4人組ガールズロックバンド・エルフリーデが4月に1stアルバム「real-Ize」でメジャーデビューを果たした。みくる(Vo)、山吹りょう(G)、星野李奈(B)、ゆーやん(Dr)からなるエルフリーデは2017年8月に結成。サウンドプロデューサーにピアノギターロックバンド・Quintの小田内志徳を迎え、キャッチーで力強いメロディとポップさを兼ね備えたロックサウンドでファンを魅了している。
音楽ナタリーではエルフリーデのメジャーデビューを記念した特集を展開。「real-Ize」や今後の展望について言及してもらったインタビューに加え、4月に東京・The DOORSで行われたライブイベント出演時のバンドの1日を追ったレポートを掲載する。
取材・文・撮影(インタビュー、ライブ写真) / 田中和宏
メンバー自己紹介
──結成から1年8カ月という早さでメジャーデビューをしたということで、まずバンド結成の経緯から聞かせてください。
星野李奈(B) もともと私がいろいろなアーティストの方のサポートをしながらソロで活動していて山吹りょうちゃんがやっていたバンドをサポートする機会もあったんです。りょうちゃんはすごくいいギターを弾くし、見た目にも華があっていいなと思い、声をかけて一緒にバンドをやることになりました。しばらくは2人だけで活動していたんですけど、楽曲制作やライブなど活動のすべてを自分たちで管理するのが大変だと感じていて。プロデューサーの小田内志徳さんが地元埼玉で素敵な音楽を作っていたので、楽曲制作のプロデュースをお願いできたらすごくいいバンドになると思い、お誘いしたら承諾していただけました。それから本格的なメンバー探しを始めて、知り合いの紹介でみくるちゃん、私とりょうちゃんのもともとの知り合いだったゆーやんを入れてこの体制になりました。
──では皆さんそれぞれ自己紹介をお願いします。
ゆーやん(Dr) ドラムのゆーやんです。好きなものはお酒です!
山吹りょう(G) 音楽の話じゃない(笑)。
ゆーやん あーそうか(笑)。音楽はマキシマム ザ ホルモンがずっと好きで、最近はあいみょんが好きです。音楽のルーツとしては、私はおばあちゃん子だったので、スナックに行くときに付いていって演歌をよく聴いていました。ドラムを始めたのはホルモンのナヲさんを見てカッコいいと思ったことがきっかけです。
山吹 山吹りょうです。普段聴く音楽はメロディがしっかりしていてキャッチーな歌モノです。ギターを始めたのはお父さんの影響で、お父さんが好きだったCharさんはずっと聴いていました。ギターは小さい頃からそばにある環境で育ったので、物心付く頃にはもう触ってました。
みくる(Vo) ボーカルのみくるです。私は小さい頃から歌手になることが夢でした。いとこのお姉ちゃんの影響でロックバンドを聴き始めてからバンドのボーカリストになりたいと思い、現在に至っています。憧れているのはHYの仲宗根泉さんで、ハスキーで芯のある声が大好きです。ちなみに小さい頃は浜崎あゆみさんに憧れ続けて、「ayuになりたい」と思っていたこともありました。
星野 私が音楽を始めたきっかけは、中学の吹奏楽部でクラリネットを始めたことです。音楽にドハマリして、オーケストラに入り、自分で作曲もするようになりました。曲を作るようになったきっかけはL'Arc-en-Cielさんにハマったことが大きいです。DTMで作曲するようになってギターを自分で弾いていたんですけど、ほかにも打ち込みじゃなくて生楽器を入れたいと思ってベースを買ったらしっくりきたので、そこからベーシストになりたいと思うようになって。ポップス、ロックをメインで聴いていましたが、あるときジャズ、フュージョンにどっぷりハマって、ジャズギタリストの矢堀孝一さんに師事してジャズ、フュージョンのフィールドで3年くらい活動していました。りょうに出会ったことでもう一度ポップスをやりたいと思ったので、エルフリーデは自分の原点に戻ってきた感じです。ベーシストとしての師匠は元爆風スランプの江川ほーじんさんで、リスペクトしているベーシストは岡田治郎さんです。
メジャーデビューアルバムについて
──メジャーデビュー作「real-Ize」は昨年6月発表の自主制作盤ミニアルバム「-LOVE &-」収録曲のリテイクと新曲を加えた10曲入りの作品になりました。
みくる 今のエルフリーデがたくさん詰まったメジャーデビュー作になりました。ポップなものからハードなものまで幅広い楽曲が入っています。
星野 1曲目「E.L.F.(album.ver)」はエルフリーデのファンを指す“エルフ”がタイトルになっていて、ファンの方がいるからエルフリーデが存在しているという気持ちが込められています。2曲目の「Starlight」はエルフリーデの代表曲で、キラキラしたポップなギターロックというエルフリーデらしさが詰まっています。リード曲「Orange」もかわいらしくてキラキラした感じです。歌モノでキャッチーなのがエルフリーデらしさではあるんですが、それだけでなくオルタナティブロック系の「Vibration」や、「MONSTER」「FATE」は激しくてエモくてエルフリーデの音楽的な幅広さを感じられると思います。
──リード曲の「Orange」はかわいらしいポップな楽曲ですが、サブリード曲の「Empty」は疾走感があって激しめですね。
山吹 「Empty」は「Vibration」と同じく、ライブ映えを意識した曲ですね。
星野 「Empty」のような曲は私の中では“The小田内節”という感じ。エルフリーデにおける小田内節が入っていて。まずコード進行が王道で、ギターはキラキラとした感じで遊びのあるフレーズが多いけど、スケールアウトすることもなくてカチッとしています。最近の音楽シーンだと王道の曲は減りつつあると思っているんですけど、1990年代から2000年代前半のヒット曲に見られるような王道の進行かつすごくキャッチーなのが小田内節だなと。シンセ音源のキラキラ感、ギターの重厚感が足されて、アレンジは今どきで。
──9曲目「Lost thing,Last song」はドラマチックなロックバラードで、みくるさんの伸びやかな歌声が印象的です。
みくる この曲は自分の中で一番、歌詞の世界に入り込んで歌えました。歌詞の主人公に感情移入してそれを歌で表現するようにしています。この曲は男性視点なのか、女性視点なのかを含めて、いろいろ思いがめぐりました。個人的には一番好きな曲です。
星野 男性目線っぽい歌詞で、出てくる単語が少し古いというかレトロな印象があったので、そのイメージを4人の演奏で表現できるのかわからなくて一瞬悩んだんです。だけどみくるちゃんの歌が入ったらエルフリーデとしてちゃんと表現できていたので、このアレンジで進めてよかったなって。
──山吹さんのギターソロが入った曲もこのアルバムにはいくつか収録されていますね。
山吹 今まであまりガッツリとギターソロを弾くことがなかったんですけど、「Empty」のギターソロはけっこう弾いたなあと思います。ソロのフレーズは小田内さんのデモの段階で決め打ちのときもあれば、ガッツリとしたソロパートがあるときは一緒に考えることもあります。
星野 スウィープとか手グセはけっこう入ってるよね。
山吹 そうそう。手グセもいい感じに織り交ぜたので疾走感が出たんだと思います。
──ラストの「エンドロール」は1曲目と同じ旋律が入っていて、アルバム自体がループするような作りになっているので、アルバム単位でもまとまりのある仕上がりだと思いました。
星野 うれしいですね。小田内さんの狙いはまさにアルバム全体の統一感という部分にもあるので。曲順も小田内さんがメインで決めたんですが、「エンドロール」を最後にしたいというのはメンバーからも意見があったし、最初の「E.L.F.」に戻るのも、アルバムをヘビーローテーションしてくれたらうれしいなと思っていたので、いい流れにできたと思います。
──「エンドロール」はイントロこそ変拍子でパンチの効いたセッションを展開していますが、全体的にはすごくキャッチーでした。
星野 イントロの激しめのセッションは曲にインパクトを与えるために必要だったんです。このイントロをなくしてもいいという意見が制作陣の中でもあったんですけど、小田内さんがどうしても入れたかったということもあって。結果的にイントロがフックになって、ライブ映えすると思うので、ライブでの演奏も楽しんでほしいです。
ゆーやん 「エンドロール」はドラムがけっこう難しいです。リズム隊がグルーヴ重視なので合わせるのが大変。
星野 AメロBメロとサビでグルーヴが違って、サビだけユーロ調なんです。どう表現したらライブでハマるのかは今も試行錯誤中です。
これからのエルフリーデ
──ライブで同期を使っていますが、どのようにグルーヴ感を生み出しているんですか?
ゆーやん そもそも、私はあまりドラムを叩くときに同期のあるなしは気にならないんです。
星野 そう。ゆーやんは叩きたいように叩いているのがよくて、私はそのゆーやんと同期の溝を埋める感じでベースラインを入れています。ゆーやんがクリックに忠実なリズムを刻んだら打ち込みっぽくなってしまうので。リズム隊は知り合ってから長くて、お互いのクセがよくわかっているからやりやすいです。
──ライブで心がけていることは?
山吹 CDとは違った、ライブにしかない体験をお客さんにはしてもらいたいです。CDはCDでじっくり楽しめると思うし、ライブでは空気感だったり迫力を感じてもらえるように。
星野 幅広い世代のファンがいるんですが、最近は若い女性の方もが増えてきました。楽曲的にモッシュが発生したり、振り付けがあったりすることはなくて、どんな方にでも楽しんでもらえるバンドだと思っているので全年齢対象でいきたいです。正直言えば今が一番大変で。エルフリーデはポップの王道を突き進んでいて、ホールでのパフォーマンスが映えそうな楽曲も多いから、ガールズバンドで300人規模のライブハウスで活動している今が一番がんばる必要のある時期ですね。
──チェキ会もあるので、バンドとは言えアイドル的な要素も人気の一因だと思います。
星野 そうですね。でも私たちはCDジャケットにメンバー写真を使用していないんです。それはバンドとして音楽性でしっかり勝負したいからという思いがあるからで。
──なるほど。対バンライブに出演するときに工夫していることはありますか?
星野 対バンライブのたびに手書きフライヤーを作ってました。30数本かな。今はメジャーデビューが決まったので、メジャーという冠に恥じないような演奏をしたいというのが一番にあります。特別にSNSで何かをするようなことはないですが、発言にはみんな気を付けてます。りょうがTwitterフォロワーだけで10万人以上いるので、SNS隊長としてアドバイスをしてもらっています(笑)。
──エルフリーデの目標は?
星野 1つずつ着実にこなしていくことが大事ですね。メジャーデビューは結成から1年8カ月と早かったし、ライブ本数もまだ40本に満たないくらいですが、キャパ的にはワンマンライブで300人を埋めることができました。メジャーシーンのほかのバンドに比べたらまだまだ少ないので、次は600、その次は1000と動員数を今年度中に増やしていきたいです。プロデューサー、スタッフ、KING RECORDSさんがいてのエルフリーデなので全員でしっかり力を付けて、目標をクリアしていけたらと考えています。
──いきなり「日本武道館!」みたいな大きな夢を語ることをせず、足元をしっかり見て進んでいくと。
星野 バンド自体は若いですが、メンバーそれぞれエルフリーデ以前から経験を積んできているし、現実的にそういった大きな夢を叶えることがどれだけ大変かわかっているので、とにかく着実に。ライブにしても少しずつ成長を重ねられたら、自信が付くし、全員で力を付けていければと思います。
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エルフリーデのとある1日@ライブハウス