音楽ナタリー Power Push - 新レーベル「EDP」P*Light×Ryu☆×かめりあ×kors k座談会

新レーベルで日本のダンスミュージックを世界に

レーベルのエンジンを担う

──若手の2人はご自身の役割をどういうものだと考えていますか?

かめりあ 僕は自分をこのレーベルのエンジンだと思っています。レーベルって音楽がないと前に進んでいかないものだと思うので、曲数的な面で僕は力になっていけたらいいなと思っているんです。客観的に見て、コンスタントに年100曲書き続けられる人ってそんなにいないと思うんです。

P*Light それ、完パケで100曲でしょ?

かめりあ

かめりあ そうですね。僕はとにかく曲を作るのが好きなので、曲の量で頼れる存在でいたいなって思ってます。

kors k 曲に困ったらかめりあくんに頼めばいいってことだね(笑)。

Ryu☆ かめりあくんは曲のクオリティはもちろん、書き上げるスピードがハンパないんですよ。彼だけ違う時間軸で過ごしてんじゃないかって思うくらいです。

──確かに7月6日に発売されるかめりあさんのアルバムは、新曲が15曲も入っています。

かめりあ そうなんです。我ながらちゃんと期待に応えられたかな、と思っています。

──P*Lightさんはご自身の役割をどういうものだと捉えていますか?

P*Light 実は僕、 kors kさんやかめりあくんのストイックに音楽を突き詰めていく姿勢をものすごくリスペクトしていて。音楽によし悪しがあるかは議論の分かれるところだと思うんですけど、単純に音楽的なよさではお二人に敵わないと思ってるんです。

kors k 全然そんなことないと思うよ。

P*Light ありがとうございます。でも僕はそれを自覚しているからこそ、違うアプローチで音楽を届けたいなって思っているんです。例えばライブを想定して、イベントに来てくれたお客さんを盛り上げられる曲を作ったり、楽曲の中にファンが思わずニヤリとしちゃう“声ネタ”を入れてみたり。音楽を突き詰めていく方法とは違うアプローチで、みんなに曲を届けていきたいなって思うんです。もちろん基本的にはRyu☆さんの方針に沿った動きをしていくのが一番なんですけど、僕はRyu☆さんの中にも「人に喜んでもらうために曲を作るんだ」っていう理念を感じていて。

Ryu☆ 確かに、そういう風に考えてるね。

左からkors k、Ryu☆、かめりあ、P*Light。

P*Light 自分がやりたい音楽をただ届けるんじゃなくて、まずは聴いてくれる人たちが楽しんでもらえるものを一番に考えて。そのうえで自分がやりたい音楽をどういうふうに乗せていくかって考えられるのが、僕の強みでもあるのかなって思っています。それとこのレーベルで気になっているのがBlackYくんの存在ですね。EDPには本当にいいクリエイターが集まっているからこそ、BlackYくんが今後どういうクリエイターに成長していくのかが楽しみで。僕、会うたびに「このレーベルは君にかかってるからね」ってプレッシャーをかけるんですよ。

──Ryu☆さんはP*Lightさんに期待を寄せて、P*LightさんはBlackYさんに期待を寄せているんですね。

P*Light 上から下に押し付けてるっていう(笑)。いい流れですね。下がいてよかったあ。

Ryu☆ でも将来的にレーベルを担うのが若手であることは間違いないからね。僕ら自身も下の世代から刺激をもらいますし、今後レーベルのメンバーがどう成長していくのか、すごく楽しみですね。

日本らしさ+夏

──7月6日に発表されるレーベルの第1弾アイテムについての話も聞かせてください。2作品同時リリースのうちの1つであるコンピ盤「EDP presents ravemania 2016 summer」には皆さんも新曲を提供しています。

Ryu☆ コンピ盤の参加者には僕のほうから「日本を意識した楽曲をお願いします」とオーダーさせていただきまして。海外の人に聴いてもらうときに「風変わりだけどイイ」って思ってもらえるのが、日本の文化の強みだと思っているんです。変に海外向けに曲を作るのではなくて、自分たちが培った日本人ならではのダンスミュージックをそのまま出すのが面白いかなって。それと明言はしなかったんですけど、タイトルに「summer」って書いてあったから皆さん夏らしい曲を書いてくれました。

kors k

kors k Ryu☆さんからは「日本を意識して」とオーダーをもらったんですが、僕はあまり日本人らしさを気にせずに曲を作りました。なぜかと言うと、どうやっても自分の中から和の要素って出てきちゃうんですよ。僕の書いた曲は「Distant Summer」、そのまま直訳すると「遠い夏」って意味の曲なんですけど、作ってるうちに少年時代の夏休みっぽい感覚がよみがえってきて。曲を聴いた方が少年時代、少女時代の夏休みを思い出してくれたらいいなって思いながら作りました。

P*Light 僕もkors kさんと同じで、日本人っぽさは自然と出るはずだからそこまで意識はしませんでしたね。曲を作る前にコンピ盤の参加者を教えてもらって、このメンツなら僕は渋いダンスミュージックじゃなくて、キャッチーで普段あまりダンスミュージックに触れていない人でも入ってきやすいものを作るべきかなと思ったんです。あと今回の「ravemania」には、「summer」っていうサブタイトルが入っていたので、思い付く限りの夏っぽい音を全部入れちゃえ!と思って作ったのが「FUNNY SUMMER VACATION」ですね。メロディに琉球音階を取り入れてみたり、声ネタもうるさいのをバンバン入れて。「日本を意識して」って言われてるのに気が付いたらサンバホイッスルも入れてました(笑)。

Ryu☆ メチャメチャ夏らしい曲になったよね。

P*Light

P*Light 実は「jubeat」に書き下ろした「FUNKY SUMMER BEACH」って曲のテイストも引き継いでいて。音ゲーファンにも聴いてほしい曲ですね。

──レーベルの主宰者であるRyu☆さんもコンピ盤に新曲を書き下ろしています。

Ryu☆ 実は僕 “現代版の「dancemania」”を作りたいなっていう思いから、この「ravemania」シリーズを立ち上げたんです。「dancemania」のようないろんなジャンルの曲が入ったコンピ盤って、今あんまりないんですよね。僕が書いた新曲「Over Drive」は、速くて四つ打ちでキャッチーという「dancemania」で言うと最後のほうに入っていそうな曲を意識して書いたものです。

P*Light かめりあくんはどんなことを意識してコンピ盤の新曲を書いたの?

かめりあ 僕はストレートに日本の夏をイメージして「yamabiko」って曲を書きました。サウンド的にはダブステップをベースにしたものですが、実は1つ仕掛けがあるんです。「ravemania」と同時発売される僕のアルバム「MEGANTO METEOR」にも1曲、「kodama」という和風の曲が入っていまして。「yamabiko」には「kodama」のフレーズが、「kodama」には「yamabiko」のフレーズが入っていて、兄弟曲みたいになってるんです。

Ryu☆ やっぱりセルフプロデュース力があるよね。こういうことを発想できて、ちゃんと形にできてますから。

かめりあ ありがとうございます。せっかくアルバムと一緒に、自分が参加したコンピ盤が同時リリースされるわけですから、何もやらないのはもったいないなと思っていまして。それで思い付いたのがこの2曲なんです。

Ryu☆ EDPのメンバーにはアレコレ言わなくて大丈夫なんですよ。むしろ何も言わないほうがいいかもしれない。本当に面白いものがちゃんと出てきますから。

EDP presents ravemania / MEGANTO METEOR Release Party
2016年8月21日(日)東京都 CIRCUS Tokyo
<出演者>
Ryu☆ / kors k / かめりあ / HyperJuice / DJ WILDPARTY / and more
Ryu☆(リュウ)

男性トラックメーカー。2000年、KONAMIの音楽ゲーム「beatmania IIDX 3rd style」の公募に送った楽曲が同ゲームに採用され、以来「beatmania」シリーズの主力クリエイターとして活躍。2009年にRyu☆名義の1stアルバム「starmine」を発表して以来、ゲームのサントラを多数手がけている。またその一方でトラックメーカーStarving Trancerとプロデューサーユニット、Another Infinityを結成。「beatmania」シリーズに楽曲を提供するほか、女性ボーカリストDaisy×Daisyの歌うテレビアニメ「FAIRY TAIL」のオープニングテーマ「永久のキズナ」を制作し、Another Infinity feat. Mayumi Morinaga名義でアニメ「ゆゆ式」エンディングテーマ「Affection」を発表している。2016年2月、ベストアルバムとして「Ryu☆BEST -STARLiGHT-」「Ryu☆BEST -MOONLiGHT-」の2作品を同時リリース。また同年4月には自身が主宰する新レーベル・EDPを新設した。

kors k(コースケ)

音楽プロデューサー、アーティスト、DJ。10代の頃からシンセサイザーで楽曲制作を始め、2000年にKONAMIの音楽ゲーム「beatmania IIDX 4th Style」に提供した「Clione」でデビュー。「beatmania」シリーズの主力トラックメーカーとして楽曲を提供し続けながら、アニメ関連の楽曲やJ-POPのリミックスなどを手がけ、トータルで400曲以上におよぶ楽曲群を世に送り出している。teranoidやEagle、StripE、Ryu☆とのユニット・The 4thといった名義でも活動。現在はDJとしてクラブやイベントのステージでも活躍しており、国内のみならずアメリカやアジア各国でもライブを重ねている。2014年6月に、アルバム「Let's Do It Now!!」をリリース。2015年3月に前作のリミックス音源と新曲を収めた「Let's Do It Again!!」を発表した。

P*Light(ピライト)

2007年より音楽制作を開始。トラックメーカー、DJ、リミキサーなど活動は多岐にわたり、KONAMIの音楽ゲーム「BEMANI」シリーズに多数の楽曲提供を行っている。beatnation RHYZE、HARDCORE TANO*Cといったレーベルのメンバーとしての活動のほか、自身のレーベル・pichnopopより精力的に音源を発表している。

かめりあ

音楽プロデューサー、トラックメーカー。2013年に行われたKONAMIの公募企画「KONAMI Arcade Championship 2013」のオリジナル楽曲コンテストで、最優秀賞を獲得。2014年に設立された音楽レーベル・beatnation RHYZEの一員となり、音楽ゲーム「BEMANI」シリーズに数々の楽曲を提供する。2016年4月にはkradnessとのユニット・Quarks名義でのミニアルバム「Dualive」を発表。また同年7月にはRyu☆が主宰する新レーベル・EDPよりニューアルバム「MEGANTO METEOR」をリリースした。