音楽ナタリー Power Push - ドラマチックアラスカ

関西バンドシーンを担うための一歩

デモ作りマシーンと化していた

──「阪急河原町駅の9番出口」という具体的なイメージと、それにまつわるストーリーはけっこう前から構想していたんですか?

はい。仮歌詞は決まっていたんですけど、それをきれいにアウトプットするためギリギリまで言葉を磨き上げる作業をやっていましたね。亀田さんに「絶対仮歌詞は書いたほうがいい」って教わるぐらい、それまではレコーディングの直前まで歌詞がないことが多かったんです。でもこの曲は京都の歌っていう全体のイメージは早い段階から決まっていたし、メンバーにも伝えていたんですよね。メンバーも亀田さんも、この曲に関してはイメージしやすかったと思います。

──どこか別れをイメージさせる歌詞はもちろん、かなり歌い上げていることも新鮮でした。

ヒジカタナオト(Vo, G)

けっこうキーが高いんですよね(笑)。ただようやく自分の声のおいしいところがわかってきたところもあって。単純に技術が上がってきたっていうのもあると思うんですけど、いろんな経験を経て人間力みたいなものも上がったのかなって。その辺りは歌にも出ている気がします。

──で、その「河原町駅」をリード曲として、ミニアルバムを作ろうっていう話になっていったのですか?

最初「河原町駅」はシングルで出す話もあったんですけど、「思いのほかいい曲が出そろったね」っていう話になって、結果的にミニアルバムになったんです。去年の夏、僕はデモ作りマシーンと化していたんですよね(笑)。亀田さんに提出するもの以外にもたくさん曲を作ってました。

──そこから選りすぐりの7曲が本作に収録されたと。

そうですね。で、「河原町駅」は僕らとしてはけっこうな挑戦をしたつもりだったので、ほかの曲でもいろいろ挑戦しようって感じになりました。亀田さんと一緒に作った「河原町駅」の完成度が高すぎて、それだけ目立ってしまうのも悔しいので。今回のミニアルバムに入っている7曲は、これまでの僕らのサウンドとはまた違った、個性的なナンバーになっていったんですよね。その際たるものが「ニホンノカブキ」という曲なんですけど……。

「ニホンノカブキ」が流れたらどんな気持ちになるんかな

──アップテンポな楽曲に一旦区切りをつけると言っていたのに、この「ニホンノカブキ」は超アップテンポなナンバーで(笑)。

ははは(笑)。いつもの僕らやったらこれがリード曲になりそうだけど、今回は「河原町駅」がミニアルバムの顔になっているので、最初はボーナストラックくらいのつもりで作っていたんです。

──というと?

ヒジカタナオト(Vo, G)

だって、ふざけ倒してるじゃないですか(笑)。バックにはお囃子とか、「アラスカ屋!」とかいう掛け声も入ってますし。でも曲順を決めるとき、1曲目に「ニホンノカブキ」を入れたくなったんですよね。ジャケットデザインを見て「かわいいバンドかな?」って聴いてみて、この曲がいきなり流れたらどんな気持ちになるんかなって気になって(笑)。

──なるほど(笑)。リード曲がすでにできあがっているからこそ、歯止めが効かなかったところもあった?

それは完全にありますね(笑)。もうやりたい放題やれたので。でもこの曲、いいアイデアを盛り込めたかなって思っているんですけどね。

──“和”っぽいものっていうのは最初から意識していたのですか?

「河原町駅」が京都の話で、ライナーノーツの写真も京都で撮ったので、なんとなく和のイメージはありました。でも作っていたときに「なんかこの曲って歌舞伎っぽいな」って思ったんですよね。それで仮タイトルを「歌舞伎」にしてたら、そのままそのイメージに引っ張られて、こういう曲になってしまった(笑)。

──ははは(笑)。

もうちょっとカッコいいタイトルも考えてたんですけど、曲ができあがったとき普通にカッコつけても面白くないなと。これぐらいちょっとマヌケなほうが僕らっぽいし、「ニホンノカブキ」はそれぐらいがちょうどいいと思ったんですよね。

──歌詞についてはどうですか?

歌詞もかなり遊んだというか、自分でもよくわかってない言葉をいろいろ入れてみて(笑)。パズルみたいに組み立てたので楽しくやれましたね。

──ちょっと“外国人が見た日本”みたいなイメージもありますよね。

それも狙ったところがあって。このタイトルだったら外国の人も観てくれるんじゃないかなっていう(笑)。

──なるほど(笑)。実はそういう悪ノリ、けっこう好きなほうですよね。

悪ノリ大好きです(笑)。「無理無理無理」もそんなスタンスだったし。

僕らにとってのロックって何やろう?

──そんな「ニホンノカブキ」のあと、2曲目には「人間ロック」が入ってますよね。この曲はヒジカタくんなりに「ロックとは、なんぞや?」ということを考えた歌詞とのことですが、このテーマで書こうと思ったのは?

この曲を作っていた頃、僕が大好きなthe pillowsが「About A Rock'n'Roll Band」っていう曲を発表したんです。彼らが考えるロックンロールが歌われていたんですけど、そこで今の僕らにとってのロックって何やろうっていうのを、人生経験が浅いなりに考えてみたいと思ったんですよね。

ヒジカタナオト(Vo, G)

──アンサーソングを。

はい、勝手に(笑)。いつかまた同じテーマで曲を作ってみたいですけど、とりあえず1回、自分にとってのロックを考えてみたんです。あとは最近、楽しければいいじゃんっていうメッセージのバンドが多過ぎるというか……。夏フェスとか、そういうバンドばっかりでつまんないなって思うことがあって。

──ドラマチックアラスカは「楽しければいいじゃん」っていうメンタリティのバンドではないですよね。

そうですね。どっちかといえばパーティピーポーになれなかった人たち(笑)。だから僕らがやるのはそこじゃないなって思っていて。とはいえMCで真面目な話ばっかりするのも違うでしょうし。

──なるほど。じゃあ、ヒジカタくんの理想とするライブっていうのはどういう感じ?

僕らとしてはお客さんがまた明日がんばれるひと言を言えたり、大事なことについて考えるきっかけを与えられるライブをしたいと思っています。もちろん楽しいっていうのも必要なんですけど、そこだけじゃダメだなって。自分たちはそういうことも考えながらバンドをやってるんだぜっていうのは「人間ロック」の中でも伝えたかったメッセージの1つですね。

ミニアルバム「アラスカ・ベリーズ」 / 2016年4月6日発売 / 1944円 / LD&K Records / Pacific Records / LDCD-50133
「アラスカ・ベリーズ」
収録曲
  1. ニホンノカブキ
  2. 人間ロック
  3. なんでもないうた
  4. Aのテーマ
  5. ずるい
  6. 河原町駅
  7. 忘れないでね
アラスカナイズワンマンツアー2016 ~摘みたてベリーおすそわけツアー~
  • 2016年6月11日(土)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
  • 2016年6月12日(日)岡山県 IMAGE
  • 2016年6月18日(土)北海道 CLUB DUCE
  • 2016年6月25日(土)広島県 SECOND CRUTCH
  • 2016年7月9日(土)香川県 DIME
  • 2016年7月10日(日)福岡県 LIVE HOUSE CB
  • 2016年7月16日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2016年7月18日(月・祝)石川県 vanvanV4
  • 2016年8月11日(木・祝)東京都 LIQUIDROOM
  • 2016年8月23日(火)宮城県 仙台MACANA
  • 2016年8月24日(水)新潟県 CLUB RIVERST
  • 2016年9月10日(土)大阪府 なんばHatch
ドラマチックアラスカ
ドラマチックアラスカ

同じ高校に通っていたヒジカタナオト(Vo, G)、マルオカケンジ(B)、ニシバタアツシ(Dr)によって、2010年に結成されたギターロックバンド。神戸を中心に活動し、2013年6月に1stミニアルバム「ドラマチックアラスカ」、同年11月に2ndミニアルバム「オーロラを待っている」をリリースした。2015年1月に新体制となり、サポートメンバーとして爆弾ジョニーのキーボーディスト、ロマンチック☆安田がギタリストとして加入。7月に4枚目のミニアルバム「アンカレッジ・シティー・ポップ」を発売し、2016年2月にシングル「人間ロック」、4月に5枚目のミニアルバム「アラスカ・ベリーズ」を発表した。