ドレスコーズ|演劇に目覚めた志磨遼平が考える、新たなロックンロールの姿

本来ライブではやったらアカンことですよね

──「dresscodes plays the dresscodes」の終盤は「欲望」でハッピーエンドを迎えると思いきや、志磨さんはバンドメンバーの福島健一さんに銃で撃たれてしまいます。そして「ダンデライオン」で過去の幸せな思い出を回想し、フィナーレを迎えます。ここはバンドメンバーが唯一志磨さんのパフォーマンスに介入するシーンでした。

志磨遼平

もともとは、器用な有島(コレスケ)くんにこの役を振ろうかと考えていたんですけど、不器用そうな健さん(福島健一)がやおら立ち上がって、グッと銃を構えたらめっちゃ怖いじゃないですか(笑)。なのでここは健さんにお願いしました。そのシーンで音楽がブツッと切れてしまうんですけど、一番いいところで演奏を止めるということは、本来ライブではやったらアカンことですよね。演奏家として一番恐ろしいこと。でも演劇では、それまでつながってきた空間を突然断ち切ってしまう効果があって。あえてクライマックスで、この演出をやってみようと思ったんです。

──このラストシーンは「三文オペラ」とは真逆の展開ですよね。「三文オペラ」は主人公のメッキー・メッサーが処刑されるかと思いきや、「ちょっと待ってください」といったん物語がストップされ、これまでの物語の展開をひっくり返し、処刑を免れてハッピーエンドで終わります。逆に「dresscodes plays the dresscodes」は大団円でフィナーレを迎えると見せかけて、とても悲しい結末を迎えてしまう。

ラストシーンでは、「三文オペラ」へとつながるような余韻を残したかったんです。別れたはずのマックとジェニーがまたどこかで出会うよう、物語を回収できたら面白くなるんじゃないかなって。KAAT版「三文オペラ」のジェニーは気がふれてしまった娼婦だけど過去にはマックと同棲していたらしい、という設定があって。つまり、2人の間には相当もつれた過去があったんだろうなと(笑)。それで今回のライブでは「2人の過去」を勝手に二次創作して、ストーリーの軸にしたんです。

──「Mary Lou」ではマックとジェニーの出会い、「ラストワルツ」「towaie」では2人の別れ、「さよならべイビー・ブルー」では娼婦となるジェニーの心情が描かれます。さらにこの一連の展開から、マックとジェニーが子供から大人になる成長も描写されています。

「ラストワルツ」と「towaie」はどちらも男女がワルツを踊っている場面を歌った曲なんです。発表した時期は違うし、同じシチュエーションにしようと考えて作った曲ではなかったんですけど、「ラストワルツ」と「towaie」に登場する男が同じ人物やとしたら……という設定を作り、今回のライブでつなげてみました。僕の楽曲は「ワルツ」とか「パリ」とか、ボキャブラリーが偏ってるんですよね(笑)。でも災い転じて福となりまして、うまいことつなげることができました。

まさかの拍手に、自分が一番びっくり

──もう1つ、アンコールが終わったあとに「おわりに」が流れる演出も見どころです。ステージに誰もいなくなり、あの楽曲が流れることで、今回の物語をどのように解釈したか、観客たちに問いかけているように感じました。

志磨遼平

演劇は「はたしてこの行動にどんな意味があるのか?」と、お客さんに考えることを強いるんですよ。伏線や結末を説明しないで、お客さん自身で考えるからこそ生まれる楽しさはいいですよね。あと、「おわりに」は今回のツアーのテーマにとても密接に関わる楽曲でして。今回のライブは「play」という言葉をテーマに掲げているんですけど、この言葉にはお芝居だとか演技、あるいは演奏という意味が込められていますよね。でもどこからがライブで、どこからがお芝居なのかは誰にもわからない。

──特に今回のライブパフォーマンスは、ライブなのか演劇なのか言い切ることができないものでした。

演劇って、自分とは別の人格を演じますよね。「三文オペラ」の稽古でも、演出家が「やってみよう! ハイッ!」って手を叩くと、みんな人格がパッと変わる。それでまた手を叩くとフッと素に戻って、「どういうふうに演じたの?」とか話し合ってて、すごいなーって感じて。

──まるで人格が変わるような瞬間に興味を持ったと。

降霊術とかイタコを見ているみたいだった。そのとき「待てよ、祈りも『pray』だったな。どちらも『プレイ』と読むから、語源は近いんじゃなかろうか」と調べてみたら、どうもそのようで。僕らの“ライブ”と“祈り”が同じ行為だとしたら、これは意味深だぞと思っていたら、数年前に作った「おわりに」の歌詞で「あそびのふりして」「祈り だったのね」とすでに自分で書いてたんです。「わっ! もう書いてるやん!」ってびっくりした。

──そこで今回のテーマとつながったんですね。

当時はまったく違う意図で書いたんですけど、読み返してみたらまさしくそうだと思って、ライブの一番最後に流したんです。終演後、お客さんが退場する時間のことを「客出し」って言うんですけど、「おわりに」は客出しのBGMとして人知れず流すつもりだったんですよ。それが当日になったら、照明さんがめっちゃ気合いを入れてしまって(笑)、本編中に使わなかった巨大なミラーボールをここぞとばかりに回してくれて。そうしたらお客さんもハッとしたみたい。僕らはステージ降りて楽屋に戻ってて、お客さんはもう帰ったと思ってたんですけど、しばらく経ったらウワーッて万雷の拍手が聞こえてきて。「何事?」「今ステージに誰おんの?」って思いましたよね(笑)。

──狙ったわけではなかった(笑)。

それでみんなが「おわりに」を帰らずに聴いててくれたんだって気付いたんです。あそこまで感動的なシーンになるとは思ってなかった。本当はお客さんのうちの何人かが会場を出る間際に「あっ、今回のライブのテーマはこの曲につながってたのか」って気付いたらしめしめ、ぐらいに思ってたので。あれ、自分が一番びっくりしました(笑)。

志磨遼平、今度は「死」を描く

──「どろぼう ~dresscodes plays the dresscodes~」のパッケージは文字だけが書かれたシンプルなケースに、バラの花びらの造花が同梱されています。ライブでもたくさんバラの花びらが飛び散っていたので、あのステージをそのままパックしたような装丁になっていますね。

キザなパッケージですよね(笑)。今回のツアーは、回を重ねるごとにお客さんがお花を持ってきてくれるようになって、ステージがどんどん花だらけになって(笑)。それが一種の象徴になったから、「お花の写真か絵にする?」とかスタッフと話しているうち、「いや、いっそお花入れない?」って僕が言い出して。それでバラの造花の花びらだけを作ってもらって、ケースやディスクに色移りしないか、高温多湿でも耐えられるか、いろんなテストをクリアして、史上初の花入りパッケージになりました。

──高級感もあって、素敵ですね。

とってもいいですよね。

──それから本編は楽曲の歌詞を字幕表示することができ、より物語に没入できるものになっていました。

字幕を使った演出も、本当はライブ中にやってみたかったんです。プロジェクションマッピングみたいに投影して、ずっと歌詞が横に出てたら面白いな、とか。あと、オープニングのここぞのタイミングでタイトルバックがドーン!と出てくる演出とか、いろいろ盛り込みたかったんですよね。でも演劇と違って、ライブハウスは各会場でステージの規格が違うから難しくて。代わりに映像作品で字幕の演出を採用しました。

──最後に、グラン・ブーケ盤の冊子に掲載されている谷賢一さんとの対談で、志磨さんは次回作に関してお話ししていました。今度のテーマは「死」になるそうですが。

志磨遼平

ついさっきもスタッフと打ち合わせしたところで、非常に渋い反応をされました……。

──壮大なテーマを掲げましたね……。

すごいところまで来てしまいましたよ(笑)。今頭の中にある構想が果たして音楽になるのか、これから実験していきますので、楽しみにしていただけたらうれしいですね。