ナタリー PowerPush - DIAURA

思いの詰まった新作「FOCUS」で“THEヴィジュアル系”バンドの進化を提示

2010年12月の結成以降、着実に知名度を高めているヴィジュアル系バンドDIAURAがニューアルバム「FOCUS」をリリースした。今年の春に達也(Dr)が加入し現体制となった彼らが初めて放つフルアルバムには、「これぞヴィジュアル系」と言えるロックナンバーからメタリックな楽曲、オートチューンなどを取り入れたデジタル色の強い楽曲、中近東の民族音楽の要素を含む楽曲、そして王道のスローバラードまで幅広いタイプの楽曲を収録。これまで以上にバラエティに富んだ内容ながらも散漫さが一切感じられない、一本筋の通ったロックアルバムに仕上げられている。

ナタリー初登場となる今回のインタビューでは、メンバー4人にバンドの成り立ちや新作の制作、さらに年末に控えた渋谷公会堂でのワンマンライブについて話を聞いた。彼らがこの力作「FOCUS」を通じて何を手に入れたのか、このテキストからじっくり感じてほしい。

取材・文 / 西廣智一

どれだけ聴く人の価値観を変えられるか勝負したい

──DIAURAはyo-kaさんと佳衣さんが2010年12月からスタートさせたということですが。

yo-ka(Vo) はい。この2人でDIAURAの前に別のバンドを2010年11月までやってました。そのバンドでメンバーの人間関係でつまづいたんですけど、やっぱりバンドを続けていく上では信頼関係というか人間性が何より大事だと実感して。以前のバンドから佳衣が曲を書いて俺がメロディと歌詞を付けるっていう役割分担があって、この2人がいれば音楽は生み出せる状態だったので、それだったらバンドが変わろうがしっかりやっていけるっていう自信はあったんです。そこから俺たち2人に共鳴する人がいたらメンバーに迎え入れていけばいいんじゃないかと思って、見切り発車させたんです。

──なるほど。yo-kaさんはもともと、いわゆるヴィジュアル系の音楽が大好きだったんですか?

yo-ka(Vo)

yo-ka そうですね。自分は小さい頃から両親の影響で80年代の歌謡曲とかポップスとかを聴いていて、よく口ずさんでいたらしいんです。で、その頃から漠然と歌手になりたいなんて思っていて、そこからたまたまヴィジュアル系っていうものに出会って。こういう自由度が高い表現の仕方もあるんだなって、今まで知らなかった世界に衝撃を受けたんです。

──ヴィジュアル系って音楽のスタイルを指す言葉じゃないですもんね。サウンドだけで言ったらいろんなタイプのバンドがいて、でもメイクをしているからヴィジュアル系という枠で括られている。そういう意味ではすごく面白いジャンルですよね。

yo-ka そうなんですよ。知らない人からしたらきっと1つのイメージで捉えられてると思うんですけど、「それだけじゃないよ?」っていうことを提示していきたくて。DIAURAっていうバンドは“THEヴィジュアル系”っていう要素を大事にしつつ、どれだけ聴く人の価値観を変えられるかっていうところで勝負したいんです。だからこそやりがいも大きいんですよ。

──佳衣さんはどうですか?

佳衣(G) 自分は18歳のときに上京してきて、そのときに音楽で食べていこうと決心して。ヴィジュアル系にはその前に出会っていたんですけど、正直ほかの音楽スタイルでやっていこうとは考えたことがなかったんです。もちろん東京に出てきてから音楽仲間がたくさん増えて、いろんなジャンルを聴くようになって、それは大きな刺激になりましたよ。

──ちなみに翔也さんと達也さんの音楽的ルーツは?

翔也(B) 僕はこの2人とは違って、楽器を始めたきっかけはメロコアやパンクだったんですよ。逆にヴィジュアル系は敬遠していたんですけど、実際に聴いてみたらエンタテインメント性が高いジャンルだなと思って。音でも見た目でも楽しませられて、これはすごく可能性があるジャンルなんじゃないかと思ったのが、ヴィジュアル系に足を踏み入れたきっかけですね。

達也(Dr) 俺は最初に「このバンドすごくカッコいいな」と思ったのがヴィジュアル系のバンドでして。それからドラムにも興味を持ち始めたんですけど、初めて組んだバンドはヴィジュアル系じゃなかったんです。それで活動を続けていくうちに「なんか違うんじゃないか?」と感じ始めて、だんだんとヴィジュアル系のシーンに寄り添っていって、やっぱり自分はこのシーンで音楽をやりたいんだと気付いて今に至ります。

一歩一歩進んでこれたからこの4人が揃った

──翔也さんと達也さんはDIAURAに正式加入するまで、サポートメンバーという形でバンドに長く関わっています。それは人間性を見るということが影響しているんでしょうか?

yo-ka そうですね。ツアーみたいに長い時間を一緒に過ごしてみないとわからないことって、やっぱりあるんですよ。なので翔也も……DIAURAは始動していきなりツアーを始めたんですけど、最初は福岡だったっけ?

翔也 福岡に行きましたね。いきなり(笑)。

yo-ka いきなりDIAURAっていう始動したてのバンドの中にサポートメンバーとして入って、東京で初ライブ。で、その次がもう福岡だったんです。俺と佳衣は付き合いも長かったからいいんですけど、翔也はその中にいきなり飛び込んできて、どんなベースを弾くのか、どんな考えを持っているのかを日々査定されてるような感じで(笑)。それでツアーから戻ってきて、「DIAURA入る?」って聞いたんです。

翔也 O-WESTのコインパーキングでね(笑)。でも僕としてもその期間がすごく大事で。僕はDIAURAに入る前、「次のバンドで最後にしよう」って思ってたんですよ。で、ツアー中に2人の音楽に対する熱をしっかり感じられたから、加入を誘われたときは即答して。

達也 俺は前のドラムの方が腕の故障でバンドを離脱して、11カ月くらいサポートしてからの加入だったんです。ちょうどメンバーが4人から3人になった期間で、けっこうつらかった時期だったと思うんですけど、それでも前へ進んで向かっていく姿を目にしたり、音楽に対する力強い姿勢を感じたりしていたので、加入を誘われたときは2つ返事でした。

──達也さんがこの春に正式加入して、ようやくここでメンバーの絆が固くつながったバンドができあがったわけですね。

yo-ka はい。俺と佳衣で始めて、最初から翔也がサポートで参加して、のちに正式に加入する。前のバンドで一緒にやっていた仲のいいドラムもDIAURAに加わるんですけど、腕の故障で泣く泣く離れたところを達也がサポートしてくれて、そのまま達也が加入した。本当にいろいろあったけど、それでも一歩一歩進んでこれたからこの4人が揃ったんです。改めて不思議な縁だなって感じますね。

──それはきっとyo-kaさんと佳衣さんの中に最初からこういう音楽を作りたい、バンドをやりたいという確固たるものがあったから、そこに向けて作り上げていくことができたんだと思うんです。

yo-ka 確かに音楽のことに関しては、佳衣とぶつかったことはあんまりないよね。

佳衣 そうだね。やりたい音楽っていうのがしっかりありますし、たぶんそこに共感したから2人は加入を決めてくれたんじゃないかな。もちろん人と人とのつながりもすごく大事ですけど、やっぱり音楽をやる以上はお互い音楽でしっかりつながってなきゃいけないなっていうのはすごく感じますね。

ニューアルバム「FOCUS」 2013年12月4日発売 / ブロウグロウ
初回限定盤 [CD+DVD] 3990円 / IKCB-9532~3
通常盤 [CD] 3360円 / IKCB-9536
CD収録曲
  1. Code:0
  2. 砂上の夢
  3. TABOO
  4. SIRIUS (FOCUS MIX)
  5. 赤い虚像
  6. Sleeping beauty
  7. Invisible
  8. Lost rain~失いの雨、その記憶との共生~
  9. The Redemption
  10. イノセント
  11. TRIGGER
初回限定盤DVD収録内容
  • 「TRIGGER」MV
DIAURA(でぃおーら)
DIAURA

2010年12月、yo-ka(Vo)と佳衣(G)の2人で結成されたヴィジュアル系バンド。現在は翔也(B)、達也(Dr)の4人体制で活動している。「Dictatorial Aura(独裁的なオーラを放つ)」をコンセプトに、ライブ活動や作品のリリースを展開。2013年5月には初の赤坂BLITZワンマンライブを成功させ、夏には全国11カ所を回る単独ツアー「日本独裁計画2013」を敢行した。同年12月4日に通算2枚目のフルアルバム「FOCUS」をリリース。本作を引っさげて、12月29日には初の渋谷公会堂ワンマンライブも行う。