香・野口衣織・山本杏奈
インタビュー

左から瀧脇笙古、齋藤樹愛羅、諸橋沙夏、大谷映美里、野口衣織、佐々木舞香、齊藤なぎさ、髙松瞳、音嶋莉沙、大場花菜、山本杏奈。

左から瀧脇笙古、齋藤樹愛羅、諸橋沙夏、大谷映美里、野口衣織、佐々木舞香、齊藤なぎさ、髙松瞳、音嶋莉沙、大場花菜、山本杏奈。

センター佐々木舞香の多面性

──まず、初めてシングルの表題曲のセンターを務める心境を佐々木さんから聞かせてください。

佐々木舞香 そうですね……特に普段とは変わりなく、いつも通りみんなで=LOVEの新曲を仕上げていったという感じです。でも、過去に何回かカップリング曲でセンターをやらせていただいたときもそうだったんですけど、曲の歌い出しを担当したりとか、センターならではのことを経験したときに実感みたいなものが湧いてきて。曲の大事なところを任せてもらってるという意味で、がんばらなきゃいけないなという気持ちにはなりますね。

佐々木舞香

佐々木舞香

──指原さんからセンターに指名されたときに驚きはありませんでしたか?

佐々木 それはありましたね。でも、リアクションとしては「あ、そうなんですね……」という感じでした(笑)。というのも、そこに至るまでにちょっとした過程があって。指原さんが楽曲の歌詞を書いている段階だったのかな? 私をセンターにするという考えがあることを、それくらいのタイミングで聞いていたんです。プリプロで歌った結果を踏まえて最終的に決めるという話だったので、だったらがんばらなきゃと思いました。

──「あの子コンプレックス」は愛する人に振り向いてもらうことができない女の子の複雑な心情を描いた失恋ソングですが、佐々木さんの表現力が生きる楽曲だと指原さんは思ったのかもしれませんね。

大場花菜 初めて曲を聴いたときにイメージした「あの子コンプレックス」の世界観と、舞香が実際に表現する楽曲の世界観が一致していて。ちょっと闇っぽいところがありつつ、何かを追い求めているようなイメージの曲が舞香には合うんだと思います。

野口衣織 舞香はこれまで「しゅきぴ」「夏祭り恋慕う」でセンターを担当してきましたが、今回の「あの子コンプレックス」を含めて全部違う舞香なんですよ。いろんな舞香が存在する中で、またひとつ新しい一面、パフォーマンスの形を見ることができる新曲だと思います。

野口衣織

野口衣織

山本杏奈 パフォーマンス中に舞香がセンターで踊ってる姿を見て、さすがだなとその表現力に圧倒されました。歌詞を含めて楽曲の世界観が舞香にマッチしているし、舞香もそれを表現しようと努力していて。

音嶋莉沙 私も「あの子コンプレックス」を初めて聴いたとき、舞香が歌っている姿が想像できたんです。初披露したときも、舞香の表情や歌い方から楽曲の世界観が伝わってきました。甘い歌い方もできれば、今回みたいな儚い表現もできるのはホントにすごいです。

──「しゅきぴ」は甘いセリフが印象的な中毒性の高いナンバー、「夏祭り恋慕う」は男性目線の初々しいラブソングで、ホントに雰囲気が曲ごとに違いますが、佐々木さん自身もどこか多面性のあるキャラクターですよね。

佐々木 自分でも自分のことがよくわからなくて、人によって私の見え方が違うんだなと感じることが多々あるんです。例えば、ある人から「几帳面に見える」と言われたかと思えば、別の人からは「がさつに見える」と言われたり。どっちも当てはまるから、「私っていろんな面があるのかな。結局私は何なんだろう」と思っちゃうんですよね。人って相手の一部分しか見えてないというか、最初に目に付いたところが印象に残るものなんでしょうけど、最近特にそういう場面が多くて。今年の目標は「自分を見つけること」なんですけど、まだ見つかってないんですよ。でも、そのよくわからない感じ、定まってない感じが自分のよさなのかなとも思っています。

まるで映画を観ているかのよう

──楽曲のパフォーマンスについても、佐々木さん的に「こういう曲のほうが自分に合う」と思うことはない?

佐々木 その話で言うと、「あの子コンプレックス」は歌いやすいですね。「しゅきぴ」はちょっと大変で(笑)。声を作っているし、ロングトーンがすごく多いので歌っているときに息が続かないんですよ。それに比べると、「あの子コンプレックス」は歌いやすい音程、音域ですね。でも、悲しい曲なので、歌いながら気持ちがちょっと削られていくところもあります。

山本 「しゅきぴ」も「あの子コンプレックス」も曲の主人公の愛の深さという意味では共通しているから、舞香は強い愛情を歌う曲が合うのかもしれません。

山本杏奈

山本杏奈

──なるほど。確かにどちらも感情のたかぶりを感じられる楽曲ですね。

山本 実は昨日、YouTubeに上がっている=LOVEのドキュメンタリーを観返していたんですけど、「以前の自分たちじゃ絶対に『あの子コンプレックス』の世界観を表現できないよな」と思いました。初期の頃の私たちは私たちで必死だったし、全力でそれもよかったと思いますが、「あの子コンプレックス」は成長した今の私たちだからこそできる表現だなって。歌詞に沿った振り付けが多くて、舞香を中心に1つの作品を作っている感覚があります。

野口 曲を聴いていも、ミュージックビデオを観ていても、まるで映画を観ているような感覚になる楽曲で。いい意味で他人事というか。自分が経験していないことが描かれているからこそ、逆に楽曲の物語が新しい感情として自分の中に入ってきて、それがすごく新鮮でした。もちろん、この歌詞と似たような経験をしていて感情移入できるという人もいるだろうし、聴く人によって感じるものが違うかもしれないけど、そこがこの曲の素敵なところで。どんな人の胸にも響くような女心が描かれていると思います。

──MVは歌詞になぞらえたストーリー性のある映像で、いろいろと解釈ができそうな内容になっています。

佐々木 私が水たまりの中に沈んでいってしまうシーンで始まって。ダンスシーンやリップシーンは海の底のようなイメージで、全体的に暗い雰囲気なんですよね。映像の終盤にはもう1人の自分とガラス越しで向き合うシーンがあるんですけど、あれは幸せだった頃の自分を表しているんだと思います。そして自分自身は幸せな世界にもう戻れないことを知り、最後も水の中に沈んでいってしまうんです。

──“=LOVE史上もっとも儚い失恋ソング”と謳っているだけあり、アイドル曲としては珍しい救いのない展開ですね。

音嶋 これまで=LOVEの曲は明るい王道なものが多かったので、メンバーみんなの新しい一面が見れると思います。「ズルいよ ズルいね」(2019年発表の6thシングルの表題曲)も切ない表情で歌う曲だったんですけど、今回のMV撮影などを通してみんなの表現力がホントに上がったなと感じました。「ズルいよ ズルいね」のときよりももっとみんなの儚い表情に説得力がある気がします。

音嶋莉沙

音嶋莉沙

大場 ちなみに、MVの海の底で歌っているシーンは「インディ・ジョーンズ」に出てくるような地底みたいな場所で撮ったんですよ。凍りつくぐらい寒かったよね。

佐々木 洞窟のような採石場でした。そこにセットを作っていただいて。気温は3℃くらい? 体感ではもはやマイナスだった。

大場 寒いからみんな鼻が赤くなってきちゃって、それがかわいかったです(笑)。

大場花菜

大場花菜

佐々木 泣いたあとみたいで、それはそれで曲に合ってたけどね(笑)。