Technics×「RECORD STORE DAY」|満島ひかりの心を惹きつけるアナログレコードの魅力とは? SOIL&"PIMP"SESSIONS・社長と語るコラボ曲「eden」制作秘話も (3/4)

満島ひかり×社長(SOIL&"PIMP"SESSIONS) インタビュー

ここはソイルでしょ!

──今年の「RECORD STORE DAY」では、満島さん、三浦大知さん、SOIL&"PIMP"SESSIONSの音楽プロジェクト「ひかりとだいち love SOIL&"PIMP"SESSIONS」の楽曲「eden」がレコードでリリースされます。まずはこのプロジェクトが立ち上がった経緯から教えてください。

満島ひかり 今、12歳の頃から私のことを知っているワダさんという方と仲間になってお仕事をしているんですけど、彼女がSOIL&"PIMP"SESSIONSをこよなく愛しているんです。本当に「ソイルって最高で好き!」みたいな感じで(笑)。

一同 (笑)。

満島 私がフリーランスになって、ひさしぶりにお仕事の仲間になってくれることになったときに、ワダさんからMONDO GROSSOとSOIL&"PIMP"SESSIONSともう1組のアルバムを、急にドン!と渡されたんです。「これ、暇なとき全部聴いてー。私が好きな日本のアーティスト」って(笑)。

──へえ!

社長(SOIL&"PIMP"SESSIONS) めちゃめちゃうれしいですね。

満島 それで今回、自分たちでレーベルを持って、音楽を楽しんでやってみようかとなったときに、ワダさんと「ここはソイルでしょ!」「作ってくれるかな?」「聞くだけ聞いてみよう」という話になったんです。思いきってオファーしてみたら「作ってくれるかも」となって、「それなら大知とも歌いたいよね!」という話になりました(笑)。そうやって最初からてんこ盛りで始まった感じです。さらに同時期に「『ルーヴル美術展 愛を描く』の曲を作りませんか?」というオファーまでいただいて、そういう機会があるならたくさんの人に曲を聴いてもらえるかも、ということでお引き受けしました。

──社長はどうですか? 今のエピソードを聞いて。

社長 最高にうれしいですよ。まず、ワダさんがMONDO GROSSOと並んで僕たちの作品を聴いてくださっていることにも感謝を申し上げたいですね。アシッドジャズの文脈から言っても、日本でジャズバンドをやるうえでも、僕らはMONDO GROSSOから大きな影響を受けていますし、大沢さんとはずっと仲よくさせていただいていて。そんな偉大な方と同じように扱っていただき、さらに自分たちの作品がひかりちゃんの耳に入って今日を迎えられていることがとてもうれしいです。

左から満島ひかり、社長(SOIL&"PIMP"SESSIONS)。

左から満島ひかり、社長(SOIL&"PIMP"SESSIONS)。

──それまで、満島さんとソイルのメンバーは直接的な面識はなかったんですか?

社長 直接的な面識はなくて、去年の9月にJ-WAVEのイベントで、いとうせいこう is the poet(ITP)というプロジェクトのライブに僕が参加させていただいたときに、ひかりちゃんも参加していて。そこで初めてちゃんとご挨拶した感じですね。

満島 そうですね。去年、私もITPの皆さんといくつかフェスを回らせてもらって、その中でお会いしました。ご挨拶と同時に「今度、よろしくお願いします」という感じで。

満島ひかりの中にあるイメージを音楽に

──「eden」の楽曲制作はソイルのメンバーと一緒に満島さんもスタジオに入って進めていったそうですね。

満島 はい。私は楽器が弾けないので、とにかく抽象的なアイデアとイメージを伝えることしかできないんですよ。でも、ソイルの皆さんはそれを聞いて「なるほど、わかってきました」って魔法みたいに音にしてくださって。制作、録音、ミックスまでの一連の流れを見ていると、素晴らしいミュージシャンの人たちって美味しい日本酒が生まれる米所の良質な水みたいだなと思いました(笑)。

──それこそ、社長の地元の福井はまさにそうですよね(笑)。

社長 ありがとうございます(笑)。

満島 タブ(ゾンビ)さんとは魔除けの話とかしかしてないんですけど(笑)、それも含めて現場の空気がずっと伸びやかで、アイデアもとめどなく出てくる感じでした。なんというか、社会によって遮断されない素朴な空気がずっと流れてましたね。ソイルの皆さんが形のないイメージを形にするために「水の上も歩けるから、歩いちゃおうよ!」と導いてくれて、すごいなあとずっと思ってました。

──とても幸福な時間だったんですね。結果的に満島さんと大知さんの歌唱の交歓も含めて、まさにエレガンドで離れがたい緊張感を帯びた美しい楽曲が完成したと。

社長 はい。最初はひかりちゃんから抽象的なイメージを聞きつつ、そこからどんなアーティストが好きかとか、そういう話もして。ひかりちゃんに対してすごいなと思ったのは、自己表現を最終的にどのように形にしたいかという画を、身体表現も含めて立体的に共有してくれることですね。

左から満島ひかり、社長(SOIL&"PIMP"SESSIONS)。

左から満島ひかり、社長(SOIL&"PIMP"SESSIONS)。

──言葉だけではなく、身振り手振りも交えて?

社長 そう。だから、音楽的なジャンルとか、ビートとか、テンポがどうと言うよりも、ひかりちゃんがどんな自己表現をしたいかをすくい上げるのが僕らの至上命題なんだろうなと思ったんです。

満島 音楽について説明する言葉を持ってないので、ジェスチャーしながら「こういう感じで! こうで! こうなんです!」と伝えるしかなくて(笑)。

社長 「こっからこれで、こう!」みたいなね(笑)。

満島 「こうなって、ワーッ!となってから、私たちは消えるんです」とか(笑)。こんな感じで大丈夫かな?と思っていたら、丈青さんが「ああ、こういう感じですね」とピアノを弾きながら提案してくれて。「まさにそういう感じです!」みたいな(笑)。すごいなと思いました。

社長 「eden」の骨格になっているのはそのときのやり取りから生まれたものなんです。

満島 丈青さんがピアノを弾きつつ「ここで、みどりん、ドラム弾いてみて」と振ったり、社長が「いや、ここはもうちょっと音を抜いたほうがいいと思う」と言うと、丈青さんが「OK」って反応して。そうすると少しずつ曲ができあがっていくんです(笑)。

社長 最初にスタジオでミーティングしたときの会話からいきなり丈青のコードが生まれたんですよ。

満島 ぜいたくにもデモを3つ作っていただいて。社長、タブさん、丈青さん、それぞれで1パターンずつ作っていただいたんですね。今回、大知と歌うのは丈青さんに作っていただいた曲なんですけど、せっかく3つあるので、今後残りの2曲も完成させたいです(笑)。

社長 やるしかないっしょ(笑)。

満島 で、これはズルい提案なんですけど、社長が作った曲は私1人で歌いたくて、タブさんの曲はまたほかのアーティストさんと2人で歌いたいと勝手に思っています(笑)。

社長 だから、こうやってね、ひかりちゃんの中ではどんどん世界が広がっていくんですよ。そこに自分たちも乗っからせてもらって、その世界で遊ばせてもらっているような感じです。

2023年3月20日更新