ナタリー PowerPush - Def Tech

Shen & Microが明かす情熱と苦悩

Def Techがキャリア初のベストアルバム「GREATEST HITS」を4月18日にリリースする。彼らは2001年に結成。2005年に発表した1stアルバム「Def Tech」の収録曲「My Way」がスマッシュヒットとなり、またたく間に時代の寵児へと変貌した。その後も「Power in da Musiq~Understanding」「Catch The Wave」など名曲を生み出すが、2007年に解散。Shenは故郷のハワイに帰り、それぞれソロアーティストとして活躍するなど別々の道を歩むも、2010年に電撃的に再結成を果たした。その後、「Mind Shift」「UP」という、希望と楽しさにあふれたオリジナルアルバムを発売し、ユニットとしての活動は順調に見える。

ではなぜこのタイミングでベスト盤のリリースに至ったか。ナタリーではその真意を探るべく、Def Techの2人とは長い付き合いの鹿野淳によるロングインタビューを実施した。そこから浮かび上がってきたのは、音楽に対する情熱と苦悩。ShenとMicroは、現在抱える複雑な思いを包み隠さず語ってくれた。

取材・文 / 鹿野淳 インタビュー撮影 / 藤井拓

CDの価値を再認識するため

──Def Techのことだから、今作はレーベルなどに出させられたベストではなく、さあ出そうっていうポジティブなベストアルバムなんじゃないかなと思うんですが。

インタビュー写真

Micro いや、全く出す気はなかったですね(笑)。将来、死んでからとか、解散してから事務所が勝手に出すまではベストを出す気はなかったので。死んでもベストは出させないぞ!っていう気持ちがずっとあったんですけど(笑)。でも、音楽がダウンロードとか、さまざまな目に見えない形になっていく中で、CDというメディアがいずれ変化していくだろうと思ったときに、CDというモノの価値を再認識するためにもベスト盤を出したいなって。でも僕らは一度解散して、もしあそこで終わっていたら絶対に出していなかったし……そんなに情けないベストってないと思うので。だからもう一度Def Techをやれているっていうのは、自分にとっては奇跡のようなことでもあり、望んでいたことでもあって。ちょうど2001年にDef Techを始めて、今年が12年目で、ひと回りしたところでのアルバムだから、ベスト(盤)がベストなのかなっていう。

──運命をちょっと受け入れてみようかなっていう気になったんだ。Shenはどうですか?

Shen 休んでいた期間があったので、過去の曲と今の曲の2通りあって、面白いよね。陰と陽とか、光と影とかそういう感じがしますね。Old is Newだし、New is Oldだし。でもこれからがベストだっていうスタンスは僕たちが毎回持っていることだから。毎回自分のベストを出していかなきゃなって思っているので、結構不思議な感じですね(笑)。まあがんばったから、楽しんだから生まれたベストで。今回のベストアルバムはすごくいいタイミングだと思います。

──CDというパッケージカルチャーの問題だけど、それ以前にDef Techはダウンロードカルチャーでも愛されているじゃない? その中でCDというパッケージにこだわる、その奥にある理由があれば教えてもらえますか?

Micro 僕は生まれてきて2歳でレコードに針を落として、ビデオ録画も1歳ぐらいでできてたかな。

──早いな。

Micro でもShenの子供を見てても、2歳で僕らのスタッフよりiPadを使いこなせてるぐらいだから(笑)。もしかすると、僕らのようにモノを媒介とする道は全く通らずに、これからはiPhoneやiPadから、目に見えないものからスタートすることになるのかなって思う。僕のことで言えば、レコード屋にもしょっちゅうテープを買いに行っていたし、CDがなくなるって言われて出てきたMD……その流れの中に生きてきたんだなって思う。前に「サルから人間まで」みたいな意味で「レコードからiPodまで」っていうエボリューションをイメージさせるトレーナーとTシャツを作ったことがあるんですけど、今でもそのイメージはあるんです。僕たちはヒップホップは売れないとか、レゲエは売れないだとか言われてる中で出てきて。その上CDの価格を破壊したり(安くしたこと)レンタルを禁止したり、いろいろやってきて。でもそういう中でCDは今もあるけど……例えばマイケル・ジョーダンのスニーカー、エアジョーダンは、以前人気が出て暴動が起きて人が死んじゃうくらいだったのに今はそうではないし、そういうふうに淘汰されたものがあるわけで。僕はCDに対する思いがあるんですよね……それはもちろん愛着もあるし、逆に叩き割ったCDもあるし。

──このCDがこんな俺にした!みたいなこと?(笑)

Micro はい(笑)。昔、親父にジェームス・ブラウンとRAGE AGAINST THE MACHINEのCDを渡されて……僕その頃、ロックとかソウルが大っ嫌いだったから。CDには、そういう自分の怒りも苦しみも全て、自分の人生と共に詰まっているものだから。自分たちの音楽をCDに焼いたことも思い出すし。

Shen 最初はどんなふうに焼けばいいかわからなかったもんね(笑)。CDは僕たちの人生にいろんな角度から関わっているものだよね。考えてみたら10歳の頃、日本に来てからCDが出てきて、そこで今までの音とこれからの音が違うんだって気付いたんだけど、それは今、僕たちがCDの世界からダウンロードミュージックの世界の狭間にいるようなことなんだと思う。Microが言ってたけど、僕たちの子供の世代はもうCDの世界はわからないと思うんだよね。ヒストリーになってる。もちろん、ダウンロードミュージックの世界が悪いという意味じゃないけど、フィジカルなつながりがあるんです、CDには。

Def Techはまだまだ12歳

──このベストは年代順というか、作品の時系列に沿ったベストアルバムになっているんだけど。それは自分たちの活動に対してのフラットな姿勢なのか、もしくは何か意図したものがあるのか、どっちなんだろう?

Micro 聴く人に対しての親切心でもあるし、ひと回りしたっていうところで、時系列がぐちゃぐちゃになるよりもちゃんと順番に時が進んでいくっていうのがいいなと思って。例えばその中で1曲とか2曲しか知らない人でも、デビューして7年の激動の中でいろんなことがあったっていうのをそれぞれ聴く人が思い出しながら振り返りつつ、前に進んでいけるためにっていうところも大きいです。僕たちもリストアップして、タイムライン順に置いてみたときに、自分たちの過去を振り返りつつ、単純にミックスが全然違ったりして、自分たちの成長が見えたので。だってそもそも、「Catch The Wave」までビブラートかけて歌えなかったし。そういう技術を知らなくて(笑)。解散したあとである人に「故意に直線的に歌っているんだと思うんだけど、例えばビブラートは知ってるの?」って訊かれて、「なんだそれは?」って(笑)。

──Shenもそうだったの!?

Shen ……ちょっとは知ってたけど(笑)。まあでも本当にちょっとずつ成長してたね、最初のほうは全然何もできなかったしね。最初の頃のミックスとか、なんで声にリバーブかけてないの?みたいな、ものすごくドライなものだったけど、どんどんウエッティになっていて。

Micro 人間の生き死にではないけど、Def Techの死を一度迎えて、もう一度生まれてくるっていう……サークルオブライフっていうものに気付けたっていうか。やっぱり死は新たな生への出発だなって思う。日々の眠りがあるから、起きた時間から活き活きとした人生の出発がまた毎日始まるわけだし。まだたった32年の人生だし、Def Techという音楽に関して言えばまだまだ12歳だから、次がようやく中学生か、みたいな感じですね。

Shen そうだね。

ベストアルバム「GREATEST HITS」2012年4月18日発売 / EUNTALK

  • 初回限定盤 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 / Amazon.co.jpへ
  • 初回限定盤[CD+DVD] 2890円(税込)DTMS-003
  • 通常盤[CD] 1980円(税込)DTMS-004
CD収録曲
  1. Vocaline(新曲)
  2. My Way
  3. Pacific Island Music
  4. High on Life
  5. Consolidation Song (LIVE MIX)
  6. KONOMAMA Def Tech reintroducing RIZE
  7. In Outside
  8. Power in da Musiq ~Understanding
  9. Irie Got~ありがとうの詩~
  10. いのり feat. SAKURA
  11. Catch The Wave (NEW MIX)
  12. Broken Hearts
  13. Get Real
  14. A-1
  15. The Come Back
  16. おんがく♬ MUSIC
  17. Rays of Light
  18. Golden Age
  19. All That's In The Universe
  20. 4 Eye, for You(新曲)
初回限定盤DVD収録内容
  1. My Way
  2. High on Life
  3. Lokahi Lani
  4. KONOMAMA Def Tech reintroducing RIZE
  5. Catch The Wave
  6. いのり feat. SAKURA
  7. A-1
  8. The Come Back
  9. Rays of Light
  10. Golden Age
  11. take it HIGHER!!
  12. My Way (LIVE)
  13. Deep Blue (LIVE)
Def Tech "UP" Japan Tour 2012

2012年3月31日(土)宮城県 仙台市民会館
OPEN 17:15 / START 18:00

2012年4月5日(木)東京都 NHKホール
OPEN 17:45 / START 18:30

2012年4月6日(金)東京都 NHKホール
OPEN 17:45 / START 18:30

2012年4月8日(日)愛知県 愛知県芸術劇場大ホール
OPEN 17:15 / START 18:00

2012年4月12日(木)東京都 渋谷公会堂 ※SOLD OUT
OPEN 18:00 / START 18:30

2012年4月14日(土)福岡県 福岡市民会館
OPEN 17:30 / START 18:00

料金:全席指定6000円

Def Tech(でふてっく)

中国生まれハワイ育ちのShenと東京生まれのMicroによる2人組ユニット。「ジャワイアンレゲエ(ジャパン+ハワイ+ジャマイカ)」という独自のサウンドを生み出した彼らは、2005年にアルバム「Def Tech」でデビュー。2006年までに3枚のアルバムを発表し、そのトータルセールスは500万枚以上。インディーズ史上最高の売り上げを記録している。しかし同年から価値観や音楽性の違いにより活動休止状態となり、2007年に入るとそれぞれソロ活動をスタート。同年9月に解散した。その後2010年6月に約4年ぶりに活動を再開し、「Mind Shift」「UP」と2枚のオリジナルアルバムをリリース。2012年4月にはユニット史上初のベストアルバム「GREATEST HITS」を発表する。