DEEN|これ1枚で世界中をひとっ飛び!新しいDEENと音楽の旅の始まり

地域ごとに異なるアメリカの音楽

──西海岸で心地よく懐かしい風を浴びたあと向かうのはスペインですね。スペインの香りを感じさせる「君が欲しい ~Sólo te quiero a ti.~」はストレートに思いを伝える情熱的なラブソングです。

池森 最初はサブタイトルの「Sólo te quiero a ti.」をタイトルにしていたんですけど、それだと意味が伝わりにくいし、僕も言いづらいので「君が欲しい」を付けました。「Sólo te quiero a ti.」、メロディに乗せると、言えるんですけどね(笑)。

──スペイン音楽独特のギターの哀愁的な響きに、エレクトロなビートをミックスさせているのが、ダンサブルであり、またこれまでにはなかったDEENの魅力も伝えているような気がします。

山根 このアレンジは自分たちだけで作っていたら生音重視のスパニッシュ色の強い楽曲になっていたのかなと思うんですよ。アレンジャーさんのアイデアで新しいDEENを出せたなと思います。

池森 自分で言うのもなんですが、スタイリッシュでセクシーな感じがするよね(笑)。

──(笑)。情熱的で刺激的なビートに身を包まれたあとは、真冬のニューヨークが舞台の「五番街のセレナーデ」につながっていきます。この曲は男の切なさがにじむバラードです。

山根 真冬のマンハッタン5番街を、コートを羽織って歩いているようなイメージというか。80年代のディヴィッド ・フォスター(マイケル・ジャクソンやホイットニー・ヒューストンなどを手がけた大御所プロデューサー)が手がけた楽曲のような、アーバンなテイストを意識して制作した部分があります。

池森 ニューヨークと東京、離れ離れになってしまった恋人たちの姿をイメージして作詞しました。実はニューヨークには一度しか行ったことないけど(笑)。でも「1985」にせよ、次に収録のハワイを連想した「Aloha」にせよ、アメリカは地域ごとで異なる音楽が存在して、それぞれが魅力的だなと改めて思いました。

左から山根公路(Key)、池森秀一(Vo)。

──確かにアメリカでは親しまれている音楽が場所によって異なりますよね。ハワイアンテイストな「Aloha<Album Version>」は都会の喧騒を忘れさせてくれる楽曲で、昨年の夏に一度デジタル配信されていますが、アルバムバージョンは新たなボーカリストを迎えて再構築されています。

池森 参加してくださったのは、同じレーベルの後輩シンガーソングライターのダイスケくんと、古賀まみ奈さんというフラダンスをしながら音楽活動もしている方々です。ダイスケくんは以前、別のプロジェクトでギタリストとして参加していただいたことがあったんですけど、それが素晴らしくて今回も協力してもらいました。でもギターだけではもったいないので、歌っていただいて。ハワイの音楽は途中のバースから女性ボーカルが入ってくるものが多くあって、それをやってみたいなと思ったので古賀さんにもお願いしました。結果、ハワイのビーチで好きな人だけを呼んでホームパーティをしているような、心地いい雰囲気が描けたのかなと思います。

山根 僕も池森の影響で、去年の夏くらいからハワイの音楽を聴くようになったんですよ。この楽曲ではハワイの空気や雰囲気をそのまま伝えようと心がけました。

──通常盤のボーナストラックには「瞳そらさないで ~Jawaiian Style~」と「Power of Love ~Jawaiian Style~」も収録されています。こちらでもアロハな空気を満喫できますね。

池森 そうなんです。こちらもぜひ聴いてほしいですね。

旅はペルー、沖縄へ

──「コリカンチャの祈り」はペルーのクスコにある太陽を称えた黄金の神殿と呼ばれるコリカンチャを舞台にした、異国情緒あふれる仕上がりです。

池森 これはアンデスの民族音楽を背景にして楽曲を制作しようと思った中で、完成した1曲ですね。楽曲を完成させるために、いろんな歴史や文化を調べていくうちにコリカンチャのことを知って、それが生まれた背景とかを考えながら作りました。

山根 アンデス系の音楽って、一見なじみのない印象がありましたが、聴いてみると昔聴いていた童謡やアニメのテーマ曲などに、そういう要素が入ったものがけっこうあるんだなと気付きました。幼い頃の記憶が蘇ってきて、それをエッセンスに制作した部分がありますね。

──またこの曲は少しエスニックな印象もありますよね。

山根公路(Key)

山根 アンデス系の雰囲気をJ-POPに取り入れるのは難しいんですけど、こういうタイプの楽曲だったらアクが強くなり過ぎないのかなと思って取り入れてみました。

──続いての「古里」は、沖縄や琉球への思いと共に、両親……特に父親に対する感謝の思いも伝わる、心に染みるバラードですね。

池森 はい。年齢を重ねてみて、自分を育ててくれた両親の後ろ姿がよくわかるようになったというか。あなたがいたから自分がいるという思いが湧いてくるようになったんです。特に沖縄の海を見ていると、それを強く感じて。なので、その風景や心情を楽曲にしてみたかったんですよね。時代を超えて聴いていただけるスタンダードな楽曲を作りたいと思って完成させた1曲です。

山根 沖縄の伝統楽器である三線や独特の掛け声、囃子も地元の人にお願いしたんですよ。

──池森さんは先日沖縄に行かれている様子をSNSにアップされていましたが、お好きな場所なんでしょうか?

池森 そうですね。実はこの楽曲をすでに沖縄にいる知り合いの方に聴いてもらったんですけど、みんな涙目になっていました。沖縄って“おじい”、“おばあ”の文化というか、先祖や両親を敬う風潮がほかの地域よりも強いみたいで、皆さんこの楽曲で家族の姿を思い浮かべてくれたみたいです。

国が異なっていても音楽は共通点が多い

──魂のルーツを示した楽曲に続くのは、山根さんのボーカル曲「Forever Friends」です。これはDEENの音楽的ルーツかもしれない、英国ロック……特にThe Beatlesへの思いを感じるナンバーです。

山根 まさにその通りです(笑)。最初に「イギリス」というテーマで楽曲を作るということになって、もっと幅広いロック、もしくはバグパイプみたいな伝統楽器を取り入れたものにしよう、などと考えていたのですが、自分が強い影響を受けたThe Beatlesの存在にふと気付いたんです。そこでリスペクトを捧げるものを作ろうと思って、彼らへの愛をここに凝縮させました。

池森 The Beatlesが好きな人はニヤリとするような要素がたくさん入っていると思います(笑)。

山根 でもThe Beatlesっぽさを全面に出しすぎてしまうのは違うかなと感じて、The Beatlesっぽさは曲の前半に凝縮させました。歌詞に関してもいろんな音楽を聴いたりするけど、「結局戻る場所はここなんだな」という思いをつづったつもりです。またDEENを聴いてくださっている皆さんにとって「僕らの音楽がThe Beatlesのような存在であってほしい」という願いも込めています。

──「VIVA LA CARNIVAL」は、カリプソなどカリビアンな音楽要素を取り入れた、開放的な1曲です。

池森 この楽曲では聴いた方々にカリプソやカリブを連想してもらえるような要素を盛り込んで、さらに明快なメロディや歌詞になるようにこだわりました。

山根 カリブ音楽独特の楽器を取り込みながらみんなが歌えるような楽曲にしようと考えて、いろいろ調べてみたんですよ。調べていくうちに意外とカリブ音楽の要素を取り入れたJ-POPが世の中に多いことに気付いたんですよね。国が異なっていても、音楽は共通点が多いんだなと実感しました。