音楽ナタリー PowerPush - DJ Deckstream×VERBAL(m-flo)×Shing02

ヒップホップシーンのカリスマ3者、初共演を語る

“Young World”へ贈るアジテーションソング

Shing02 ただ、僕は予定調和的に書いちゃうと面白くないんですよ。突き刺さるモノがなくなっちゃう、パーソナルなものではなくなっちゃうと思っていて。だから僕は、ラップを始めた頃からそうなんですけど、トピックがあって書くというより、曲を聴いてその雰囲気に言葉を合わせていくんです。それこそフリースタイルのように書く。で、今回のテーマは「今、言いたいこと」だと。わりとアバウトだけど、ジャンルとしては強いものじゃないですか。

──コンシャスラップですからね。果たして、今を生きる若い人へのアジテーションソングのようになってる。

Shing02 そうです。そもそも題名もスリック・リックの「Hey Young World」から来てるから。社会の風刺とか批判に徹したら僕の中では予定調和というか、ただ社会に文句を言って終わるのはカッコ悪いなと思って。そういう曲も作るけど、今回のトラックの雰囲気には希望があるほうが合うんじゃないかと思ったんです。で、希望だったら、上の世代にどうこう言うより、まだ心がオープンな若い世代にメッセージしたほうがいいと思った。今、目に映ってる世界は厳しい部分がたくさんあるし、これからも苦しい世界が待ってるかもしれない。それでも、今までの人がそうだったように、何かしら行動を起こさないと結果は出てこないんだって言うことがすごく大事だと思ったから。

──ふむふむ。

Shing02 なぜなら、今は情報社会になって、なんでも結果がすぐそこにあるように錯覚しちゃうと思うんですよ。VERBALのヴァースもそういうことに触れてるけど、古臭い言葉で言ったら血と汗と涙。それが古く感じるこの時代だからこそ、でもやっぱりそういう部分が大事だと思うんです。

──結果より、そこまでの道筋が大事だと。

Shing02 両方ですね。結果も大事。だけど、結果ありきじゃない。他人に(自分の)成功の尺度を任せちゃいけないっていうことだと思うんです。

──Shing02さんの書いたものを受けて、VERBALさんは書いたんですか?

VERBAL

VERBAL そうです。「ヘイ、若い世界」と「平和かい?世界」をかけてるって聞いたので。Shing02くんのヴァースを受けて、ひらめくままに書いていって。

──VERBALさんがこういうコンシャスなラップを書くのは珍しいですよね。

VERBAL そうですね。むしろ苦手なほうっていうか。アホなことを書いたり、言葉遊びするほうがいいんですけど、でも、こういうことを思ってないわけじゃないから。最近あんまりこういう感じで書いてなかったから書き甲斐があったし、Deckstreamのトラックなんで普段あんまりやらないようなフロウで、言葉を詰めた感じでやってて。自然とそういうものが出てきたので、かえって楽しかったですね。

直接相手に電話して「これってアリ?」

──今回のアルバムは、ベテランと若手のコラボも多いし、前例のない組み合わせが満載です。

Deckstream このアルバムじゃないと聴けない楽曲になる組み合わせがいいなと思って。やらなそうだけど、やったらハマるんじゃないかっていう掛け算をけっこう考えて……いや、考えてないですね(笑)。

──わりと思い付きで?(笑)

Deckstream そう(笑)。なんとなくで組み合わせていって。ダメならダメでいいやと思って、直接相手に電話して「これってアリ?」って聞いて、「アリ」っていう答えなら「じゃあ」みたいな感じでした。

──指名された人も予想外のコラボ相手だったでしょうね(笑)。聴いてると、「相手がこう来たから、俺はこう攻める」みたいな緊張感がリリックやラップから伝わってきますし。

Deckstream まず俺自身が知り合いじゃない人ばっかだから(笑)。普段、ラッパーの人とあんまり付き合いがないんですよ。クラブにあんまり行かないから、現場で会う機会もないし。だから、例えばRINO(LATINA II)さんに「今日イベントに出るから来なよ」って誘われたときに、ついて行って、そのイベントに出てるラッパーを探したり紹介してもらったり、みたいな。そこでいいなと思ったら、その場で直談判。だから一時、クラブにだいぶ通いましたよ、ラッパーをナンパしに(笑)。

S-WORD、憧れのRINO LATINA IIと共演

──Shing02さんとVERBALさんが本作で気になった曲は?

Shing02

Shing02 僕はRINOくんと昔からすごく仲がいいので、彼が参加した曲ですね。RINOくんの声は天賦のものだと思うんで。

Deckstream RINOさんは、先にSKY-HIくんとやったほうを作ったんですよ。

──「Far East Movement feat. RINO LATINA II & SKY-HI」ですね。

Deckstream これは若手とレジェンドのコラボっていうのを考えた組み合わせ。世代の違う実力者同士の相乗効果が生まれて面白いのができるかなと思って。

──「SEASON 4 feat. S-WORD & RINO LATINA II」は、どのような経緯で生まれたんですか?

Deckstream 「Far East Movement」とは別に、S-WORDくんも今回のアルバムに参加してほしいという気持ちがあって。で、ソロでもコラボでもまずはトラックを聴いてみてくださいっていう話をしたら、「昔から憧れのラッパーにRINOくんがいて」っていう返答をいただいて。それで、渡してた音に速攻でデモを録ってくれて、「ここにRINOくんが入ったらアツいです」とすでに構成も考えてくれてて。それが「SEASON4」になっていったんです。

DJ Deckstream ニューアルバム「DRESS CODE」2014年12月10日発売 / 2500円 / Sepera / XQBZ-1036
初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / VIZL-718 / Amazon.co.jp
収録曲
  1. Young World feat. VERBAL(m-flo) & Shing02
  2. SEASON4 feat. S-WORD & RINO LATINA II
  3. You Only Live Once feat. 漢 a.k.a. GAMI & 輪入道
  4. 見えないけどRZ feat. 妄走族
  5. Most Beautiful In The World feat. SEAMO & D.O
  6. Stay Ready feat. JAZEE MINOR & Minami(CREAM)
  7. Time Capsule feat. NIPPS & YURIKA
  8. Far East Movement feat. RINO LATINA II & SKY-HI
  9. 夜とその先 feat. WATT a.k.a ヨッテルブッテル
  10. Stormy feat. Mummy-D(Rhymester) & RYUZO
  11. Minority Rules feat. Arkitec & 大神
  12. Walk With Me feat. Takuma The Great

右 / DJ Deckstream、左 / VERBAL(m-flo)、中央 / Shing02

右 / DJ Deckstream(ディージェイデックストリーム)

DJ、トラックメーカー。1990年代後半からアンダーグラウンドのヒップホップシーンにて活動を開始。2001年、m-floのリミックスをきっかけに注目を集め、2007年10月に1stフルアルバム「Sound Tracks」、2009年2月に2ndアルバム「Sound Tracks2」を発表。独特のサウンドメイキングが大きな話題となり、外資系CDショップを中心に爆発的な売上を記録する。また「Rahze」名義でダンスアルバムを制作し、レーベル「Sepera」を立ち上げ自身のプロデュース作品をリリースするなど、精力的に音楽活動を展開している。

左 / VERBAL(バーバル)

m-flo、TERIYAKI BOYZのメンバー。1998年に☆Takuとm-floを結成。m-floでの活動のほか、2004年からはTERIYAKI BOYZとしても活躍し、ファレル・ウィリアムス、カニエ・ウェスト、ウィル・アイ・アムなど海外のアーティストとも交流が深い。またジュエリーブランド「ANTONIO MURPHY & ASTRO」「AMBUSH」のデザイナーとしてファッション界でも名が知られている。

中央 / Shing02(シンゴツー)

1975年生まれ、東京都出身のヒップホップアーティスト。日本のほかタンザニアやイギリスで少年時代を過ごし、15歳のときに暮らし始めたアメリカ・カリフォルニアでヒップホップと出会う。1996年にMCとして日本での活動をスタート。1999年にリリースしたアルバム「緑黄色人種」がロングヒットを記録し、2008年には長年の構想を経て完成したアルバム「歪曲」をリリース。国内でのライブ活動を積極的に行いつつ、グローバルかつ独立した視点を持つリリックや変幻自在のスタイルで幅広い支持を獲得している。