ナタリー PowerPush - DECO*27
ボカロP再始動のためのベストアルバム
実は何度も聴き返したくなるDISC 2
──そして初回限定盤のDISC 2ですけど……。
個人的にはこっちにハマってほしいなっていう気持ちがあるんですよ。ニコ動なんかでDECO*27を知っている人はDISC 1の曲ってほぼほぼ知ってくれてるとは思うんですけど、DISC 2には自主制作時代の、今となっては手に入れられない曲とか聴けない曲が入っているので。
──既発の曲はどれも10万回以上再生されているので「知られざる名曲の数々」とは言いにくいものの、それでもDISC 1の楽曲群の再生数がハンパないから相対的に見たらレアトラック集ですもんね(笑)。
ええ。DISC 1とDISC 2を1枚のシングル盤にたとえるなら、こっちはB面。みんな、最初はシングル曲ばっかり聴くのかもしれないけど、ふとレコードをひっくり返してみたらそっちにもいい曲が入ってた!みたいな感じになってほしくて。実際一聴したときのパンチっていう意味ではDISC 1のほうが強いかもしれないですけど、実は何度も聴き返したくなるのはDISC 2かな、って思ってますし。
「愛迷エレジー」はカッコいいなあ(笑)
──未発表曲も多いし、marinaさんが歌った「愛迷エレジー」の初音ミク版のような人間のボーカル曲のボカロバージョンも入ってるから、新作感覚で聴くこともできますよね。
人が歌った曲のミク版っていうのも今回やってみたかったことの1つなんです。DISC 1収録曲の「愛迷エレジー」は、初公開時にはmarinaさんっていうボーカリストさんに歌ってもらっていた曲なんですけど、僕はボーカロイドプロデューサーなんだし、このアルバムはボーカロイド曲のベスト盤なんだからミクに歌わせたかった。ミクが歌うことによってまた別の味が出るかな、とも思ったので。
──ご本人的にはいかがですか? ミク版は。
どの曲もそうなんですけど、特に「愛迷エレジー」はカッコいいなあと(笑)。このあいだベストアルバム収録曲のメドレー動画を投稿したんですけど、その中でも「愛迷エレジー」が流れたときの反応がすごかったですし。
──作家自らが自分の曲を「カッコいい」って言い切れるのって、それこそカッコいいですよね。
なんか「今の僕には書けないな、これ」「昔のDECO*27ってこういう曲が書けたんだ、スゲーな」って普通に思っちゃったんですよ(笑)。いい意味でも悪い意味でもではあるんですけど今の僕には「愛迷エレジー」みたいなタイプの曲は書けないからこそ、どんどん新しいことをやっていかなきゃいけないって気持ちになりました。これはベストアルバム全体を通して聴いてみた感想ではあるんですけど、昔の自分の曲が今の自分のライバルなんだな、って。
昔のDECO*27をパクる!
──それもそれでカッコいい。他人に対して敵がい心を剥き出しにしたり、嫉妬したりするんじゃなくて、己のライバルは己。すごく健全だと思います。
敵は「愛迷エレジー」や「モザイクロール」ですから(笑)。でも今の自分が昔の自分よりダメかっていうと、そんなこともなくて。実は「愛言葉II」って、元ネタである「愛言葉」を越えることはできないかもなって思いながら作ってたんです。でも「II」を書いたら「II」のほうが好きになっちゃいましたから(笑)。それに9月発表の「妄想税」っていう曲は、ベストアルバムにも入ってる「心壊サミット」と「罪と罰」をミックスしてみたというか。2曲ともテイストは同じなんだけど、そこに今の僕が持っている新しい要素を乗せてみるっていう作り方をしていて。最初に「次はいったんゼロに戻る」って言ったんですけど、けっして過去を否定しているわけではないんです。これまでのエッセンスを取り入れつつ、まったく新しいものを目指すって感じなんですよね。ライバルである昔のDECO*27をパクる!(笑)
──あはははは(笑)。
昔の曲のよさを新曲に取り入れたことによって、昔の曲がより愛おしく感じられるようにもなっていて。それはきっと聴いてくれる人も同じなんじゃないかと思ってます。ニコ動なんかで僕の曲を聴いてくれていた人がベストアルバムで昔の曲を振り返りつつ、新曲やニューアルバムを聴けばどこが新しくて、どこがDECO*27らしいのかわかってくれるはずだし、逆に新曲を聴いてベストを聴くと昔の曲の聞こえ方が違ってくるはずですし。
──あとベストアルバムには新しいファンの入門編っていう側面もありますよね。
ええ。だから柴咲さんや中川さんをきっかけに僕のことを知った人にも手に取ってもらいたいな、と思ってます。そういう意味でもCDっていい形態だなって思うんですよ。ネットの場合、その人が検索でもしない限りは僕の曲がその人の目に触れることはないんだけど、CDの場合、お店に行ったら僕の名前が目に飛び込んでくることもあるわけじゃないですか。で「なんか、コイツの名前見たことあるな」って感じでベストアルバムを手にしてもらって「えっ、こんなことやってた人なの?」「いいじゃん!」ってビックリしてもらえたらうれしいですよね。
- ベストアルバム「DECO*27 VOCALOID COLLECTION 2008~2012」 / 2013年12月18日発売 / U/M/A/A
- 初回限定盤
- 初回限定盤 [2CD+DVD] / 3500円 / UMA-9030
- 通常盤 [CD] / 2500円 / UMA-1030
DISC 1(全仕様共通)
- 愛言葉 feat.初音ミク
- 僕みたいな君、君みたいな僕。 feat. 初音ミク
- 相愛性理論 feat. 初音ミク
- 心壊サミット feat. 初音ミク
- 罪と罰 feat. 初音ミク
- ゆめゆめ feat. 初音ミク
- むかしむかしのきょうのぼく feat. 初音ミク
- 二息歩行 feat. 初音ミク
- キミ以上、ボク未満。 feat. 初音ミク
- 愛迷エレジー feat. 初音ミク
- モザイクロール feat. GUMI
- 弱虫モンブラン feat. GUMI
- ペダルハート feat. GUMI
- 愛言葉II feat. 初音ミク
DISC 2(初回限定盤のみ)
- 砂時計 feat. 初音ミク
- 恋距離遠愛 feat. 初音ミク
- ハルイチ。 feat. 初音ミク
- オートスコピー feat. 初音ミク
- 隠恋慕 feat. 初音ミク
- No You, No Me feat. 初音ミク
- 愛 think so, feat. 初音ミク
- ダミーダミー feat. 初音ミク
- ラヴゲイザー feat. 初音ミク
- 帰想本能 feat. 初音ミク
- ショコラビーツ feat. 初音ミク
- リノリウム feat. GUMI
- 僕の名前は feat. GUMI
初回限定盤 DVD収録内容
- モザイクロール feat. GUMI [MV]
- 相愛性理論 feat. 初音ミク [MV]
- 弱虫モンブラン feat. GUMI [MV]
- トリノアイウタ feat. GUMI [MV]
- No You, No Me feat. 初音ミク [MV]
- 愛 think so, feat. 初音ミク [MV]
- ペダルハート feat. GUMI [MV]
- むかしむかしのきょうのぼく feat. 初音ミク [MV]
- ゆめゆめ feat. 初音ミク [MV]
DECO*27(でこにーな)
1986年12月生まれの、福岡出身の男性アーティスト。父親の影響で13歳でギターを手にし、14歳からオリジナル楽曲を作り始める。その後、ボーカロイドを使って制作した作品をニコニコ動画に投稿すると、乾いたギターサウンドが特徴的なバンドアレンジ耳目を集める存在となる。2010年4月、1stアルバム「相愛性理論」でデビュー。同年12月、2ndアルバム「愛迷エレジー」をリリースした。ほかのアーティストへの楽曲提供も行っており、中でも柴咲コウに提供した「無形スピリット」でのコラボレーションが縁で、柴咲とTeddyLoidとのユニット「galaxias!」を結成したことは大きな話題となった。2012年4月、「DECO*27 feat. 初音ミク」名義として初のシングル「ゆめゆめ」を発表し、7月には中川翔子、声優・悠木碧らが参加の3rdフルアルバム「ラブカレンダー」をリリース。またKOTOKO、Buono!、MEGらへの楽曲提供など、ソングライターとしての活動も積極的に展開する。2013年9月には単独では1年8カ月ぶりとなる新作ボカロ曲「妄想税」を発表。以来「愛言葉II」「音偽バナシ」と毎月連続で新曲を発表している。そして12月にはボーカロイドナンバーのベストアルバム「DECO*27 VOCALOID COLLECTION 2008~2012」をリリースした。