音楽ナタリー Power Push - 新レーベル「EDP」P*Light×Ryu☆×かめりあ×kors k座談会
新レーベルで日本のダンスミュージックを世界に
「一生のうちにこの一度だけ」を相手に
──レーベルが立ち上がるまで、「EDP」という言葉は「EXIT TUNES DANCE PARTY」というイベント名の略称として使われてきました。新レーベルの名称は「EXITTUNES Dance Production」の略称ですが、あえて同じ言葉にしたんですよね?
Ryu☆ そうですね。イベントのことしか知らない人が「EDP」っていう3文字を見たときに反応してもらえると思って。今後は僕らレーベルが主導でイベントの「EDP」も開催していきますし、時代の流れとしてCDを出すだけではなくて、イベント開催やグッズ展開まで含めて、なんでもやるってことがこの「EDP」という言葉で伝わらないかな、という期待も込めています。
──今日集まっていただいた皆さんはイベントの「EDP」にも毎回参加しています。イベントの「EDP」についてはどういう思いを持っているのですか?
P*Light 特別なお祭りって感じですね。イベントに出るときは出順とか、タイムテーブルとかを把握して、僕に求められているのはなんだろうっていうのをメチャクチャ考えます。「EDP」って何千人っていう人が会場に来てくれるので、僕を目当てに来てない人もたくさんいるわけです。裏を返せば自分を売り込むチャンスなわけですから、どれだけの人を振り向かせられるかっていうのをものすごく意識してます。MCとかも前日のうちに携帯にメモって。
Ryu☆ いつもP*LightのMCにはやられるんですよ。うまいよね。
kors k 去年の「EDP」でP*Lightくんのステージを控室で観てたんですけど、「もう僕らやることなくなっちゃった」って話してました(笑)。
P*Light MCはすごく時間をかけて考えますね。「何かいいこと言わなきゃー」って(笑)。DJの感覚だとどうしても即興で盛り上げようとする傾向にあると思うんですけど、僕はショーケースとしてしっかり作り込んだパフォーマンスをしたいと思うタイプなので、自分の中でしっかり何をするか、何を話すかを固めてからステージに立つことが多いですね。かめりあくんはイベントのときにどういうことを意識してるの?
かめりあ 僕がイベントに出る際に一番に考えているのは「ケガをしないこと」ですね。
一同 (笑)。
かめりあ というのも、僕がイベントに出るときって「EDP」のような出演者がたくさんいるときか、ゲストで呼ばれるパターンが多いんです。例えばDJイベントの場合だと、順番によっては会場を6、7割温めるくらいの役割を任せられる人もいると思うんですが、僕の場合は様子見をしないでいいというか、全力を出してもいい場合が多くて。だからMCで煽ったり、ヘッドバンギングを激しくやったり、自分の100%をお客さんに伝えようとしています。会場には「かめりあのパフォーマンスを観るのは一生のうちにこの一度だけ」っていうお客さんもいるかもしれないわけですから、そういう人に100%を見せなきゃいけないって。
kors k 「一生のうちにこの一度だけ」っていうお客さんに向けてパフォーマンスするのってすごい意気込みだよね。
かめりあ 僕、DJが終わったあとに立てなくなっちゃうことがけっこうあるんですよ。でも100%出し切って、もしケガをしてしまったら、曲作りにも支障をきたしてしまう。なので、ケガだけはしないようにっていうのを意識してます。
アジアとアメリカの反応の違い
──Ryu☆さんとkors kさんは、5月に海外で「EDP」のイベントに出演しています(参照:アメリカでの「EDP」ライブにRyu☆、kors k、kradness出演)。海外での手応えはいかがでしたか?
kors k 4月は上海と台湾に、5月はオーランドとダラスの計4都市に行かせてもらったんですけど、アジアとアメリカではちょっと反応が違ったんです。アジアでは音ゲーのユーザーが集まってくれてる印象で、僕らのステージでものすごく盛り上がってくれました。それと違ってアメリカはみんな騒ぎたくて会場に遊びに来ている感じで。
Ryu☆ アメリカではお客さんが輪を作ってダンスバトルを始めたり、完全にパーティとして楽しんでくれていた印象ですね。お酒を飲みながらビートに乗って、女の子をくどいている人もいて。本当にクラブみたいに楽しんでもらえました。
kors k ライブというより本来の意味でのDJイベントに近かったですね。場所によって来てくれる人も変わりますから、例えばその国で流行したアニメに関連した曲を意識してみるとか、ローカライズすることはすごく大事だなっていうのを感じましたね。
Ryu☆ 国内でこれまでやってきた「EDP」がどちらかと言えばコンサートっぽくなっているんです。何千人ものお客さんがDJのほうを向いて盛り上がってくれることが国内では多くなったけど、アメリカの現場ではみんな思い思いのほうを向いて音楽を楽しんでいて。彼らの反応を見ながら曲をかけていくのも面白かったですし、レーベルが立ち上がったばかりのこの時期に海外でステージに立たせてもらったのはいい経験になりました。
P*Lightがいるからいっか
──今日お集まりいただいた皆さんは、レーベル内でのご自身の役割をどのようなものだと認識されているんでしょうか?
Ryu☆ 僕は主宰者なので、完全にプロデューサーの立ち位置ですね。ただお金をたくさん使って音楽が届けばいいっていうだけではなくて、しっかりマネタイズまで考えて、アーティストや関係者に還元されるようにしなくちゃいけないと考えています。海外のことばかりではなくて、もちろん僕らは今後もしっかり音楽ゲームに曲を提供していきたいですから、タイアップの調整なんかもしていますし。レーベル全体を総合的に見て動く役割になると思います。
──トラックメーカーとして曲も作るんですよね?
Ryu☆ 曲を作りたい欲求はあるんですけど、自分の動き方が変わるときが来たかなって考えているんです。これまでだったら1年に1枚アルバムを出して、それに付随してゲームの曲をいろいろ書くっていう流れがあったんですけど、今は次世代の若いクリエイターがいい曲を作ってくれることが頼もしくて。例えばP*Lightくんは僕の曲を聴いて音楽を始めてくれた人なんですけど、そういう人が出てくれるのってどこか子供ができたような感覚なんですよね。彼はしっかりいいトラックを作ってくれるし、頭のどこかで「P*Lightがいるからいっか」って思ってるところもあります。
P*Light メチャクチャうれしいですね。ありがとうございます。
Ryu☆ だから彼らのような若い世代に仕事を持ってきたりするのも悪くないんじゃないかなと思って、EDPというレーベルを作ったところもありますね。
kors k じゃあP*Lightくんがいなかったら、このレーベルは生まれていないかもしれないんだ。
──Ryu☆さんが真っ先に声をかけたkors kさんはレーベル内でどういう立ち位置になるんでしょうか?
Ryu☆ kors kにはプロデュース面でアドバイスをもらったりしています。レーベルの主軸は僕とkors kの2人ですから。
kors k もちろんプロデュース面で力になれればと思っていますし、ライブや楽曲面ではけっこうRyu☆さんとの対比を意識してる部分もあるんです。Ryu☆さんはスーパースター的な立ち位置、ド直球でメインストリームな曲をやるっていうイメージなんですけど、僕はそこと少し違って、多少エモい曲や流行を取り入れた曲など、自分にしか出せない曲を発表していければと思っています。
Ryu☆ 例えばコンピ盤の参加者を決めるときとか、kors kのアドバイスを頼りにする機会は多いですね。
kors k 僕は昔から音楽に関してミーハーな部分がありますから、流行の音楽をチェックしてトレンド的なものをRyu☆さんに提示していけたらいいなって考えています。
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- EDP presents ravemania / MEGANTO METEOR Release Party
- 2016年8月21日(日)東京都 CIRCUS Tokyo
- <出演者>
Ryu☆ / kors k / かめりあ / HyperJuice / DJ WILDPARTY / and more
Ryu☆(リュウ)
男性トラックメーカー。2000年、KONAMIの音楽ゲーム「beatmania IIDX 3rd style」の公募に送った楽曲が同ゲームに採用され、以来「beatmania」シリーズの主力クリエイターとして活躍。2009年にRyu☆名義の1stアルバム「starmine」を発表して以来、ゲームのサントラを多数手がけている。またその一方でトラックメーカーStarving Trancerとプロデューサーユニット、Another Infinityを結成。「beatmania」シリーズに楽曲を提供するほか、女性ボーカリストDaisy×Daisyの歌うテレビアニメ「FAIRY TAIL」のオープニングテーマ「永久のキズナ」を制作し、Another Infinity feat. Mayumi Morinaga名義でアニメ「ゆゆ式」エンディングテーマ「Affection」を発表している。2016年2月、ベストアルバムとして「Ryu☆BEST -STARLiGHT-」「Ryu☆BEST -MOONLiGHT-」の2作品を同時リリース。また同年4月には自身が主宰する新レーベル・EDPを新設した。
kors k(コースケ)
音楽プロデューサー、アーティスト、DJ。10代の頃からシンセサイザーで楽曲制作を始め、2000年にKONAMIの音楽ゲーム「beatmania IIDX 4th Style」に提供した「Clione」でデビュー。「beatmania」シリーズの主力トラックメーカーとして楽曲を提供し続けながら、アニメ関連の楽曲やJ-POPのリミックスなどを手がけ、トータルで400曲以上におよぶ楽曲群を世に送り出している。teranoidやEagle、StripE、Ryu☆とのユニット・The 4thといった名義でも活動。現在はDJとしてクラブやイベントのステージでも活躍しており、国内のみならずアメリカやアジア各国でもライブを重ねている。2014年6月に、アルバム「Let's Do It Now!!」をリリース。2015年3月に前作のリミックス音源と新曲を収めた「Let's Do It Again!!」を発表した。
P*Light(ピライト)
2007年より音楽制作を開始。トラックメーカー、DJ、リミキサーなど活動は多岐にわたり、KONAMIの音楽ゲーム「BEMANI」シリーズに多数の楽曲提供を行っている。beatnation RHYZE、HARDCORE TANO*Cといったレーベルのメンバーとしての活動のほか、自身のレーベル・pichnopopより精力的に音源を発表している。
かめりあ
音楽プロデューサー、トラックメーカー。2013年に行われたKONAMIの公募企画「KONAMI Arcade Championship 2013」のオリジナル楽曲コンテストで、最優秀賞を獲得。2014年に設立された音楽レーベル・beatnation RHYZEの一員となり、音楽ゲーム「BEMANI」シリーズに数々の楽曲を提供する。2016年4月にはkradnessとのユニット・Quarks名義でのミニアルバム「Dualive」を発表。また同年7月にはRyu☆が主宰する新レーベル・EDPよりニューアルバム「MEGANTO METEOR」をリリースした。