ナタリー PowerPush - DJ TASAKA

長いキャリアを経てついにたどり着いた、初めての「オリジナルアルバム」が完成

バカさをどうやってオブラートに包んだかの違いだけ

インタビュー写真

──最初に作った曲は「Heart Shaped One」だったと仰ってましたが、この曲はPVを作っていますし、アルバムの中でリードトラック的な位置付けなんですね。

そうですね。じゃあこんな感じでアルバム作りを始めてみるか、みたいなイメージができた曲でしたからね。PVの最後のほうとか、何をしてるかわかりましたか? すごく根本的な問題だけど(笑)。

──水族館のイルカの映像と、緑色になったTASAKAさんとかが混ざっていて……、なんというかアンビエントな感じで……。

そうですよね、うん。とても1回じゃ咀嚼できない、わけのわからないことが行われてるんですよね、なんか(笑)。宇川(直宏)君にPV作ってもらったんですけど、曲調が90年代前半のノリだったので、あえて今イルカを登場させようって話をしたんです。イルカのアイコンなんて今やもう完全に死語みたいなもんじゃないですか。

──ああ、ラッセンみたいな(笑)。

宇川君も同じように言ってたんですけど、「TASAKA君がそこまでイルカがいいって言うならやりましょう! 一度死んだものを生き返らせられるみたいな気持ちでいきます!」ってことになって。

──(笑)。

じゃあ水族館だね、っていうことでとりあえず新江ノ島水族館っていうところについて調べたんですね。そうしたらそこ、水中結婚式っていうサービスやってるんですよ。コバンザメとかエイとかがいる水槽にアクアラング付けた新郎新婦がやってきて、ガラスの外で御両家が見ている前で指輪の交換をするっていう(笑)。それ聞いて「バカバカしくて良いねぇ。サマー・オブ・ラブ感があるよねぇ」ってことになって。だからこのPVは「サマー・オブ・ラブで盛り上がっちゃったバカップルが、最終的にその場でゴールイン」っていう内容なんです。

──そんなコンセプトが……(笑)。

「そんなんわかるか!」って話ですよね(笑)。でも気持ちいいでしょ。見た感じは夏っぽくて。とにかくなかなか1回じゃ咀嚼できないと思うので、ぜひ初回限定盤を購入していただいて、DVDの溝がなくなるくらい観てもらえれば(笑)。

──これまでのTASAKAさんのPVって、基本的にどれも「バカだなぁ~(笑)」っていうイメージだったので、そういう意味でも意外性はありました。

そうなんですよね。でもね、今回のはバカさのオブラートの包み方が違うだけで。DVDに関しては本当に、他に類を見ないくらい強烈にバカバカしい映像集になってるなって思いますよ。

──特に今回はCDがクールなイメージだからか、PV集のバカっぽさが際立って感じました。CDとDVDでは雰囲気にかなり差がありますよね。

ああ、なるほどそうか。確かに音とは距離があるかもしれないですね。でもね、音のイメージをそのまま映像にしたみたいなのって全然面白くないと思うので。とんでもないところに転がっていってもらったほうがうれしいんです。だからもう完全に監督にお任せって感じ。

34歳にして初めてのライブに挑戦します

──ちなみにTASAKAさんって、最近でもDJをするときにアナログ盤を使っているんですか?

昔のレコードももちろんかけるのでアナログも使ってるんですが、7:3くらいでCDのほうが多いですね。ハコによってはCDのほうがちゃんと鳴る設定になってるところが増えてきたし、場所によりけりかなぁ。慣れっていうことで言えばアナログのほうがやりやすいんですけど、今はBeatportっていうDJ用の音楽配信サイトがあって、そこでダウンロードしないと手に入らないものが多いから、そういうものはCD-Rに焼いて使ってます。

──やっぱりBeatportは使ってるんですね。最近CDに代わるものとして音楽配信のシェアが徐々に伸びていることもありますし、DJにしてもラップトップにTRAKTORなどのソフトを入れて、MIDIコントローラでパフォーマンスする人がだんだん増えてきてますよね。

DJやってるときってシラフじゃないもんで、PCだと文字が読めないんですよね(笑)。だいたい呑んでるでしょ? そんな状態で画面を見て曲探すのとか無理なんで。

──普通の人にとっては、レコードの山から欲しい曲を探すほうが難しそうな気がするんですが。

なんかこうバッグをパッと開いたときに、2曲目にちょっと赤ペンでマル書いたやつとか、緑色のジャケでちょっと折れてるやつとか、レコードだとそういう自分だけにわかる目印っぽいのがあるんですよね。いつも使っている「この感触!」みたいなのが。それがPCでも再現されて、画面を通して匂いとかシミとかで判断できればいいんですけどね。全部文字列だとちょっとねぇ。

──なるほど、長くやってるとそうなるものなんですね。ところで「Soul Clap」のような作品を聴いていると、DJとしてではなくライブアクトとしてイベントに出ているTASAKAさんを観てみたい気もしたんですが、そういうつもりはないんですか?

8月6日に代官山SALOONで発売記念イベントやって、そこで初めてライブをやるんですよ。「Soul Clap」を買ってくれた人が抽選で入場できるっていう。34歳で初ライブデビューです。

──おおっ! そうだったんですか!

まあ、初めてのことですしお金を取るのもなんなので、温かい目で観ていただくためにも抽選で招待することにしました(笑)。そのときの名前の表記は一応、DJ TASAKAの「DJ」の部分に×をつけようかなと思ってて。ディスクはジョッキーしませんよ、っていう(笑)。

──それ1993年の再生YMOみたいですね(笑)。

あ、そうか! かぶった(笑)。

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ニューアルバム『Soul Clap』 / 2009年7月22日発売 / Ki/oon Records

  • 初回限定盤 [CD+DVD] 3360円 / KSCL-1416~1417 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 [CD] 3059円 / KSCL-1418 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Day For Night
  2. You Are Welcome
  3. Wood
  4. Waterside
  5. Wayback
  6. Purple People
  7. Like A Rolling Stoner
  8. Count To Go
  9. Glocal Soul
  10. Baiu
  11. Heart Shaped One
  12. Opener
DVD収録曲(初回盤のみ)
  • DJ TASAKA / Heart Shaped One (2009)
  • DJ TASAKA / STREET STARS BREAKIN' (2002)
  • DJ TASAKA / Speaker Typhoon (2005)
  • DISCO TWINS / Juicy Jungle feat.吉川晃司 (2006)
DJ TASAKA(でぃーじぇーたさか)

1974年生まれ東京出身のテクノDJ。10代の頃にヒップホップに傾倒していたこともあり、テクニカルなスクラッチを多様した独自のプレイスタイルに定評がある。2000年に発表された電気グルーヴのアルバム「VOXXX」でサポートメンバーとして重要な役割を果たし、2001年に初のミックスCD「LOOPA MIX mixed by DJ TASAKA」、2002年に1stミニアルバム「PASSPORT FOR DISCO」をリリース。ドイツの屋内レイブ「MAYDAY」など国内外のイベントに出演し、パーティ感覚あふれるアッパーなDJでフロアを盛り上げる。一方でアルファとのユニット「アルファ&DJ TASAKA」や、KAGAMIとのユニット「DISCO TWINS」などの活動も精力的に展開。2009年7月には、前作「GO DJ」以来4年ぶりとなるニューアルバム「Soul Clap」がリリースされる。