ナタリー PowerPush - DJ TASAKA

長いキャリアを経てついにたどり着いた、初めての「オリジナルアルバム」が完成

DJ TASAKA presents 俺の妄想フェスティバル

7月も後半戦に入り、夏フェスシーズンがいよいよ到来! そこで今回はスペシャル企画として、「FUJI ROCK FESTIVAL」や「RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO」「WIRE」などの大型フェスにこれまで何度も出演しているDJ TASAKAに、彼ならではの視点で「俺がオーガナイズするならこんなフェス」というイベントの企画を妄想してもらった(このフェスティバルはフィクションです。実際の開催は予定されていません)。

いまだかつてない超都市型フェス「LINES」!

──そういったわけで「こんなフェスがあったらいいな」という妄想をしてもらいたいなと。キン肉マンの単行本の最後に載ってる「僕の考えた超人コーナー」みたいな感覚で。

いいですねえ、妄想フェス。僕は結構良い企画をプレゼンできると思いますよ。あ、ちょっとそこのドア閉めてもらえますか。人に聞かれちゃうとマズいんで(笑)。

──おお、自信あり気ですね! ありがとうございます! それではまずロケーションについて教えてもらえますか。

これは超都市型フェスティバルですよ~。いいですか? 名付けて、DJ TASAKA and 東急電鉄 presents「LINES」! ちょっと「WIRE」のパクリっぽい名前なんですけど(笑)。

──えっ、東急電鉄?

日本のクラブカルチャーがあんまり一般まで浸透していないのは、日本では夜中に地下鉄が動いていないからだ、っていう言説があるんですよ。

──ああ、なるほど。

それは一理あると思ってて。というか「じゃあ動かないんだったらそこを使わせてよ」っていう。ちょっとアンチ石原的なポリティカルな主張も含ませながら。

──駅でライブやDJをやるわけですか!

インタビュー写真渋谷駅の地下鉄入り口。渋谷駅はさまざまな路線が乗り入れているため、内部は地下要塞のように複雑で広大な作りになっている。

要は少し早めに終電を出してもらって、夜11時くらいスタートで田園都市線の渋谷駅から二子玉川駅までを封鎖するんですね。そんで、各駅の構内が会場になってるんです。夏だとちょっと暑いから、10月くらいの土曜の夜がいいかなあ。

──それはすごい……。普通に想像できそうなフェスで、出演ラインナップで面白い話が聞けるのかなという気がしていたので、そのぶっ飛んだアイデアは予想外でビックリしました……。

それをやることで東急電鉄さんも潤うようにすればいいと思うんですね。地下だから防音はとりあえず考えなくて大丈夫そうですし。で、渋谷駅は109の下の改札までがすごく広いじゃないですか。あそこがメインステージで。何人くらい入るかなあ。

──2000人以上は入りそう。

じゃあ、リッチー・ホゥティンかな。DAFT PUNKまでいっちゃうとちょっと厳しいかな。スカパラとかがライブやってもいいかもしれないですね。

──うわー、どんな都市型フェスも敵わないくらい都市型ですね。

イベントの開催中、夜11時から朝6時くらいまで田園都市線の電車は動いていて、各会場の行き来は地下鉄で行います。運賃はフリーパスポートで、入場口はそれぞれの駅の改札で。

──しかも規模がでかい話だなあ(笑)。

出演アーティストのステージ分けは駅のカラーごとに!

インタビュー写真田園都市線の地下部分(池尻大橋~用賀)の各駅には、それぞれ異なった色のタイルが壁など各所に貼られている。地下鉄は周囲の景色が見えないため、乗客が降りる駅を判断する際に便利だ。

メインステージの渋谷から近い順にいくと、池尻大橋は駅カラーが茶色だから「ブラウンステージ」で。そういえば俺が5歳くらいのときにお父さんに「なんで池尻は茶色いの?」って聞いたら、「尻だからウンコの茶色だよ」って教えられて、俺はそれをずっと信じてたんですよ。

──いや絶対違うでしょう(笑)。

やっぱ違うかな(笑)。まあ、茶色だからちょっとアーシーな感じの、トライバルでパーカッシブなハウスの人にお願いしたいな。リカルド・ヴィラロボスとかいいかな。いやテクノだけじゃなくてもっと広くいこう。UAとか出てくれたら良いかもしれないですね。

──泥臭い感じのバンドとか?

そうそうそう! そして三軒茶屋は黄色いから「イエローステージ」ってことで、そうだ、黄色人種ステージにしましょう。あ、さっきのUAなし! UAこっちで! あと卓球さんとか日本人総出で。

──人種でステージ分けるって斬新だなあ(笑)。

チャイニーズあり、コリアンありだから、LUKE SLATERみたいなクォーターコリアンにも来てもらいましょう。で、元・西麻布YELLOWの皆さんに仕切っていただいて(笑)。

──じゃあ、駒沢大学は緑色だから「グリーンステージ」ですね。

緑ってことはアーシーなノリですね。誰がいいだろうな。

──池尻もアーシーがコンセプトって言ってた気が……。

言われてみればそうだ、全部アーシーじゃねえか(笑)。ええとね……、緑だから……、ここはレゲエだね! MIGHTY CROWNとかがやってる感じで、横浜レゲエ祭の子たちに来てもらって。

──ここの物販はタオルが飛ぶように売れそうですね。

すごいイベントだと思いますよホント。横浜レゲエ祭を楽しんでから5分以内の移動でリカルド・ヴィラロボスが観られるっていう。しかも実際は2駅も距離が離れてるから、他のフェスと違って音が混ざらない。移動中も電車の中がバーになってたりしたら楽しめて良いですね。次は桜新町か。ええと、ピンクだから女の子DJがいいかな。エレン・エイリアン、モニカ・クルーゼ、MAYURIさん……。

──DJ KAORIとか?

そうそう、それだ! 入れましょう(笑)! そういえば確か桜新町だけ、急行の通過待ち用に上下階に分かれてるんですよね。ということはフロアがふたつ作れるのか。じゃあ、片方はゲイエリアにしましょう! ベルリンのゲイクラブがそのまま引っ越してきたみたいな、ものすごくディープでアンダーグラウンドな場所にしたいな。レン・ファキとかベン・クロックとかに回してもらって。始発が動きだしてもどうせ急行が来るまで使われないんだから、桜新町の地下3階ステージだけは日曜の昼くらいまでできそうですしね! 次の用賀は何色でしたっけ。

──用賀は水色かな?

となるとやっぱりチルですね。砂原さんとかrei harakamiさんとか、エレクトロニカ系の人に出てもらいましょう。用賀を最後に次の二子玉川からは駅が地上に出るので、電車で移動できるのは用賀までにして、二子玉川方面の屋外と出入りできるようにしたら気持ちよさそうですね。この駅の出演者はノンビートばっかりだから騒音の心配もなさそうだし。……あれ、ヒップホップどこにいった? DJ KAORIしかいねえじゃねえか(笑)。

さまざまなトライブと電車の中で互いの価値観を共有しよう!

インタビュー写真構内の売店。超都市型フェス「LINES」ではここでドリンク、フード、オフィシャルグッズなどを購入することができる。インタビュー写真田園都市線の改札。DJ TASAKAのプレゼンを聞いた後でこの写真を見ると、奥にいる駅員がDJをしているように見えてくるから不思議だ。

いろんなステージに行くための導線もしっかりしているし、すでに売店もトイレもあるし、みんな使い慣れてる場所だからうまくいきそうな気がするんですよね。で、この提案が面白いと思うのは、移動したいときにみんな同じ電車に乗るから、そこにはテクノが好きな人もいればヒッピーもいて、B-BOYもレゲエもいて、いろんな価値観を持ったトライブたちが混ざり合うという。電車の中はバーになってるし、乗り合わせた車両の中でそれぞれただ黙ってるんじゃなくて、一晩だけでもお互いの価値観を共有しようじゃないかっていう、そんな美しいコンセプトもございます。

──おおっ! 面白い!

なかなか良いでしょ(笑)。問題点としては、階段に気をつけなきゃいけないのと、地下鉄だから喫煙所がないっていうくらいかな。たぶん、普段使われてる駅を使ったっていう前例はないですよね? まあ、さっき電車でここに来たから思いついただけなんですけどね(笑)。

──その割には完成度が高い妄想ですね!

改札の横の駅員さんがいるところがDJブースになってるとか。いいよねえ。

──あとは夜中に駅が使えるのかだけですね。

うん、そうだよね。普通はメンテナンスじゃねえかっていう(笑)。

──でも、これだけ大規模なのにステージ間の移動が早いっていうのは画期的かもしれないですね。移動時には座れて酒も飲めるっていう。

そうそう。そこがキモだね。あ、地下鉄だと周辺住民への騒音はないかもしれないけど、電車の音がうるさいって問題があるのか! 音楽聴きたいのにガタンゴトンうるせえよって!

──それはそれで味ということで(笑)。これ、面白いから実際に東急に提案してみたら良いんじゃないでしょうか。

それでもし本当にOKだったら、このインタビューは掲載しないでくださいね? 誰かにパクられたら僕の懐具合に影響があると思うんで。ってOKなわけねえだろ!(笑)

ニューアルバム『Soul Clap』 / 2009年7月22日発売 / Ki/oon Records

  • 初回限定盤 [CD+DVD] 3360円 / KSCL-1416~1417 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 [CD] 3059円 / KSCL-1418 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Day For Night
  2. You Are Welcome
  3. Wood
  4. Waterside
  5. Wayback
  6. Purple People
  7. Like A Rolling Stoner
  8. Count To Go
  9. Glocal Soul
  10. Baiu
  11. Heart Shaped One
  12. Opener
DVD収録曲(初回盤のみ)
  • DJ TASAKA / Heart Shaped One (2009)
  • DJ TASAKA / STREET STARS BREAKIN' (2002)
  • DJ TASAKA / Speaker Typhoon (2005)
  • DISCO TWINS / Juicy Jungle feat.吉川晃司 (2006)
DJ TASAKA(でぃーじぇーたさか)

1974年生まれ東京出身のテクノDJ。10代の頃にヒップホップに傾倒していたこともあり、テクニカルなスクラッチを多様した独自のプレイスタイルに定評がある。2000年に発表された電気グルーヴのアルバム「VOXXX」でサポートメンバーとして重要な役割を果たし、2001年に初のミックスCD「LOOPA MIX mixed by DJ TASAKA」、2002年に1stミニアルバム「PASSPORT FOR DISCO」をリリース。ドイツの屋内レイブ「MAYDAY」など国内外のイベントに出演し、パーティ感覚あふれるアッパーなDJでフロアを盛り上げる。一方でアルファとのユニット「アルファ&DJ TASAKA」や、KAGAMIとのユニット「DISCO TWINS」などの活動も精力的に展開。2009年7月には、前作「GO DJ」以来4年ぶりとなるニューアルバム「Soul Clap」がリリースされる。