masasucksとの制作作業

──ではここからはアルバム「DREAMS NEVER END」のお話を聞かせてください。

HATANO　俺はまだ聴けてないんだけど……14曲入りかあ。録るの大変だっただろうなあ。

あやぺた　ヤバかったです。

HATANO　わかるわかる。気が狂いそうな作業だよな。レコーディングがワクワクするの、最初の1枚だけだからね。1stアルバムは積み重ねてきたものを録るから気持ちの温度も高いし、「やってやるぞ！」って気持ちになるけど、次からは締め切りに追われたマンガ家状態だよね。「先生早くしてください」ってヤツ。

あやぺた　完全にそれでした。でも今回はマサさん（masasucks）のおかげで楽しくやれました！

──今回masasucksさんをプロデューサーに迎えたのはどういった理由だったのでしょうか？

あやぺた　マサさんは心を裸にしてしゃべれる人やし、メロディックパンクも、ハードコアパンクも、J-POPも知ってるから、そういう人と一緒にやったら自分らの曲がもっと広がりそうだなと思って。

──実際に一緒に作業してみていかがでした？

あやぺた　最高でした。レコーディングって苦しくて大変なものだと思ってたんですけど、マサさんがプロデュースしてくれたおかげで初めて楽しくレコーディングできたんですよ。必要なときは厳しいことも言ってくれるし。レコーディングの序盤で、みんなが病んできたときに、マサさんがいきなり100均に行ったんですよ。で、しばらくしたらアフロのヅラをかぶってレコーディングスタジオに帰ってきて。それで一気に雰囲気が変わって、またいい感じにレコーディングを再開できたんです。そのとき「あ、この人すごいな」って思いました。

HATANO　masasucks喜んでたよ。この間「Dizzy Sunfistのプロデュースやったんだって？」って言ったら「ありがたい話もらって！ すげえよかったっす！」って。

あやぺた　そう言ってもらえてるならよかったなあ。

HATANO　レコーディングって第三者がいるといいんだよね。しかも自分も苦しんでレコーディングをやってきた人だから余計に「ここが一番キツイぞ」っていうところでちゃんとピエロになってくれる。

あやぺた　健さんもそうでした？（※HAWAIIAN6の1stフルアルバム「SOULS」は横山健がプロデュースを手がけている）

HATANO　俺らのときは「1日で14曲録れ」って言われて、1日で録ったのよ。

あやぺた　ええ！

HATANO　あとドラムがちょっと手こずったときに、横山さんは「いいテイクできたら起こして」って言ってずっと寝てて。録り終わって「いいと思うんですけど」って起こして聴いてもらうんだけど、「もう1回だな」って言ってまた寝るっていう（笑）。でもね、第三者……特に感覚が鋭い第三者がいてくれると、自分たちが気付いてないよさみたいなものが出るよね。俺も横山さんに「なんでもいいからカッコよく叩け。間違っててもいいからカッコよく。それだけでいい」って言われて「そういうもんなんだな」って気付けたんだよ。きっとmasasucksもそうだったんだろうね。

あやぺた　はい、自分が気付かなかった自分のいいところを教えてくれて自信が付きました。逆にアカンところも言ってくれて、すごく成長できたなと思います。

1日1つずつ夢を叶えたい

──今作にはマイナーコードの曲やいわゆる泣きメロの曲が多い印象があります。

あやぺた　そうですね。泣きメロ、多い気がします。こういう歌が歌いたいみたいな意図もなく、勝手にこうなりました。アルバムの構想とかもなくて、できた曲をつないでいった感じですね。

HATANO　いいねえ、自然だったんだ？

あやぺた　自然にできました。曲もめっちゃたくさんできて、どの曲を入れるかで悩んだぐらい。

HATANO　すごくいいことだね。だいたい2ndアルバム、3rdアルバムの制作って厳しいんだよ、「この展開は前のアルバムのあの曲で使った」とかいろんな変なことを考え出して。別にそんなの気にしなくていいのにってあとからわかるんだけど。だからこのタイミングで第三者と一緒に作ったのはよかったんだと思う。

あやぺた　はい。あ、構想はないと言いましたけど、このアルバムでもっと夢を叶えてやろうっていう思いはずっとあって。

──どういう夢を？

あやぺた　うちが常にいろんな夢を叶えたい人なんです。例えば「明日あの映画観たい」とかそういうのも夢で、それを1日1つずつ叶えていきたいんですよ。そんなうちの生き方をそのまま詰め込んだ1枚です。いろんな夢を叶えられました。

──「夢を叶える」という話で言うと、Dizzy Sunfistは一昨年まではいろいろなフェスやイベントに初出演する機会が多くて、そのたびにあやぺたさんが「ようやくこのステージに立てた、夢が叶った」と喜びを語っていたと思うんですけど、昨年くらいから「うちらに付いてきて」といった発言に変わってきたのが印象的で。

あやぺた　そうですね、一昨年は高校生の頃に遊びに行ってたフェスとかに初めて出させてもらうことが多かったんですけど、去年は2回目になることが多かったので、オドオドしてたらアカンなと思ったんです。だからいろんなバンドの客を盗む……気持ちを奪えるかということに集中しました。

──自信が付いてきたんでしょうね。

あやぺた　そうなんだと思います。でもステージに立ってないときはヤバいですよ。ほかのバンドのライブとか観てすごくへこむし、悔しいと思うし、でもやっぱ自分が立ってるときは絶対そんなん思いたくない。

HATANO　なんかいいね。素晴らしいと思うよ。今のあやぺたに言うことじゃないのかもしれないけど、続けていくとさ、夢も情熱も減っていくだけなんだよね。でも歳を取るってそういうことだと思っていて。今の俺たちなんかさ、燃えたぎったカスの塊でしょ。その塊をCDに収めるだけ。俺たちにはもう寿命を燃やすことくらいしか残ってない。それはそれでバンドの面白いところだなと思って続けてるんだけど。今のあやぺたの話聞いてると、昔の自分を見てるようで、今酒飲んでたら泣いちゃうだろうなって思った（笑）。

あやぺた　うちも今日、酒飲んでたら泣いてる場面けっこうあります（笑）。

HATANO　どっちも経験するって素晴らしいことだなって今は思うけどね。なんかワクワクするね。ほっこりした。